至上委員会で始まる新たなる日々。
第31話 新生活。
歓迎ムードの中、バスから降りると母さんが「おかえりなさい」と言ってきた。
「ただいま…なの?お世話になりますじゃない?」
俺が返すと小夏はおばちゃんと母さんの前に来て「お世話になります!」と挨拶をした。
母さんは嬉しそうに「うふふ。家族4人で頑張りましょうね」と言っておばちゃんにも「長いこと冬音がお世話になりました。最初は不便とか不安もあるとは思いますけど頑張りましょう」と声をかけた。
その横では銘菓君達が平定に報告をしている。
「同志日向3名の保護に成功しました」
「追手は攻撃ヘリで来ましたが同志日向夫妻の力を借りる事で無傷での突破、また殺害する事なく無力化に成功しました」
「同志日向の独創性と指揮能力の高さは本物です」
この報告に満足そうに頷いた平定は「お疲れ様。後で見せて貰いますね」と言って3人を連れて行った。
俺は慌てて3人に「あ!皆ありがとう」と声をかける。
「こっちも勉強になったよ」
「本当、これから宜しくな!」
「あのね!俺の苗字は萩月って言うんだよ!」
なんだ、銘菓君はやはり銘菓じゃないかと思って居ると横の母さんが「さて、冬音。悪いニュースと良いニュースがあるんだけどどっちから知りたい?」と聞いてきた。
「知りたくない」
「だ・め。どっちから?」
仮面の母さんから圧を感じる。
道すがら諦めて悪いニュースから聞いたら、ウチと小夏の家が全焼していた。
それも自衛隊に行ってすぐの事で夢野勇太達は隠していた。
これにはおばちゃんが耐え切れずに倒れた。
「ほら、コレが奴らのやり口よ。私達は消火にあたれば至上委員会だとバレて捕まるから何も出来なかった」
そう言った母さんは怖い声で「冬音や小夏さんが望めばあの街を火の海に沈めても構わないわよ」と続ける。
「…構うよ。你好のラーメンやナマステのカレーがあるもん」
「あらあら。冬音は食いしん坊ね」
そして前回の家に着くと先におばちゃんを青海家で休ませる事になり母さんは「それで良いニュースよ」と言うと家の中の家具達は小夏の家の物になっていた。
「これ…、うちのタンス…」
「ええ、レイアウトはウチの子達に任せちゃったけど放火作戦に気付いてすぐに持って来れたから安心してね」
小夏は泣いて母さんに感謝をすると母さんは「思い出は大事よ」と言ってくれた。
「冬音、ウチの家具は私が貰ったわ。今度うちに遊びに来なさい」
「…本当に一緒に住まないの?」
「ええ、今は通い暮らしがちょうど良いのよ」
「じゃあ今度行くよ」
「明日からの仕事のこともあるからよろしくね」
「まずは晩飯だよ」
「うふふ。夜には持ってくるわよ」
「鍋ごと?」
母さんは「ええ」と言うと軽やかに帰って行った。
離乳食なんかは母さんが手作りしてくれていたらしいから初めてではないが母の手料理に俺は感激してしまった。
小夏はヤキモチを妬くどころかひと口食べて「わぁ!美味しい!今度私にも教えてください!」と言うと「お母さんが心配なので今日の夜ご飯はあっちでも良いですか?」と言っておばちゃんの所に行ってしまった。
母さんと2人きりは緊張する。
母さんは器用に仮面をズラして食べているのだがそれが気になる。この前のトコロテンの時も気になったんだよなぁ。
「母さん、食べにくそうだからマスク取れば?」
「見たら食欲失うわよ?」
「失わないって。息子に遠慮すんなって」
「親しき中にも礼儀ありよ?」
俺は「じゃあ食べない。あー…腹減った」と言ったら母さんはバカと言って泣きながら仮面を外した。
確かに火傷は酷いが別になんとも思わない。
「なんか蒸れて暑そうだから2人の時は取れば?」
「…ありがとう。そうするわ」
そうやって改めて食べたらさっきよりも食事がうまく感じた。
翌朝、小夏はおばちゃんが泣いて感謝をしていた話を聞きながら小夏と母さんのところに向かう。
働かざる物食うべからず。
母さんのところには平定と日影さんがいた。
「やあ、よく眠れたかい?君達が来てくれて夢さんの機嫌が良くて助かるよ」
「お帰り冬音君。昨日の活躍はドライブレコーダーで見させて貰ったよ。やはり君は英雄だ」
一瞬で新しい朝が台無しになった気がしたが母さんと小夏から目配せされた俺は大人しくする事にする。
「ドライブレコーダー?」
「何があっても良いようにね。案の定旧人類は攻撃をしてきた。証拠はバッチリだよ」
「成る程、それじゃあ俺の仕事は記者会見かな?」
「流石だね。大当たりだよ」
冗談ではなかった事に「え゛…」と聞き返す俺だったが母さんまでも「よろしくね冬音」と言ってきた。
小夏を出すかどうかになったが小夏は出さなかった。
汚れ役は俺1人でいい。
俺はひとつだけ条件を出した。
司会進行を日影さんにした。
予定外に出演の決まった日影さんが「怖いなぁ。本当に冬音君は怖いや」と言って俺を見た目は散々見てきた日影一太郎の目ではなかった。
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