3.転居

 書くのは4回目にして、この蒼昊のキャッチコピーには「自分とはなにかを問う」とか、相当に高尚なことを書いているけれど、実態は何ら日記などと変わりないということに少し気づいた。


 私は寮に入っていて、本日、部屋替えがあった。もともとは今週の土日の予定だったのだが、急遽、今日から移動していいというようになったので移動した。舎監さん方もよくわかっていなかったのだろう。指示はわかりにくいし、少し、話の通じない方もいる。部屋替えは2回めだ。以前あったのは高1で、そして今回だ。今回から入った部屋で卒寮まで過ごすこととなる。思い出深いことになることには違いないだろうが、それはどのような思い出になるのだろうか。なにもしなくとも、来年は「勉強だけに打ち込んだ」というような感想が残る気がする。というか、そうでないと行けないだろう。最近実感するのは、なかなかに過酷な環境にいるということだ僕は。僕が思っているから、「僕は」ということになるのだが、客観的に考えてみようとすると、しんどいのはみんな、同じことだ。僕は薄情だと言われたらそこまでだが、自分が受かればあとはなんでもいい。一緒にがんばった友達と受かるのが最善なのはわかっている。僕だけが不合格になるということだってもちろん考えられる。以前、「オプティミズムって難しい?」を書いている僕は、そのとき文面上だけではなくて相当に楽観的だったらしい。今でも、そのほうがいいと思っているが、難しい。ただ、感情の部分も努力すれば、僕の場合は考え方を変えることができる。もしかすると、そんなものは感情とは呼ばないのかもしれない。僕は機械なのかもしれない。そうであってほしくないと、最近は、明確には否定できなくなってきているのも少し悲しい。「勉強したこと」がすぐ結果に反映されれば、嬉しいのはそれはそうだが、なかなかそうは行かない。僕は今までろくに挫折をしたことがなく、おそらくこの年齢で本気で思い詰めたことのある人は少数派だと感じるが、苦しんだこともない。去年、物理とか数学はひどいくらいできなかった。物理は来年には使わないし、数学もあと2年復習すれば大丈夫と思ってきた。


 人生は、選択の積み重ねであるとはよくいったものだ。自分が失敗したこと、成功したことの責任の刃は、自らにしか向かないように作られているのだ。まだ、少し、人間でいたいと思う。

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