第12話 更なる能力と仕返し。

俺もただやられて済ますわけはない。

とりあえず久しぶりのコロッケくんとトンカツさんは40代に見えるくたびれ具合だった。


やはり汚染物質と関わるだけ危険なのだろう。


「久しぶり」と声をかけると「助けて」と声を上げて泣く2人。


話を聞くと土タイプと草タイプは仲良くセットで使わされるらしく、今目の前に広がる学校の校庭くらいの土地をあと二週間で除染しなければならなくて地獄を見ているらしい。


「小夏はあの自衛官ジジイにやられてたんだけど、2人は?」

「聖ジジイのこと?」

「アイツだよ」



…アイツすげぇな。

小夏を痛めつけてその足でこっちに来てってやってたのか。


「仕返ししてやるからな」と言う俺に同伴の日影さんが「日向君!ダメだ!」と言うが「ごめんなさい。決定事項なんです。凄いの見たいよね?」と言って日影さんを黙らせて今日は何をしたら良いかを2人に聞く。


汚染度は機械で数値化出来るらしいので片っ端から除染をすれば良いらしい。


やる事が決まれば後は早い。

俺は小夏を見て「ふむ。小夏!」と声をかけると小夏は「何?」と聞き返してくる。


「オニオンフライスタンバイ!!」

「うん!」


「オレンジジュースOK?」

「んー…今日は葡萄ジュースだよ?」


「…ぶ…葡萄?」


驚く俺にコロッケくんのオカンが「ダメだった?ダメだったの日向君!?」と聞いてくるが違う。


「こ…小夏、小夏は葡萄ジュースは好きか?」

「うん。すごく美味しいよ!」


「す…凄く……。キタコレ!小夏!葡萄ジュースOK!?」

「OK!」


「よーし、とりあえず隠し玉!氷能力で箱!」

俺はちょっと大きな箱を作るとどよめきが起こる。


日影さんは「こ…氷、まだ能力があったのかい?」とか言ってるがスルーだ。

俺はさっさと除染してオニオンフライと葡萄ジュースを飲む。


「行くぞ!大地除染!集まれ!汚染物質達!」

ぐんぐんと俺の前に汚れた土が集まってくる。


「トンカツさん!」

「あーちゃんだよ!」


「なんでもいいや、コロッケくんとチェックしてきて!」

「え!?もう?」


「何処まで?」

「んー…、多分見えてるところは全部大丈夫だけどいまいちわかんないから調べてきてよ。まだ汚れを集めてる所だしさ」


俺の言葉でトンカツさんとコロッケくんは検査機を持って走って行く。

見ていられない日影さんも一緒に走っている。


俺の方は目標があるのでまだまだ汚染物質を集めるがとりあえず腹が減る。


「小夏!オニオンフライ!」

「うん!」


嗚呼…美味い。

会いたかったよオニオンフライ…。


「こ…小夏!葡萄ジュース!」

「声裏返ってるよ?はい!」


「……うまっ」


なんだこれ、コイツらこんなのばかり食ってんのかよ?


「小夏、なんだこれ」

「葡萄ジュースだよ」


「なんでこんなに美味いんだよ」

「美味しいよねー、今度パックで買ってあげようか?」


目を丸くして「マジか?何したら買ってくれるんだ?」と聞く俺に小夏は「もう、冬音は命の恩人だから一緒にいてくれるだけで買うよぉ〜」と言ってコロコロと笑う中、ダッシュで戻ってきた日影さんが「…汚染ゼロ…。何をやったんだい?」と聞いてくる。


「んー。よくわかんない。消すのは消したけど…後はそこの一画に集めたんだよね」


俺の言葉に日影さんは検査機を近付けると検査機は聞いた事ないような音を出している。

日影さんは「は…針が振り切れる!?触れたら死ぬぞ!皆!逃げるんだ!」と慌てたりしている。



小夏が「冬音、逃げるの?」と聞くが甘い。


「んにゃ、周りの土で閉じ込めてるから平気じゃないかな?とりあえず氷の箱に入れるし」


俺は土を箱に入れるとしっかりと仕返しをした。


あのジジイのロッカーに汚染土をパンパンに詰め込んでやった。


まあ日影さんに「日影さん、これ、街中にばら撒かれるのとジジイのロッカーに捨てられるの選んで?俺、高校生になれなくてブチギレているんだよね」と聞いたら教えてくれた。



血相を変えてすっ飛んできたジジイに綺麗になった土地を見せて「おっす、やっといてやったぜ」と言うと顔をひきつらせながら「これはこれは、見事だな」と言う。


「だが私のロッカーに汚染物質を捨てるのはどういう了見だ?」

「ロッカー…?」


俺は首を傾げて「ゴミはゴミ箱になら捨てたぜ?いやー、人の進路を捻じ曲げるとこうなるって奴だよな。言わば天罰?」と言って笑いながら小夏に「小夏!腹減った!トマトレタスバーガー!」と言って小夏は俺にトマトレタスバーガーを出してくる。


何このシャキシャキ。


「…やば、マジ美味い。小夏、今度ウチのパンでもこれやってよ」

「うん。チーズも入れる?」


小夏の提案に俺はまた目を丸くして「…何俺死ぬの?」と聞く。


「なんで?」

「だって凄いご馳走じゃん」


この返しに小夏が笑うとそれにつられて俺たちも笑う。

笑いながら帰って行くと後ろからジジイの「ロッカーを除染してから帰れ!」と聞こえてきたが無視無視。

トンカツさんとコロッケくんにマジ感謝されたが「いや、俺の方こそ黒糖ミルクタピオカ貰ったし、トマトレタスバーガー食えたし、あんがとな」と言って帰るとコロッケくんから「日向はそれだけ強いんだから超高給取りじゃないの?」と聞かれた俺は時が止まる。



あれ?

じゃあご飯食べられるの?

まじで?


「マジで!?」

「…う…うん。だってあれだけ強いんだよ?」


俺は嬉しくなって小夏に「小夏!やったよ!材料費出すから弁当作ってくれ!」と言うと「え?買うんじゃなくて?」と聞いてくる小夏。


あれ?作りたくないのかな?


「嫌か?」

「ううん。頑張るよ!」


俺は充実した食生活を夢見て帰ったがまさかあんな事をやられるとは思わなかった。

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