XⅢ.Foreign

 僕はふと、不思議に思ったことがある。まあずっと思っていることだけれど。英語を話すと外国の人と意思疎通できるということはなんと不思議なことではないかな。当たり前と言われたらそうだねと言うしかないのだが、そうやっていろいろな物事を仕方ないかで済ましていたらどうしようもない。そういう日常についてこそ、いろいろと考えないといけないことがあると思うんだ。日常についていろいろ考えるのがいい人生だとか、豊かな人生かということはよくわからないけれど。せっかく考えるのには十分な「知性」を僕らは持っているんだから使わないともったいない。人間が人間たる所以のひとつは考え、進歩していくことだと思うから。


 外国人とは自分のいつも住んでいる範囲の外の人だ。日本に住んでいる外国人だって、僕からしたら範囲外のように感じる。決して差別的なことを書いているわけではないので誤解なきよう。そういえば前に現代文で「言語の壁」についての評論を読んだ気がする。「言語の限界」について書かれている。(※出典 『詩と国家「かたち」としての言葉論』 菅野覚明著)


 それによると、言語の限界というのは言葉を発しているときには常に立ちあらわれているらしい。また、言語の限界とは人と人との間の境界に相等しいとも書かれている。僕自身完全にその文章を理解しているわけではないので興味がある方は原典を読んでいただきたい。


 僕は論理的に文を書こうとしても、そもそも書くという根源的な欲情、つまり感情に駆り立てられて書いているわけだから感情ベースの文章になることが多いので評論を書くのは難しいだろうし、どこかの入試にも使われることはないだろう。それで、英語を使うと外国人と意思疎通できる話に戻ろう。こう書いていて、やっぱり思ったが当たり前のことだなあ、と。(自家撞着)


 まず、少し前の体験談を書こう。僕はラーメン屋の近くで友達を待っていた。どうやら五分後くらいには来るらしい。そして、横にはインドカレー屋さんがあったのでそこのメニューを暇つぶしにでもしようかと眺めていた。へえ、1000円でカレーのセットが食べられて、ナンもおかわり自由なのか、まあまあいいな、と。入る気はなかった。それで店員さんが出てきてしまったのだ。僕の頭はなぜかそのときは速く回って隣のラーメン屋に入るのに、気まずいと一瞬で判断を下した。まあそれを紛らわせるという目的もあったのだろうが僕はなれない英語で店員さんとお話をしたい!と思い実行した所存である。


"Hmm, I' m just watching this menu. So, I'd like to enter the ramen shop next to this curry shop. (今思い出すとだいぶ失礼なことを言っているし、文法的にもあっているかわからない。)


帰ってきたのは

「ええと、日本語大丈夫ですよ?」とまさかの達者な日本語だった。まあ日本でお店をやっているんだから日本語が話せるのは当然なのだが、僕が英語で話しかけているだけに日本語で返ってきたのは、そんなに僕の英語が拙かったのかな、と少し不安になったものだ。拙いのは事実だろうね、うん。


"There are many people speaking English in your home country, isn't it?"


文脈も関係ないし、やっぱりおかしかったのかもしれない。


"Yeah!! Your English is nice!"


 まあ相手はイギリスの旧植民地とはいえど、流石に皮肉ではないだろう。やっと英語で返ってきたし、褒められたから少し嬉しくなった。まあ、その後"See you."って言って別れて、横のラーメン屋に入ったのでやっぱり申し訳なかった。


 オンライン英会話で外国人と話したことはあったけれど、それはいわば強制であった。自分から英語を話そうって思ったのはあれかな、リスニングとかをやってるからかな最近は。それにしても、英語で自分の今までの範囲外の方と意思疎通をできたのは感動した。僕が「範囲外」という言い方をしているのは、外国人だとしても日本語を日本人と遜色なく話す人は範囲外だとは思わないからである。


 最初の話に戻る。英語でその「自分の範囲外」の人と意思疎通できるのはやっぱり不思議だ。英語を話した瞬間、僕が自分の「日本の文化圏」から一時的に抜け出して、「相手の文化圏」に入るから意思疎通ができるのだろうか。うまく説明するのは難しいな。たしかに、英語を話しているとき(そんなにないけれど)は今までの自分よりも思考が鈍い気がする。語彙も圧倒的に少ないし。外国語というのは、相手の文化圏に入らせてもらうための鍵なんだと思う。

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