第79話 生花店で仏花を受け取る時にしたやりとりは(2)
「うん。小中一緒。ただ同じクラスになったことはないし特に仲良かった訳でもないよ。お互いの顔はしってたけどね。そもそも、日奈達とエリナを繋いだのって私と言ってもいいんだから」
「マジ? 全然知らなかった」
この情報には少し驚く。この期に及んで次から次へと新しい情報だらけだ。
「そもそも、日奈が私の事をグループに入れたのもそれが要因かもしれない」
入学式の後、クラスの初顔合わせの時に、本宿さんが日奈に言ったんだそうだ。自分はエリナと学校がずっと一緒だった。顔見知りだと。
「じゃあ、日奈はエリナの事を引き入れる為に貴方を利用したって事?」
「そこまでは言わないよ。私も自分から誰かと仲良くしようって飛び込むタイプじゃない。でも、日奈はそんな私をグループに入れてくれた。別にエリナの事があっての事じゃないと想う」
それはそれで嘘じゃないのだろう。日奈は別に悪い奴じゃない。ただ、ちょっと調子がいいだけなのだ。
「へ~。まだまだ知らない人間関係ってあるんだね。でも、貴方はエリナとそんなに親しくはなかったんでしょ。良く顔を覚えてたね」
同じ学校出身だからといって他のクラスの子の顔まで覚えている物だろうか。
「昔から彼女は目立ってからね、顔立ちも変わってないからさ、そりゃ分かるよ。それに、店の手伝いなんかしてると偶に彼女が前通ったりするのも何度か見たしね」
「ああそうか。この辺て繁華街だもんね」
この辺りは街の中で一番人が集まる場所だ。当然お店の前を通ってもおかしくは無いか。
「うん。特に覚えてるのは去年のクリスマスの時期かな。すぐそこの携帯ショップから熊谷先生と二人で紙袋を持って出てくるのを見た時かな」
クリスマス。そうだ、確かエリナが熊谷先生とスマホカバーのお揃いをプレゼントしたと言ってたっけ。じゃあ、その時にプレゼントとしてスマホカバーを購入したのかもしれない。でも、私はそれを聞いて違和感を感じた。
「え? 去年って。まだ、高校に入る前だよね。本宿さんは熊谷先生の事知ってたの?」
まだ、二人共中学生だった筈だ。では、熊谷しおり先生の事も知らなかったのではないか。
「勿論その時は知らないよ。でも、お互い凄く幸せそうで親しそうだったから、お姉さんとか身内の人かなって思ってたんだ。後で熊谷君のお姉さんだって教えて貰えったんだけどね」
因みに本宿さんと熊谷君は何度かクラスも被った事があるそうだ。
「そうなんだ。じゃああの二人はやっぱり相当仲良かったんだね」
「うん。その時以外も偶に一緒に歩いている所を見かけたな。本当の姉妹みたいに見えたよ」
「エリナも実際言ってたよ。本当のお姉さんみたいに思ってたって」
「そっか。じゃあ、私の感覚間違ってなかったんだね」彼女は話をしながら感傷的な気分になったようだったが、視線を時計にやるとそれを押し殺すようにトーンを上げて私に向かって言った「さあ、そろそろ時間じゃない? 行っといで」
「うん。そうだね。色々ありがとう。また学校でね」
「うん。また、気を付けてね。熊谷君が待ってるんでしょ。よろしくいっといて」
手を振って言う彼女に向かって軽く頭を下げながら私は手に生花を持って駅へ向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます