もし
未来が希望に満ち溢れているというのなら、おそらく僕の体が向かっているのは過去なのだろう。世の中には不確かなことが多すぎる。そして、自分にとって不都合なことも多すぎるのだ。
人間は、「世界は、あなたを中心に回っているわけではないですよ。」と言われて育つ。なにか、親に対してわがままを言ったときだろうか。そして、そんなことはわかっている。でも、僕たちはどこかで、世界は自分を中心に回っていると思っている。もちろん、僕も。思い違いとか妄想とか願望じゃなく、どうしようもないことだ。自分に都合がいいことが起きると、「まあそうだろうな、よかった。」と安堵を抱き、都合の悪いことが起こると、「どうしてなんだよ。」と理不尽にも怒る。例に漏れず、僕もそうなのだろう。ただ、そんなことをやっていては巧く行きていけないので、なんとか抑え込んでいるのだろう。
人間は、世界は綺麗なものじゃないんだ。そして、それは紛れもなく、自分に都合が悪いからだ。独裁国家であったとしても、国民が裕福に暮らせているのならば反乱が起きにくいように、客観的に見て”それ”がどんなものであったとしても、自分に都合がよければなんでもよいのだ。まったく、人間に感情とか言葉とか、そういうのを生み出させた神という存在のなんと罪深きことよ。
桃源郷に行きたい。幸せになりたい。
嘘だ。僕はそんなことは思っていないんだ。人間の善性というものを僕は信じている。財布を駅に置き忘れていたとして、数時間経って、そこに戻ったら中身がそのままで置かれているか、最寄りの交番にあるか。落ち込んだ顔をしていたら、学校や寮で誰かが話しかけてくれる。何度も、”見知らぬ人の善性”に助けられて僕は今まで生きてきた。人間の善性を信じたい。信じないと行きていけない。そこから脱落して、待っている人生というものは想像もできない。そもそも、それが「善」であることが、社会が定めたルールなんだ。社会が都合よく、便利に回るための信じるべきルールは信じないと、やっぱり巧く生きてはいけないんだ。
桃源郷に生きたい。幸せになりたい。
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