7.落陽

 何もせずとも、自然の摂理に従って、落ちてゆく。太陽と違い、何もせずに再び昇ることはない。沈まぬ太陽でいるためには、なにをすればよいのか。


 散々、いろいろな授業などで「無常観」ということについては習ってきた。というより、そもそも不変というのは無理なのだ。


 最近は、ふとした行動で自分の衰えというものを感じることがある。なにも、身体的なことではない。もちろん、僕は高校生なので階段を上るのが辛いとか、胃もたれがしんどいとか言うことにはなかなかならない。どちらかというと、精神面だったり行動面だったりする。この題名の通り、今の僕が「落陽」だとするならば、数年前が南中高度だったということになってしまう。これからの人生でも、そこまでしか登れないということにもなりうる。そんなことはない。題名は別に、毎回直感で決めているだけだから気にせずに、ね。少し話を戻すと、僕は精神面と行動面で成長していない、むしろ陽が傾いていると感じるのだ。ひたすら勉強に打ち込んでいた(とは今考えると言えないかもしれないけれど)中3の秋くらい、ひたすら将棋に打ち込んでいた小学4年生くらい。最近思うのはあれだ、中学時代の部活だ。あのころの僕は、間違いなく日は昇っていた。


 ところで、僕が寮生活をしているのは既出の通りだ。みなが覚えているかは知らない。それで、今の寮には、去年の2月、つまり高1の三学期から住んでいる。なにが言いたいかというと、ひとつ下の学年がこの寮に住むというのだ、明日から。高3生はもう出ていった。何しろ、今日は国立大学の二次試験日のはずだ。あと一年になったかと思うと、気が思いというのは言うも愚かだ、という感じなのでまた別の機会に細かく書くことにしよう。したいことがなにもなく、どこの大学でも(行けるところは少ないけどね)いいというのが手詰まりなのだ。今日の昼休み、本当はいけないけれど寮生の特権として自室でゆっくりしてから五時間目の授業に出ようと思った。コーヒーでも入れようと給湯室に向かうと荷物の運搬をしている下級生とすれ違った。相手は、気まずいような顔をしてなんだか恭しく会釈をして去った。僕も懐かしいものを感じたのだ。去年の僕からしたら、新しい寮で知らない人しかいない、しかも年上となるとなかなか怖かった記憶がある。知ってるひとつ上の先輩はひとりだけだったからね。このついでに、新しい寮で印象に残っていることをもうひとつ書いておこう。それは、食堂についてだ。昔の寮は新しく、壁も天井も、そして蛍光灯も暖色系で明るかった。ただ新しい寮は、壁は真っ白、天井は灰色のコンクリート、そして蛍光灯は真っ白ときた。食事に最適なのは暖色系というのがわかっていないのか。初めてこの寮に来た日はなかなか印象的だった。今日すれ違った下級生に、「これからよろしくね」とかなんとか言いたかったものだけれど、言うとさらに怖がられていた気もするから軽く会釈を返しただけで正解だったのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る