第30話 追撃戦。
脱出は簡単だった。
下手をすると自衛隊も半分くらい乗っ取られているかもしれない。
おばちゃんを保護した連中は「保護しました。お早目に」と声をかけてくる。
この日の俺は基地に併設されている水道局の汚染水除去をしていた。
「仕事で手を抜けないから飯の追加って貰えます?」と声をかけるとたい焼きが出てきた。
綺麗になった水源に満足してから俺達は部屋に戻らずにそのまま北ゲートから外に出た。
バスに乗るとおばちゃんは丁重に扱われていてひとまず安心した。
「ごめんねおばちゃん」
「ううん。ごめんなさいね。こんな事になって…」
「小夏、おばちゃんと居てあげてよ」
「うん。そうするね」
おばちゃんは旧人類なのに今の社会を捨てて至上委員会に行こうとしている。
それは相当な事だろう。
俺は監視目的だと思う奴に「母さんと話したいからスマホ貸してください」と言ってスマホを借りると相手はまさかの平定だった。
「やあ、お帰り。夢さんはここに居るけど先に挨拶がしたくてね」
「どうも。母さんには言った通り、世話になるから働くけど旧人類と戦ったりはしないよ」
「うん。それは夢さんから聞いたから大丈夫。ただ万一攻め込まれたりした時は仲間を守ってね」
「…攻め込まれたら…ね。わかったよ」
平定がスマホを渡すと母さんが「ふふ。お帰りなさい。この前の部屋の横には青海さんの部屋を用意したから小夏さんは自由に行き来すればいいわ」と言う。
「母さんは?俺と住む?」
「あら嬉しい。でもお母さんはボロボロの身体を冬音には見せたくないわ」
「気にしてないのに」
「私が気になるのよ。女心を学ばないと小夏さんに嫌われるわよ?」
母さんはここで「それで?急ぐくらいの要件よね?」と切り出した。
「まあね。真面目に働くから一つ聞いてよ」
母さんは何かと聞く前に「冬音と小夏さんの知り合いの能力者達に接触してあの街で不利になる事が有ればご家族と至上委員会までどうぞと誘えばいいのよね?」と言った後で…。
「もうやってるわ」と言ってくれた。
お見事すぎて何にもいえない。
言えたのは「いやはや、なんでもお見通しだね」だけだった。
「うふふ。まだまだよ。冬音の気持ちをきちんと推し測れる母になりたいわ」
「そうだね。俺も母さんが何を求めて居るかをキチンと見極められるようになるよ」
「ありがとう。待ってるわ。今晩はお母さん得意のハンバーグカレーよ」
「楽しみだよ。でも食べたら泣いちゃうかもね」
「私が?そうね」
「いや、俺がだよ」
この言葉に母さんは「……ありがとう……嬉しい。待ってるわね」と言って電話を切った。
電話を切った俺は目の前の能力者に話を聞くとバスのメンバーは火と風と水の使い手達だった。
「あー…、このメンバーで霧を起こすの?」
「そうだよ」
風能力者と話していると水と火の能力者が「すんなり行かせたのは追手があるからだろうね」「案外銃撃とかな」と言う。
そんなスパイ映画じゃあるまいしと思いながら「マジで?」と返した俺は自分の貧相な想像力を呪った。
追手はスパイ映画みたいに車とかバイクかと思ったがヘリで、銃撃は拳銃かと思ったら機関砲だった。
道路に撃ち込まれた銃弾を見た風能力者は「やば、霧だけじゃ無理かも」と口にして火能力者が「撃ち落とすか?」と言う。
そんな不吉な会話を聞きながら俺はなんとか考える。
「小夏!バスが壊れない感じでバスの周りに放電!俺はバスを氷で覆って弾避けたり熱探知とかやらせない!」
「うん!」と、言った小夏は身を縮めるおばちゃんに「大丈夫だよお母さん!」と言う。
「…後は…腹減るからなんか!」
「見事だね〜。頼もしいよ。萩の月を持ってきたから食べてね」
俺は銘菓を食べながら能力を使って弾除けを作るとバスには減速をさせずにひたすら走らせる。
一息ついた所で俺は「次は!どうすんの!?」と聞く。
「次?」
「多分道路塞がれるよ」
風能力者が「うわ、やりそうだ」と言って肩を落とす。
「焼き殺す?」
「却下!風能力の兄さんと俺で暴風吹かせて銃弾を届かせなくする!俺はバスの前にも氷の壁を作るから気にせず直進!水能力は…銘菓君!君は軽く雨降らせる感じで濡らしたら小夏が殺さないように感電させて!人殺さずに逃げ切るよ!」
「えぇ、殺さないの?旧人類いらなくない?」
「いるっての!今日の標語は人類皆兄弟!火能力のアンタは検問突破したら追いつけないように火で道塞ぐ!」
「仕方ない従うか。同志日向はエネルギー保つ?」
「保つけどご飯!銘菓君!おかわり!」
「俺…?銘菓君なのね…」
水能力者の銘菓君は笹団子を食べさせてくれる。
おやつの人だな。
この先は二度の検問を突破する。
風能力の兄さんは風検知が出来なかったので教えると感動しながら覚えて使ってくれた。
「同志日向!凄いね!ありがとう!」
「いいけどさ、同志って辞めない?」
「えぇ?総統が決めたルールなんだよ?」
「…マジで?俺も銘菓君を同志銘菓君って言うの?」
「…俺、苗字あるよ?」
「ダメだよ銘菓君」
「…えぇ」と言う銘菓君は放って火能力の人が「まあ呼びたくなければいいだろ?コイツは強い能力者だ。受け入れようぜ」と言った。
バスはようやく廃村というか世界が滅んだ時に捨てられた街に到着をした。
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