田んぼ

 僕は住んでいるところがだいぶ田舎で、自然に囲まれているところというのもあって、田んぼが好きだ。その中でも特に好きなのは、水は張っているけれど、田植えはまだしていないという状態。小学生のころは、カブトエビとかオタマジャクシを虫かごに入れて遊んでいたものだ。カエルが緑だったり、茶色だったりしてなんだかおもしろかった。


 3か月くらい前のこと、僕は自転車に乗っていて、小雨が降っていた。荷物はなにもない。ふといたずら心というか、童心が湧いてきて、自転車のままあの状態の田んぼに突っ込んだ。父にはこっぴどく叱られたが特に後悔はしていない。小さいころ、田んぼと田んぼの間にあるコンクリートの上を歩く遊びをしていた。平行するところで、友達とどっちが速く走れるかもした。2回に1回くらいは、どちらかがどろんこになっていた。今回といっても数か月前の話だが、その感覚を思い出した。決して、幸せなものではないはずなのに僕は満足感に包まれていた。靴に泥が入る感覚。雨の日、長靴を履かずに水たまりを踏んでしまって、靴をいっぱいいっぱいに振って、できるだけ水気を飛ばそうとする感覚。「なつかし」現代語での意味も、古語での意味も、僕はいっぱいいっぱい、楽しむことができた。


 田んぼの話をしたので、ひとつだけ田んぼの本を紹介したい。僕が中学生のころに、読書感想文の課題図書だった本だ。この本に感動して、両親に無理言って、舞台である山口県の見島まで連れて行ってもらった。自転車を借りて、一日かけて島を6割くらい回った。

 『千年の田んぼ』 石井里津子著 旬報社


 どうやら、台風が来るらしい。風が強く吹いている。植木鉢とかが飛んできて、窓が割れないかが心配だ。


 世界は本当に広い。僕は今、愛媛県のとある市にいる。その中にもいろいろと地区があるが、その地区ですれ違う人の9割位は知らない人。人間、誇張でもなんでもなくて「知らない」ことしかないんだ。古代は本当に、何も知らなかっただろうけれど、頭のいい人が無から理論を組み立てて、今の科学に繋がっていたりするのだろう。人の本能に、「知的好奇心」もしくは「知らないということを恐れる心」といったようなものがそもそも備わっていたりするのだろうか。ある市町村の一地区でもそうなのだから、世界を知ることなんて無理で、自分たちはどうしようもない存在と思うこともある。人間が地球を恣にしているのも不思議だけどね、僕は感謝しているよ。少し、自分が成長していくたびに、謎が解けるといいな。

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