時は流れて。
第35話 不安定で平和な日々に訪れる問題。
もう至上委員会に来て一年半が過ぎた。
衝突もなく安定もなく困ってしまう日々を過ごしている。
全面衝突の一つもあれば俺は小夏に話した計画を実行する気でいたし、完全に安定すればこれまた計画を準備するつもりでいたが、断続的に能力者が増えて新しい秩序が必要になり、政府側の方にも至上委員会からはみ出した能力者達が街と汚染地域の間に出来たスラム街に住み着いて反社会的な動きを見せたりしている。
なんか世の中はままならない。
俺と小夏はもうすぐ18歳になる。
周りからは子供を期待されているが未だに仕事には小夏も着いてくるので離れ離れになるのはお互いに避けている。
そしてキチンと18まで我慢をしている。
実は何回か危ない日はあったが我慢をした。
「子供は能力者でもそうでなくても差別のない世界で育てたい」
その言葉だけを口にして頑張った。
俺の日々はもう大差ない。
あの日、福島を救う為に行動をした俺の放送を観たコロッケくんはすぐに家族と至上委員会に来た。それを知ったおにぎり君も一家でやってきた。
そして暴動を防ぐ意味でもキチンと充電や汚染区域に赴いて除染活動をしている。
今や都市の一つは至上委員会が政府から借りる形で至上委員会の人を住まわせている。
その実態は俺が稼ぎ過ぎているので有原有子からの提案で相殺するように都市を借りている。
至上委員会の街にはそれなりのトラブルもあるがキチンと機能していて、仕事にしてもキチンと旧人類の会社ともやれている。
一年半が過ぎても未だに3人目の総統には出会っていない。
これに関してはAIから死にかけた老人まで視野に入れているがわからないし、探ろうにも母さんは「あら、気になる?総統の跡継ぎしてくれるなら会わせるわよ?」と言ってきて探れない。
とりあえず俺達は今日も生きている。
ある種の平穏。
3年経っても可愛い妻。
俺の周り、手の届く範囲は誰も傷つかない世界。
本来目指した世界とは違うが、今この世界に不満が無くなっていた。
土日の公休日。
小夏と買い物に出るとお肉屋さんが「おう!休みか?休みは家に二人きりで居ないでどうすんだよ!」と声をかけてくると「これ食って力つけて子供作れ子供!」と言いながらイチオシ商品のニンニクマシマシチキンステーキを渡してくる。
美味いんだよ。
本当に美味いんだけどさ…。
「おっちゃん、コレ美味いんだけど食うと我慢がキツイんだって」
「我慢?しなきゃいいじゃねぇか。可愛い嫁さんを骨の髄まで愛し尽くしてやれって!」
もうお肉屋のおっちゃんは俺の横に小夏が居てもお構いなしで下ネタスレスレのセクハラトークをしてくる。
若いのだから外になんか出ないで家の中で致しまくれ、精力全開で子供を授かるまで致し尽くせと言っている。
もう勘弁してくれ。
小夏も真っ赤だし、俺も意識してしまう。
そうならないように買い出しという名の散歩に出て紛らわしている。
多分ここで致したら俺達の差別のない世界作りは何処かに行ってしまう。
最近では夢にまで見てしまっている小夏との行為。
俺達は周りからは祝福を受けていて、生まれてくる子もそんな能力者の両親、至上委員会という能力者を優遇する場所。
その全てで育てばよく言えば夢を語る王子のような子供が産まれてしまうが悪く言えば旧人類を見下す子になる。
俺はおっちゃんの話を聞きながら小夏を見る。
小夏の唇、小夏の首元、その先…。
その時聞こえてくる「冬音…」と俺を呼ぶ小夏の声。まずい。小夏スイッチが入ったら俺も困る。
俺はおっちゃんのニンニクマシマシチキンステーキをありがたく貰って「これで明後日の除染作業は秒殺だぜ!な!?小夏!!」と言ってお礼を言いながらその場を去る。
背中に当たるおっちゃんの「我慢は体に毒だぜ〜」が憎い。
多分、今なら大神茜のエロ部屋も喜んで受け入れてしまう。
露店でジュースを買った俺達は公園で休む。歩いていてこの街にも何故かあるラブホテルが見えたりしても困るしラブラブカップルを見て考えさせられると困る。
こういう時に公園はありがたい。
目の前で溌剌と遊ぶ子供達は本当に幸せそうだし、子供と遊ぶ親は福島で保護をした能力者一家で過労死寸前だった旦那さんはベンチで休む俺と小夏に会釈をしてくれて子供も手を振って「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」と声をかけてくれる。
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