変わる日々。

第11話 夢と悪夢の日々。

小夏は丸2日寝ていた。

小夏が起きた時は俺が小夏の母さんのご飯を食べて「美味すぎます!小夏ってこんな美味いの食べてんの!?」と喜んでいた時で、小夏は目を覚まして俺の家だった事と小夏の母さんがいた事に驚いていた。


「冬音?お母さん?」

「小夏!!」

「あ、おはよう小夏。ごめんな」


小夏の母さんは小夏に抱きついて良かったと泣いていて小夏は俺の「ごめんな」が気になって「冬音?何が?」と聞いてくる。


「小夏が起きなかったからおばちゃんが作った昨日の夜とか小夏のご飯までもらっちゃった」

「…それは良いけど、なんで冬音の家なの?」


そう。

日影さんに言わせると電気が戻って帰宅した小夏は英雄視されてしまい、近所から称賛を受けた小夏はジジイの誘いを断れないでまたこき使われる事が読めるので俺の家で暫く暮らすべきだと言われた。


「俺…一応男ですよ?おばちゃんは夜には帰らないと怪しまれますよね?」

この問いに小夏の母さんは「冬音君なら信じられるしOKよ」と二つ返事をし始めた。


「えぇ…、小夏可哀想じゃ…」と言った時には「ご飯持って行くわね」と言われ俺も二つ返事で申し出を受けた。


ここまでの話を小夏はご飯を食べながら聞いて「ええぇぇぇ…、いいの?」と聞いてくる。


「若い男女とか嫌だろうが小夏、お前が居てくれると3食キチンと食べられて助かるんだ。しばらく俺と暮らしてくれ!」

この言葉に頬を染めた小夏だったが「私は良いけどここに居るとまた発電関係で冬音に迷惑がかかるよ」と困り顔になる。


あ、忘れてた。


「聞く?バッチリ仕返ししてやったよ」

俺が大型蓄電池を破壊してやった話に目を丸くする小夏。


だが小夏は慣れたもので「冬音、本当にフルパワーだったの?」と聞いてくる。


「んー…日影さんが聞き耳立ててるからその質問はパス。でもフルじゃないんだなぁ」

「それで冬音が満タンにしてくれて私は2度とあそこに行かなくて良くなったの?」


「そうそう。だから安心して俺に弁当作ってくれ!」

「冬音…、私のお弁当って…お母さんの食べたらきっと美味しくないよ?」


「何言ってんの?おばちゃん弁当はおばちゃん味、小夏弁当は小夏味だろ?早く元気になって弁当作ってくれよな〜」


小夏はよほど弁当が作れるのが嬉しかったのか泣いて喜んでくれた。



小夏を預かる事になって俺の生活は激変する。

とりあえず3食必ず食べられるなんて夢みたいだった。



そして高校行きが取り消された。

悪夢みたいだった。


日影さんに文句を言ったがどうやらあのジジイが意趣返しをキメ込んだらしく、ご丁寧に家の前に金糸たっぷりの制服まで置いて行かれた。


マジ悪夢。


ジジイに言わせれば測定器でも測れない能力者を旧人類とするのは間違いらしく高校行きは取り消された。


そしてジジイの仕返しはそれだけでは終わらない。


汚染除去の除染を行なっていたコロッケくんとトンカツさんに小夏だけ俺に助けられたと告げ口しやがった。


小夏ほどではないが中卒で始発から終電まで働かされている2人はすぐに親に相談をしやがった。2人の親は丁寧な菓子折りを持って挨拶に来るとリビングで元気そうな小夏を見て「うちの娘も助けてくれ!」「うちの息子も死んでしまうわ!」と泣きついてきた。


お前ら掌クルックルひっくり返して俺を見捨てたのに調子いいな。


そう思ったのだが、ここには良くない事に小夏がいる。


小夏は「冬音の苦しみを理解してください。ウチの冬音は配給も受けられず、今なんてお肉屋さんも八百屋さんも品物を売ってくれないんですよ!助けてあげてください!」と言った。


いや、八百屋も肉屋も小夏と小夏の母さんが買いに行けば無問題だろ?

そこなのにそれを言うと…。


「わかったよ日向君。悪い噂の払拭には尽力するからね!」

「町長にはガツンと言ってやりますよ!次の選挙で地獄を見なさいと言うわ!」


必死な大人の謝罪に小夏はニコニコ笑顔で「良かったね冬音!お願い!あーちゃん達を助けて!」と言ってくる。


「…小夏…マジで?能力を使うのに飯足りないし…やだ……な……」と言ったがそこは甘かった。


コロッケ君の母は再びチーズバーガーのセットとトマトレタスバーガーのセットを用意して「少しだけど足りるかしら?」と聞いてくる。

トンカツさんのオトンなんかは「黒糖ミルクタピオカと…なんだったら大ジョッキのクリームソーダやロングソフトクリームも食べないかい?いや、羊羹の丸かじりなんて素敵だね。日向君は何味が好きかな?」なんて言ってくる。



お前ら、俺をなんだと思っているんだ?


だが心とは裏腹に胃袋と直結した口は「やりましょう」と二つ返事で受け入れてしまった。

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