第6話 胃袋の友を守る為に…。
化け物達が来ると言われながら待っているがうんともすんとも言わない。
これでは俺の食事情が芳しくないじゃないかと思った時にはこれ以上ないほどの化け物どもがやってきた。
「総員!構え!諸君達は戦闘訓練が無いから同士討ちだけを気をつけて各自撃破だ!」
この掛け声に怯えている癖に血の気の多い連中は手に火だの氷だのを浮かべて前に出る。
まあ、化け物の勢いと手に浮かぶ火だの氷だのを見ていると明らかに役不足で怪我をされる。
怪我をされる→御礼なし→俺飢える。
この簡単な話に俺はいても立っても居られずに「お前達は俺の後ろ!特に俺にご飯をくれる連中は後ろ!」と言って前に出ると化け物の群れに向かい「火炎放射!フルパワー!」と言って手から大火事間違いなしの火を放って焼き尽くす。
あまりの火力に周りからは変な声が聞こえたが知ったことでは無い。
これで俺の食は守られた!
だがしかし問題が発生した。
「小夏!問題だ!」
「冬音!?どうしたの?怪我?」
「腹減った!火を放つと腹が減る!コーラおかわり!後は焼き鳥5本!」
「今食べるの!?」
小夏は手に出したビリビリをしまうとコンビニの袋からコーラと焼き鳥を出す。
俺は袋を見ると袋はまだまだパンパンだ!
美味しく食べている後ろからは「何やっとるか!火を突破した化け物が居るぞ!火が効かない化け物だ!お前はさっさと下がって氷タイプか雷タイプが前に出ろ!」と聞こえてくる。
この場の雷タイプは小夏で、氷タイプは名前は忘れたがコンビニおにぎりを約束してくれたアイツだ。
どちらも明日からの食生活に欠かせない心の友…胃袋の友達だ。
「だぁぁっ!後ろの奴うっせえ!小夏!後はおにぎり君も前出るな!」
俺はそう言いながらあっという間に塩味の焼き鳥を食べると「小夏!さっき食べ終わった焼き鳥の串出せ!」と言う。
小夏はもう何も考えずに俺の言葉に従い焼き鳥の串を出す。手に持った串を見て「くそっ…足りない。もっと食えばよかった…」と悪態をつく俺に小夏が「冬音?」と不思議そうに顔を見てくる。
「いいから見てろって!」
焼き鳥の串を放り投げた俺は「追い風!あと足りない分は飛び交え!風の刃!」と言って突風を起こすと真っ直ぐ飛んだ焼き鳥の串はクソでかいカブトムシを貫通して殺していき、串の足りない部分は風の刃が粉々に切り刻む。
後ろからは偉そうな自衛官の「んな!?巨大鉄カブトムシの外殻は銃弾すら弾くのだぞ!?それを竹串で!?」と聞こえてくるが知るか!レジ横ホットスナック様に感謝しろジジイ。
横で手に氷を浮かべて唖然としているおにぎり君に「よし、おにぎり君は下がってなって」と言うと「え…僕の名前…おに…えぇ…」と言いながら下がっていく。
おにぎり君が下がると今度は土が迫り上がってくる。
なんだ?と思っていると後ろから聞こえてくるのは「これは暴れモグラだ!コイツは火も風も効かんわ!諦めて下がるんだな小僧ぉぉっ!!」という嬉しそうなクソ自衛官の声。
「アイツ…?なんか目的変わってないか?」
俺の疑問はさておいて、クソ自衛官のジジイは「土タイプ!草タイプ!前に出ろぉぉ!」と吠えた。
その直後、俺には衝撃が走った。
草タイプと土タイプは学校帰りに美味そうな匂いをこれでもかとさせていた肉のサイトウでトンカツとコロッケを約束してくれた連中だった。
俺は慌ててトンカツさんとコロッケくんの元に向かい「待ちたまえ君達!」と声をかける。
「日向くん?」
「でも行かないと」
真面目な2人を見て首を横に振った俺は「…君達だと行けば死ぬよ」と再度声をかける。
「でも…行かないと」
「火も風も効かないって言うし」
まあたしかに地中深くに潜られては火も風の刃も通じない。
まあ本気の本気を出せば通じるだろうけどあのムカつくバカクソ自衛官ジジイには見せたくない。
「…んー…良くないが仕方ない」
「え?」
「何が?」
俺はトンカツさんとコロッケくんの肩に手を置いて「イカフライと唐揚げつけてくれない?付けてくれたら俺代わるよ」と言うと2人とも「アジフライも食べる?」「エビフライも付けようか?」と言ってくれる。
「嘘だろ!?本当か!!?」
俺が迫ると2人は引き気味に頷く。
エビフライ…給食でたまにしかお目にかかれない一品にアジフライ…。
もう何これ、サイコーすぎる。
「ソースとか買ってくれる?」
「買うよ」
「醤油もあげるよ!」
これで俺の心は決まった。
「隠し球!大地硬化!雑草よ!モグラを食い尽くせ!」
前に走り出した俺の掛け声で地面はとてつもなく硬くなり、ガゴッという音でモグラどもは気絶をし、俺の力で地上に引っ張り出された所に迫った雑草達がモグラに根を這わせて栄養を吸い尽くしてしまった。
「よし!イカフライと唐揚げとアジフライにエビフライまでゲーット!」
飛び跳ねて喜ぶ俺の後ろで小夏が唖然と「え?冬音ってお父さんお母さんの能力で火と風はわかるけど…土と草って…」と言っている。
まあこれは小夏にならうな重くらいで話してもいい隠し球だが今は内緒だ。
それよりも気分がいいのはクソ自衛官ジジイが俺の戦果を愕然と眺めて言葉を失っていることだった。
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