独白

 こんな汚い感情を言葉にしちゃだめだよ。言葉っていうのは、相手を、誰かを喜ばせるためにあるんだからね。ああ、何をしてるんだろうね僕は。自分がいいと思った選択をして、結局は幸せにはなれていない。自分で選んだんだから、客観的に見たら云々、なんの慰めにもなりやしない。仕方ないからね、ぼーっとしているのも癪で、地球儀のサイトで世界中を旅してみた。そこで、そのサイトはなんだかよくわかんないんだけど、表面が球面だからね、東西南北がうまく合わせられなかった。南が上になったりもした。そもそも、それに違和感を抱く僕の先入観も不思議だな、なんて思いながらも、コンパスのマークがついたところをクリックすると、ちゃんと北が上になったことに安心した。


 人は、何かを犠牲にして生きているんだよきっと。ややもすると、失うだけの人生もあるかもしれないし、得るだけの人生もあるかもしれない。そういえば、今日動画を見ていると、人が成功するかどうかは運で決まる、みたいなのを見た。才能が正規分布だとすると、真ん中の層が一番多いから運で訪れる幸運に恵まれる数が多いとか云々。まあ、どうでもいいことでそんなこと言いだしたら何もする気がなくなってしまうよ。話を少し戻して、人は何かを犠牲にして生きているということだ。こちらも、さっきの運についての話と関連させて考えれば、なにもそんなことはないのかもしれないね。何かを犠牲にした人は、運が悪かった人。何も失わなかった人は運がよかった人。そうだ、僕は運が悪かったんだ。いつもの僕ならこんなことは絶対に書かないだろうけどね。だって、真実がどうであったとしても「運」で人生が決まるなんて言われた日には、どうしようもできないじゃないか。ずっと祈るくらいしか。だからこそ、先生なんかは努力しろって言うし、僕もそれは正しいと思うよ。努力次第で何でもできるということにはならないけれど、何もしていない人よりかはいい人生が送れるんじゃないかな。大事なのは、考え方で、そうやって少しずつ自分に魔法をかけていくことで、きっと見える世界は素晴らしいものになるはずだ。そういうのを太古の人が考えると、「宗教」とかになってしまったんだろうね。僕は何も思わないけど。


 僕は少し前に成人を迎えたわけだけれど、なかなかいい日だったと思うよ。日付が変わるときにはみんなで大騒ぎして、朝学校では黒板におめでとうって書いてくれて、昼休みには先生に呼び出されるし、放課後にはソフトボールの練習をしたし。


 

 ああ苦い。これで今日は4杯目のコーヒーだ。

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