第27話 合流。

俺達は国道に出てすぐに通りがかった長距離トラックのおっちゃんに保護をしてもらえた。

どうやら連日行方不明のニュースで顔が出ていたからかすぐにトラックに乗せてもらえたし、運良く荷台はクール便に使う冷凍車だったからジジイはそっちに寝かせてもらえた。


「おっちゃん…、ごめん…なんか食うものくれない?出来たらハイカロリーな奴」

「お…?おう、仮眠する前に食べるこんにゃくゼリーとか、チョコレートでもいいか?」


俺は空腹でフラフラになりながらのおっちゃんに話すとのおっちゃんは運転中でも俺を心配そうに見て座席の後ろを指差してくれた。それをすぐに小夏に取ってもらって食べた俺は「死ぬかと思った」と言った後でおっちゃんに感謝を告げてスマホを借りるとケーサツに電話をした。



すぐに自衛隊が保護に来てくれて俺達は栃木の自衛隊基地に送られた。


自衛官におっちゃんにチョコとかのお礼を頼むとやって貰えると聞いて安心した俺はとりあえずカツカレーをこれでもかと食べながら夢野勇太達を待った。


聖ジジイは有名で旧人類達からは人望があったのだろう。

基地でジジイを知る人達は安置された霊安室を訪れては涙ながらにジジイに手を合わせていた。



カツカレーを食べ終わった俺はようやくフルで能力が使えるくらい復活し、小夏は万一に備えて洋服やお守りに食料を補給してくれた。



それから3時間後に夢野勇太、大神茜、そして小夏のおばちゃんがやってきた。

小夏はおばちゃんと抱き合って泣きあっていた。


その横で夢野勇太が「何がありました?」と聞いてきた。


「簡単に言えば日影さんが裏切り者でジジイが殺されて俺と小夏は東京と福島の人間を人質にされてアイツらのアジトまで行ってきた」

俺の説明に「…日影一太郎が…」「まさかそんな」と言って愕然とする夢野勇太と真っ青の大神茜。


「だいぶ前から能力者至上委員会のメンバーみたいだったよ」

「…恐らく妹さんが過労で亡くなった頃に接触されたのでしょう」


夢野勇太の話を簡単に聞くと日影さんには「花子」と言う妹が居て日影さんは無能力で妹は能力者。草タイプだった妹さんは除染の過労と汚染された土や草に触れて僅か18歳で命を落としていた。


「他には?」

「奴らに俺の能力は見通されていたよ。日影さんの情報もあるが奴らの方が能力には詳しいし理解もある」


「日向君の能力とは?」

「まあバレてるから言うけど簡単に言えばコピー能力。だから俺の能力は火なんかで言えば弱火も強火も同じだけ力を使う。後は空腹になるのは俺だけの弊害だってさ」


この流れで日影さんに活動限界のカロリーを見極められていた話と会っていないが化け物を誘導出来る能力者が居る話をする。


「それが人質でしたか。何はともあれ無事で何よりです」

「あー…、後は向こうに死んだと思われてた俺の母さんが居た」


「日向 夢氏ですか!?」

「青梅って旧姓を名乗ってたけどね」


「それなのによく戻ってきてくれました」

「おばちゃん達が居るしね」


夢野勇太はおばちゃんを見て「いてくださって良かった」と呟いていた。


あの後、能力者至上委員会の犯行声明がどうなったかを聞くと俺の乱入を見越していたように映像が切り替わり1人の男が具体的な要求を読み上げていたらしい。


平たく言えば能力者はこれまで通り蓄電池に充電もしてやるし土壌なんかの除染もやる。

だが全て能力者のタイミングであって旧人類に決定権はない。

そして国家運営にしても新人類が執り行うと言っていた。


問題はこの後だった。


能力者至上委員会の奴らはキチンと搾取されている能力者は立ち上がって我々の元に来いと言い、家族に能力者がいる者にはこれまでと同じ暮らしを約束して、能力者の家族を失った者、国の対応に不満のある者は立ち上がれと声をかけていた。


これによって日本は混乱した。


そして作戦行動に俺と小夏を出すなら手薄な地区に化け物を向かわせると防衛省に通達がきた。



人なんてものは不満タラタラで生きている。

折角戻ってきたベテラン勢は寝返ろうとして周りの旧人類と衝突をした。


旧人類の強みは人数だけだった。

だがそれも日々揺らぐ。


報道規制なんか意味をなさなかった。


テレビ局は掌をクルクルクルクルひっくり返してコメンテーターとして番組に招き入れて「まさかの至上委員会の人間でした」で誤魔化して発言を許す。


この日はコメンテーターのおばさんがVTR出演で「このように我々至上委員会に協力くださった人にはキチンと生活を保障します」として「届いたアンケートの中で『能力者の家族は何親等か?』とありました。確かに興味はありますよね?我々は話し合いました。簡単に言えば同居の親族、後は能力者の人が生活を共にしたいと思った者です」と言えば皆して至上委員会に傾き始める。


それは暗に今の旧人類の支配に限界があると言っている物だ。

人々は肌でそれを感じていた。

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