第11話
そのまま慌ただしく解散となり急いで教室へと到着したが既に授業は始まっており頭を下げながら入る事となった。
授業の終わりには先生より課題の割り増しを言い渡された。
一つため息をついて教科書を片付けていると
「今まで遅刻なんて絶対しなかったのにどしたん?体調不良か?」
カズが背中を突ついて心配気に話し掛けてきた。
珍しく遅刻し心配を掛けてしまったようだ。
「いや、元気元気。ただ、ちょっといつもとペースが崩れて油断したというか、、。」
生徒会室のことを言うわけにもいかず言葉を濁すが、そんな俺にカズは「それなら良いんだけど。」とイマイチ納得出来ないような顔をしていた。
そして次の授業、そしてホームルームと過ぎて行き放課後となった。
「さあ!奢り飯だーーー!やっぱここはいつもの中華っしょ!」
ハイテンションなカズに苦笑いする。
「ったく、人の金だと思って。まぁ良いけど。じゃあ行くか。」
行き付けとしている中華屋は俺の家の近くのため着く頃にはちょうど開店する時間だ。
駄弁りながら階段を降りていると銀色の髪の人物が上がって来るのが目に入った。
こんな綺麗な色は一人しかいない、早苗さんだ。
彼女も俺に気付き一瞬目が合うも、すぐ視線を外した。
そりゃそうだ。今まで無関係だった俺達が急に親し気にしたら違和感が生じてしまう。
だから俺も真っ直ぐ前を向いた。
そのまま何事ともなくすれ違う、、かと思ったその瞬間、彼女が小指を絡ませギュッと力を込めすぐ離れていく。
一瞬の出来事に身体がビクッ揺れカズが訝し気な表情で俺を覗き込んだが「何でもない」と首を振り平静を装った。
この、イタズラ娘が!
とまぁ、そんなちょっとしたハプニングもありつつも目的地へと到着した。
まだ開店したばかりの為俺たちが一番乗りのようだ。
「ここなら大丈夫だと思うが、良心を忘れず程々に注文してくれよ。」
「分かってる、分かってる。」
嬉々としてメニューを手に取るカズ。
この中華屋はリーズナブルな価格でガツ盛りが食べられるという何とも学生に優しい店で俺たち学生は重宝している。
カズは酢豚定食ご飯大盛り、俺はラーメンを注文し、程なく料理がテーブルに並べられた。
「「いただきます。」」
と食べ始め暫くするとカズから思いもよらぬ問いかけをされる。
「なあ、さっきの遅刻ってさぁーーーカイチョにが関係するんでない?」
「っん゛ん゛?!!」
その言葉に口に入れていた麺を出しそうになったが持ち直し、何とか咀嚼し呑み込んだ。
カズを見ると目を細めていた。
やましいことは一切無いが極力彼女達の話は避けたい所だ。
「突然何だよ。どこから生徒会長が出てきたんだ?」
用事があるとは言ったが由紀さんに会いに行くとは言ってないはずだ。
「ほら昨日落とし物の話してたから何となく?それ関係の用事だったかなって。」
鋭いな。
だがパスケースの話だけなら問題ないかと少し話すことにした。
「そう当たり。落とし物の話しだった。
で早々にそれを返して貰って用件は済んだもんだからその後昼寝したんだけど、今回は何故か起きれなかったんだよな。生徒会室に行って緊張でもしたのかもしれないなぁ。」
「ふーーん。ってかまだ返して貰ってなかったのかよー。」
「いやさ、カズが
「ううっ、すみません。。」
「あれ?俺、やっぱり奢らないでも
良いんじゃないか?」
「それはそれ。コレはコレって言う事でーー、なっ??」
「仕方がないなー。」
「へへへっ。」
上手く話が流れたようでこのまま食事が再開した。
全て食べ終わり店を出る。
同じ中学出身なので帰り道は途中まで一緒だ。
カズは腹を叩きながら「ふー満足満足。」とニコニコしていた。
「あーーそういえば今日ハル第二図書に居なかったよな?どこで寝てたん?」
「へっ?」
不意打ちの言葉に動揺してしまい変な声が漏れた。
鎌をかけられている?だがカズがそんなことでする理由あるか?
ーーーいや、どちらにしてもちゃんと事実は伝えてないと駄目だろう。
本当の事は言えなくても。。
「あぁ、今日は昼
若干判定がグレーな発言だがこれぐらいは許して欲しい。
「まぁ、どこで寝ても良いけど遅刻はやめろよなー、心配させんなよ。
あっ、そうだ。んじゃあさぁ、今度からハルが寝坊しない様に俺も一緒に行くってのはど?」
どこに居たかは流してくれたが今度は許容出来ない事を言ってきた。
いくらカズでもこれは譲れない。
「すまん、それは無理だ。俺、誰か居ると熟睡できなくて体調崩す。あと夢見悪くなるから絶対駄目だ。」
こればっかりはどうしようも無いのではっきり断り、誠意を込めて頭を下げる。
「ゔー、大親友の俺でも駄目?」
「すまん。」
「俺様の愛でも駄目かー、クソー。おりゃー」
すかさずチョークスリーパーもどきが決められる。
空気を変えるためにカズがワザと茶化してくれているのがわかる。
「ごめんって、ギブギブ。」
すかさずカズの腕にタップする。
だが緩む気配はない。
「あれ何かお前良い匂いすんな。
くんくん、石鹸?、、、と何だもう一つ、ラベンダーか?」
ちょっ、人通りがある道のど真ん中でそれはやめてくれ!
カズの腕を解こうとするがびくともしない。その細身にどれだけの力隠してるんだ。
「やっ、やめろ!嗅ぐなって!周りみろよ、見られてるから!!」
遠巻きから女子高生、女子中学生の熱っぽくねっとりした視線を身に受ける。
あっ、これ駄目な視線、、、、何かに目覚めてませんか!?
藻掻くだけ藻掻いたがどうにもならず、諦め力を抜き好きにさせていたら暫くして満足?したのか離してくれた。
そうこうしている内に別れ道に着き「また明日。」と手を挙げてそれぞれ帰路に着く。
カズはこんなふうにに行き過ぎた所があるが空気を読んだりこちらを慮ってくれる本当に良い奴だ。
そんな良い奴が俺みたいなのと連んでるのが少し申し訳なくなる。
一人歩きながらふと思った。
昼は何故か悪夢も無しに熟睡できた。
しかも身体が軽いとかいつぶりだろう、と。
ん、そういえばラベンダーの香り?
襟元は、たぶんクッションの石鹸の香りだろう。
他は、、、ん、袖か?
スンスン、えっ!マジでラベンダーの香りがするぞ。
なぜ?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ボソッ
「石鹸とラベンダー
どこでついたら匂いだろうな、ハル、、。」
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