特例法。
第13話 ゼロの仕返し。
俺の給料は「0円」だった。
これには正気を疑った。
俺は日影さんに文句を言った。
日影さんも本部に文句を言った。
本部の解答は能力測定で能力値ゼロを叩き出した俺はいくら強かろうが凄かろうが給料もゼロで良いとジジイが言い出したということだった。
あのジジイは更に仕返ししてきた。
懲りないしやべえ事をやりやがるなジジイ。
俺は日影さんに「なら働かねえ。街中全員電力切れで苦しんでね」と言うと日影さんは何処かに電話をし始める。
そして「来てくれないかな?勿論留守が心配なら小夏さんも同席してもらって構わないよ」と言われた。
「小夏のおばちゃんもいいよね?」
「構わないけど別室待機になるよ」
小夏に聞くとそれで良いと言うので俺は日影さんについて行った。
普通のよくある雑居ビルに通される。
日影さんは少し自慢気に「ここは政府の建物の一つでその事を知る人は限られている」と紹介するが雑居ビルなので俺は「へぇ、反社の事務所とかありそうなのにね」と返す。
「あるよ?我々は5階、向こうの事務所は2階だからね。まあ向こうも一般人とは事を構えないよ。ただ逃げ出した能力者の温床だから気をつけてね」
「え?マジで?」
これには小夏と小夏の母さんは青くなっていた。
日影さんは「今も昔も部屋を借りるのは一苦労だからトラブルは起こさないと思うよ」と言っていた。
5階に通されると会社名は「ハートフルカンパニー」となっていた。
社内で俺と小夏は同じ部屋に、小夏の母さんは隣の部屋に移された。
小夏の母さんと別れさせられて心配そうな小夏に「平気。俺なら助けられるし風の能力はおばちゃんを捉えてる」と告げると小夏は「ありがとう」と言った。
そこに「風の形状把握とは恐れ入りますね」と言って入ってきたのは日影さんより少し若い男だった。
一緒に来た日影さんが「この方は私の上司にあたる夢野さんだよ」と言うと、男はニコニコと微笑みながら「夢野勇太です。はじめまして」と言った。
俺は撫然と挨拶を返すと小夏は「冬音」と注意してくる。
俺に余裕はない。
風の能力に関しても俺のやる事がわかったし、コイツが変なマネをしないように探ろうとしても微風で邪魔が入る。
そしてそもそも笑顔で迫ってくる奴ほど信用しない。
俺の両親を殺した連中は笑顔だけで飯を持ってこなかった。
小夏の母さんも皆俺に泣きついた時は笑顔ではなく真剣な顔をしていた。
「…おやおや、私でも負けてしまいそうですね」
この言葉に日影さんが「夢野さん!?」と言うが「大丈夫です。私は君たちの味方です。私は風の能力者でこの場の皆を守る為に微風を放っています」と言われた。
話し合いはシンプルだった。
だが長引く。
それでもキチンと夢野勇太と日影さんも事務員風のお姉さんに「大神君、青海夫人にお茶のおかわりを、後は何か聞かれた時は答えられる範囲でお答えして」と指示を出していた。
「今日来たことは申し訳なく思っているよ。お給料の件だね」
「ああ…、どっちが上かわかんないけどあの聖とか言うオッサンは立場も忘れて俺を痛めつける事しか考えてない。化け物の襲来にしても俺が倒せそうもない奴が出る度に大喜びしてたよ」
「それは報告を受けたよ。ただどうしても人不足でね」
「それで小夏は殺されかけた。コロッケくんもトンカツさんもボロボロにされた」
「だから君は言質を取って蓄電池の破壊に乗り出して青海 小夏さんを助けた」
「あれはアイツが悪い」
「そして彼は無理矢理君の進路を捻じ曲げた」
「それだけじゃない。小夏の事をトンカツさんとコロッケくんに言った。そのせいで俺が駆り出された」
「その仕返しがあのロッカーだと」
「ロッカー?日影さん、俺が聞いたのはゴミ箱の場所だよね?」
ゴリゴリとしたやり合いに日影さんは困り顔で「…日向君…」と言う。
俺は呆れ顔で日影さんを見た後で夢野勇太を睨みつける。
夢野勇太は俺に睨まれてもニコニコ笑顔のままで「そして給料をゼロにされたと、とりあえずここで君に給料を支払う事は可能なのだがどうしたものかと思っているんだ」と言った。
「どうしたもの?」
「君がまだ隠している能力があるならそれを教えて欲しい」
「パス、今度はそれで何をやらされるやら。氷だって見せちゃったせいでおにぎり君の代わりに何やらされるか…」
夢野勇太は「そうだね」と言って微笑むと一瞬キツい目つきになって「では測定器で測定できなくなる方法」と言ってまたニコニコ笑顔になった。
「それもパス。俺は新人類を否定してるから俺と同じ方法を思いついて高校生になりたい奴の邪魔はしたくない」
今こうしている時も俺の風と夢野勇太の風は小さく争っていた。
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