第24話 化かし合い。

母さんとの話は終わらない。


母さんは俺を見て「ふふ。15の能力測定で新人類の適正を得たらすぐに助けに行くつもりがまさか能力封じを思いつくなんて思わなかったわ」と言った。


「まあね。俺は新人類にはならずに旧人類で長生きしたかったからね」

「独学でやれるなんて流石は私と豊さんの息子よ」


ここで小夏が能力封じに興味を持ったので簡単に説明すると「ふわぁ、冬音は凄いね」と言った。



ここで母さんが「それなのに小夏さんを助ける為に新人類である事を明かした」と言い俺を見る。「悪い?」と悪びれる俺に母さんは「立派よ。豊さんみたい」と喜ぶと「さて、悪いんだけど今日から冬音と小夏さんは私と一緒に能力者至上委員会のメンバーになってもらうわ」と言った。


無傷で連れてこられて同志だの同士と迎え入れられて母さんが目の前に居ればその流れなのもわかる。だが嫌過ぎる。


「なんとなく嫌だし、そもそも何すんの?」

「ふふ、この世界の歪みを直すの。能力者…新人類が旧人類を救って導くのよ」


うわ…。

もう嫌な予感しかない。


「それってまさか新人類が旧人類を支配するの?」

「ええ、そうよ。能力値の高いものが低いものを支配する。間違ってないわよね?」


「平等にって言葉は?」

「そんな言葉は…あの日豊さんの炎で焼かれたわ」


「……だろうね。この世は不平等だからね、でも俺は帰るよ。とりあえず小夏のおばちゃんは旧人類だし、虐げられるなんて見てらんないしね」

俺の言葉に母さんは嬉しそうに「ふふ」と笑うと「言うと思った」と言った。


そして「大丈夫、能力者の家族は虐げられないわ。キチンと今まで通りの暮らしが得られるわよ」と言う。


そして小夏を見て「2人で能力者至上委員会の王子様とお姫様になりなさい」と続けた。


混乱する小夏を制して「それでも帰るよ。今攻め込まれたら東京も福島も、どこも元も子もない」と告げると「やあね、はじめてに近い久しぶりの語らいが化かし合いなのね」と母さんは笑うと「冬音、貴方の能力はコピー能力…イメージ力を具現化するのよね?」と言った。


「へえ、どこで見破ったの?」

「あら、化かさないの?」


「まあね。日影さんに仕事内容でも見せてもらったの?」

「ええ、一太郎は優秀な子よ」


「だから俺の限界値を推測っていた?」

「ええ、冬音の欠点はどの力でも大体決まったカロリーを消費する事。あとはやる気の問題ね。おそらくその欠点は成長期初期に栄養失調と能力の発露を迎えた事による弊害ね」


お詳しい事でと心で悪態をつく俺に心を読んでいるように「長年の経験よ」と自慢げに言う母さんは「それに冬音だって化かしながらここに来た」と続けると小夏が「何のことですか?」と聞く。


「一太郎との会話を聞かせてもらったわ。あの子、冬音を迎える為にとんでもない事を口走ってた。貴方が聞き漏らすなんて想像つかないわ」

「あれま、聞かれてたのね。じゃあこれも化かし合いをやめて聞くかな?居るの?」


「ふふ、誰のことかしら?」

「…化け物の制御ができる能力者さ」


「ええ、一太郎が言ったわよね。冬音と小夏さんが来なかったら東京と福島に化け物を差し向けるってね」


そう。

俺は自分の能力がコピー能力やイメージの具現化だとすぐに気付いた。


だからこそ実在する能力者の能力は漏らさず見せてもらいたかった。


化け物を支配か誘導をする能力者。

その力があれば俺は化け物達を街から遠ざける事が出来る。


「居るんだ」

「まあ本気で仲間になるまでは会わせられないわね。とりあえず10日くらいは考えをまとめる時間をあげるからのんびりしなさい。お母さんも孫を楽しみにしているわ」



この会話で俺達は半軟禁生活が始まってしまった。

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