繰り返し

 世の中に溢れている、どうでもいいこと。ひょっとすると、この世の中にはどうでもいいことしかないのではないか、と最近思うようになった。もちろん、僕にとってということだ。


 今日、いつも通りの時間に起きて朝ごはんを食べ、勉強をし、塾が開く時間になったので自転車で向かった。向かう場所が同じなので、必然的に通る道も同じになってくる。こういうとき、みなさんは同じ道を頑なに通るのか、日替わりで違う道を行くのか。僕は特に意味はないが、毎日同じ道で行くことにしている。二週間くらい同じところだけを走っていると、沿道の少しの変化にも気付けるようになったんだ。稲が前よりも成長したな、とか。この人はいつもこの時間に散歩しているな、とか。今日はこの公園で子どもがブランコを漕いでいないんだ、とかね。


 やはり、あんまり興味はないんだけれど、塾がある建物の壁というか屋根というか、よくわからないところに燕が巣を作っていた。微笑ましいなと思ってみていたら、巣が作りやすいように木の板を壁にはっつけていたことに気づいた。少し、幸せな気分になった。二週間くらいコンビニでホットコーヒーのSしか頼んでいないと、店員さんと以下の会話をするくらいにもなった。



「ホットコーヒーのMをひとつ。」

「今日はSじゃなくていいんですか?」

「少しご褒美です。」

「明日もがんばってくださいね。」


「アイスカフェラテのMをひとつ。」

「温めましょうか? それともミルクと砂糖を抜きましょうか?」

「別に苦いのしか飲めないわけじゃないんですよ。夏でもホットいけますし。」


 名前も知らない、50代くらいのお姉さんとの会話を楽しみにコーヒーを買いに行く。今日も。

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