第10話
「だってもう遥希くんに隠す必要はないじゃない。こんな姿を見せても貴方は私達を嫌わないでしょ?」
そう言いながら腕を解き、今度は手を繋ぎながらソファの向かい側へと腰をおろす二人。
確かにそうだがイチャイチャする姿を見ればさすがに居た堪れない気分にはなるので自重して欲しいのが本音だ。
「その通りだけど俺的には羨ま過ぎて独り身の心に刺さるから俺が居ないとこでお願いしたいわ。」
ワザと心臓を押さえる素振りを見せれば二人はクスッと笑みを溢した。
「羨ましい。。。なら遥希も混ざる?」
早苗さんが首を傾けながら聞いてくるがその横で由紀さんが無言でこちらをジーッと見て居るから背中に冷たいものが流れる。
「冗談でもやめてよ。二人の邪魔は致しません。」
両手を掲げて降参のポーズを取り無害を宣言した。
「遥希くんは邪魔じゃ無いけどね。寧ろずっと一緒にーーっと、今は違うわね。さあ忘れないうちに本題にいきましょうか。
はい、貴方のパスケースね。返すのが遅れてごめんなさいね。」
ボソッと不穏な事を言った由紀さんだが話を早々に切り替え、今回の目的であるパスケースを謝罪の言葉と共に差し出してきた。
「いや、元々落とした俺が悪いから。拾って届けてくれてありがとう。」
お礼を言い丁重に受取る。
要件は済んだのでこのまま生徒会室を後にしようと立ち上がるとなぜかパスケースに抵抗がある。
よく見ると由紀さんの手がストラップを掴んでいた。
あれ?まだ用事があるのか?
視線を手から由紀さんの顔に戻す。
その目は何か期待しているようで、俺が持つ手提げをチラチラ見ている。
なるほど。
「由紀さんあれだよね、昨日言ってたお礼の話。何が良いかな?やっぱり学食のチケットとかでどう?」
つまりそうゆう事だ。と確信してお礼の話しを進めようようとしたが、由紀さんはむーっと口を尖らせ、隣の早苗さんは半眼で俺を見てくる。
反応的に違うらしい。
何だろうと思考を巡らせていると
「お礼の話じゃない。昼持参してるから一緒に食べるかと思って期待してた。でも検討違いで由紀拗ねてる。」
えーーーそれ本当?俺と食べたかったのか?と由紀さんを見ればこくんと頷いたので早苗さんが言っている事は正しいらしい。
でもなぁ、、、
「俺、昼寝優先だからサッと食べてすぐ図書室へ行くからつまらないと思うけど、それでも良いの?」
正直にそう言えば由紀さんが口を開く。
「一緒の時間を少しでも取りたいだけだから私も、早苗もつまらないなんて思わないわ。
ーーーあと、今日は時間ロスさせちゃったじゃない?図書室まで行く時間が勿体無いわ。
だから
もちろん私達は別の事をしているからお昼寝の邪魔は絶対しないから。ねっ?」
早苗さんが無表情でクッション、ブランケットそしてアイマスクと一つずつ俺に見せつけるように出していき、最後にはソファをポンポンと叩きこれで寝ていいアピールされれば昼寝好きが食いつかないわけがない。
「よろしくお願いします。」
と快諾する他ない。
そういうことで本日はお言葉に甘えることとなった。
持参していた手提げから昨日タイムセールで買ったパン達を取り出しテーブルに並べる。
すると昨日同様に早苗さんがお茶を淹れたてくれたようで目の前にスーッと湯呑みが差し出された。
ありがとうとお礼を言って改めて生徒会室を見渡す。他の役員は居らず、役員じゃない早苗さんが当たり前のように動いている事にやはり違和感が拭えない。
俺の視線を受け由紀さんがふふっと声を漏らす。
「うちの生徒会は朝と放課後でしか集まらないの。もちろん毎日では無く仕事量に合わせて必要な分だけ活動よ。クラブ活動と一緒で休み時間は活動時間外と言うことになってるの。
『だから本当は昼休みにここは使用しないのだけれども、噂の有名人さんが何かしら問題を起こすらしいから責任感が強い会長として
由紀さんは早苗さんを頬染め慈しむ目で見ながら手の甲を撫でている。
会長とヤンキーという立場や流れる噂をフルに活かしてるよ、この人!!
で、誰も来ない生徒会室に入り浸っているから早苗さんは勝手知ったるな訳だ。
「いやー、由紀さんは仕事熱心な会長で素晴らしいなぁー。早苗さんも心優しい会長の細部までの心遣いが嬉しいねー。」
つい棒読みになったのはご愛嬌。
さぁ、気を取り直して二人ともお弁当を出したようだし話しはお終い。
「「「いただきます。」」」
宣言通り昼食をさっさと片付けた俺だが早苗さんは気にする事なく先程の安眠セット渡してくれた。
だからそのままソファに横になった訳だが、、正直寝れる気がしなかった。
なんせここは生徒会室な訳だし、何より美女二人が目の前にいるんだ。
アイマスクしてると二人のキャハハ、ウフフのイチャつきがしっかり耳に届きこんなんじゃ眠れるはずーーーーーーーー
「遥希くんおはよう。」
気付いたら由紀さんに揺すぶられ目を覚ます。時計を見れば予鈴が少し前に鳴った後。
うそー、予鈴にすら気付かず寝てたよ。しかもここ一番のスッキリした目覚めなんですけど。
その事に呆気に取られているとぬっと早苗さんが視界に入って来た。
「ぐっすり。全然起きなかった。気に入った?」
よしよしと子供の頭を撫でるように俺の頭をグリグリとしてきた。
「まさかの熟睡だったよ。なんか身体も軽いし疲れが取れた感じ。
枕の肌触りも柔らかさも気持ちいし、石鹸の香りとかすごい落ち着いた。安眠グッズ冗談抜きに最高。」
お世話抜きで絶賛すると二人とも嬉しそうに頬を緩めた。
「それは良かったわ。遥希くん相性いいみたいね。そんなに喜んでもらえて私達も嬉しいわ。
じゃあこれからは生徒会室で寝たら良いんじゃないかしら?」
そんなとんでも提案をしてきた。
「いやいや流石にそれは駄目だよ。密室で男女で居るのは体裁がよく無いし、何かあったらどうするの?」
「あら、遥希くんは私達を襲っちゃうの?」
「いや、襲わないけど。」
「ならいいじゃない。」
「駄目!高校生男子の薄っぺらい理性信じない!」
「でも貴方は互いに想いが通じ合って居ないとそんな関係を結ばないんでしょ?」
「そうだけど。」
「なら信じるわ。」
「いや、、、でも俺が居ると二人の邪魔ー」
「遥希、邪魔じゃ無い。」
「」
「私達は初めての理解者である遥希くんともっと同じ時間を過ごしたいの。だからお願い。」
「ん。」
あっ、駄目だ。二人してそんな捨てられた子犬のような目で見つめられたらもう断れない。
それにを抜きにしても実際ここの寝心地は魅力的すぎる。
「分かった。じゃあ明日からお願いします。」
そう了承すると二人は嬉しそうに抱きしめ合っていた。
二人が笑顔なら、、、まぁいっか。
俺も自然と口角が上がる。
キーン コーン カーン コーン
「「「あっ」」」
本鈴が鳴り響く。
三人共が授業に遅刻したのはいうまでも無い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます