第5話 生きる為、食べる為。
街外れ、汚染区域との境は死屍累々だった。
チワワに人狩りバッタの死骸、後はどう見ても人間の血が飛び散っていた。
周りの連中は今更メソメソシクシク泣きながらここにきた事を後悔している。
学校から意気揚々と送り出されてきたくせに本番になったら尻込みをするなんて話にならない。
俺は呆れながら小夏が買ってきたコーンポタージュスープの缶と戦っている。
どうしてこうコーンが飲みにくく作られているのだろうか?旧人類はエネルギー問題なんかよりこれをどうにかするべきだ。
もう何年振りかのコンポタ様に涙を流しながら「久しぶり!会いたかったよコンポタ!」と言う俺に周りはドン引きしているが知った事ではない。
服装の違いで他校の連中が俺に喧嘩を売ってくるが今はそれどころではない。
小夏の母さんは本気でホットスナックを買い占めてくれていて俺はハイカロリーな子達にトキメキながら食べすすめている。
人類って不思議なもので便利が捨てられないからとコンビニがさっさと復興して今も街にあってレジ横にはホットスナックがあるし缶飲料なんかもある。
まあ、普段は縁がないが今ばかりはその恩恵にあやかっていて幸せを感じている。
自衛官達は俺を見てなんでここに旧人類が居るのかと言いながら、俺の火で火傷した奴は必死に俺が能力者だと説明している。
そんなものを全無視して食べる俺の横で俺の顔をマジマジと見ながら小夏が「ふぁぁ…、よく食べるね冬音」と言う。
俺は「当たり前だろ。コンビニチキンなんて3年振りだぜ?焼き鳥も美味いな」と言いながらこれでもかとチキンを食べてコーラで流し込む。
この組み合わせはつくづく人間をダメにするな。
あー…、どうせならおにぎりとかも頼めばよかった。
海苔が巻かれた米とか夢だよな。
「ここ、臭くない?」
「気にならない。次はその照り焼きって奴」
小夏はブレない俺に「ふふふ」と笑いながら新しいチキンをくれる。
「ねえ冬音。冬音はチキンとかお弁当で私を守ってくれるの?」
「勿論だろ。これで小夏を助けたら俺は肉まんとあんまんを小夏のおばちゃんに頼む」
「ピザまんとカレーまんも頼んであげようか?」
「マジか!?何したらいい?」
このやり取りに呆れた自衛官は「なんで検査でかすりもしなかった奴がここに…?本当に能力者なのか?」と言いにくる。
「あー…、まあ人間やる気になれば火くらい起こせるんですよ」
チキンを頬張りながら食べる俺に小夏が「冬音、お行儀悪いよ」と注意してくるが「無理、本気で3日で2食にしてたから死にそうだったんだって、さっきだって火を出したから腹減ったし」と返す。
このやり取りが不服だった自衛官は「ならば見せてみろ!」と怒鳴ってきた。
「いいっすけど…?そこの死骸を燃やせばいいっすか?」
俺の返しに盛大に笑った自衛官が「バカめが!あの死骸の山を燃やす!?レベル5の能力者でなければ出来ぬわ!」と怒鳴るが俺にはピンとこない。
「小夏、レベル5って何?」
「私やあーちゃんはレベル1、レベル5だと大都市の焼却炉を1人で使いこなせるくらいの火使いだよ」
俺は次の唐揚げ様に手を伸ばして食べながら自衛官に「じゃ、燃やしますねー」と言って火を放つとあまりの火力に辺り一面が焼け野原になってチワワ達の死骸は綺麗さっぱり無くなった。
「んが!?」
「マジか!?」
そんな声が聞こえてくるが俺の機嫌はマックス悪くなる。
「小夏…焦げ臭い。チキンが臭くなった…」
「あはは…、それどころじゃないよ冬音。なんか皆の目が怖いよ?」
竜田揚げ棒とスティックザンギを食べる俺の耳には「なんだあの火力」「あいつどうやって?」「今まで隠してやがったのか!?」なんて聞こえてくるが気にしない。
「気にすんなって。マスタードチキン味と…あ!これこの前のカレー味!タンドリーだな!」と言って俺は気にせずチキンを貪ると自衛官は顔をひきつらせながら「せいぜい戦果に期待する」と言って去って行った。
掌をクルクルと返すのは学校の連中で俺が居たら死なないで済むと言い出した。
やってられない。
俺は小夏の為に来ているだけでお前らはさっさと名誉の戦死を遂げてくれ。
そして世間に新人類なんてなるもんじゃないと示して欲しい。
だが小夏は急に「冬音は今までご飯も食べられなくて大変だったんだからね」と言って周りに謝らせると「これでいいよね冬音?」と言い出した。
「え?」
「だって皆友達だから助けたいよね?」
「…俺は小夏の弁当…、後はチキン達…」と言ったが周りの連中まで「ならコンビニおにぎりで頼む!」「なら俺は肉のサイトウのコロッケだ!」「私はトンカツよ!」と言い出してくる。
俺を安く見るなんてとんでもない奴らだ。
誰がそんな手に乗るわけがない……。
「君は明日の朝、そこの君は明日の昼、君は夕飯ね」
志は高くても胃袋は俺の脳を支配する。
背に腹はかえられない。
コイツらを助けるだけで1週間は3食保証されてしまった。
テンションが上がった俺は俺は意気揚々と腕を振り回して「よーっし!やりましょう!」と言った。
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