第6話
あやかの誕生日当日。
と言っても本人は完全に忘れていたが。
あやかと海翔はいつも通りに学校に行き、授業を受けて放課後になった。
その間、本当に何もなかった。
強いて言うなら、海翔が誕生日パーティが上手くいくか少し不安になっていたぐらいだったが、それ以外に特には無かった。
放課後。
「今日は、皆でカラオケに行くね!」
「!そうか、分かった!俺は今日、買い出し当番だから先に帰ってるな!」
「OK!」
今日はあやかがクラスメイトとカラオケに行くらしいので、海翔はこれは好都合だとあやかを送り出した。
「……おっ!そうだ!あれならお祝いになるな!」
あやかは、クラスメイトと共に店に向かっている。
その途中で、波音とばったり会った。
「あ、波音じゃん!偶然だね」
「あ、お姉ちゃん!今日は、どこへ行くの?」
「ちょっとカラオケにね。あ、そうだ!波音も来る?」
「行く!」
せっかくの義姉の誘い。断るなんて言語道断と波音はついていくことにした。
そして着いたカラオケ店にて、あやかと波音含めたカラオケメンバーは、盛り上がっていた。
「次、どの歌、歌う?」
「あ、俺、これ歌うわ!」
益男が曲を入れていく。
「皆は何か歌いたいのある?俺が曲入れとくよ?」
「じゃあ、盛り上がれるやつ!」
「そうか、それなら……」
そんな喧騒の横で、あやかは頭をもんでいた。
「どうしたの?お姉ちゃん」
「いや、何か忘れてるような気がしてさ……」
誕生日も半分以上過ぎ去った今になって、ようやく何かが引っ掛かるようになったのだ。
「大丈夫でしょ。すぐ思い出せるって」
「そうかなぁ?」
陽菜はあっけらかんと答えた。
「そうそう、こうやってパーッと歌えばそのうち出てくるって!だから歌おう!」
周りの人たちも、「まぁ、ずっと悩んでるよりかは歌った方がいいと思う」とか、「忘れていることは、大切な事だったら絶対何かの拍子に思い出すんだから」と言ってくる。
「まぁ、確かにそうだよね!じゃあ、歌おう!」
「と、その前に俺の番な」
そう言ってクラスメイトの男子がマイクを持つ。
「birthday?」
「そう!有名なアーティストの曲で、俺好きなんだよな~!」
そう言いながら歌いだそうとしたその瞬間。
「あ、今日私、誕生日だ!」
「「「え???」」」
クラスメイト達が凍り付く。
「え、ホントに?あやかちゃん、誕生日?」
「そうそう、今日だった!すっかり忘れてた!いや、出てこないもんだね~でも、思い出せてすっきりした!」
とあやかは笑っている。
「それじゃあお祝いしなくちゃ!」
「そうですね!」
そう言ってカラオケメンバーの何人かと波音が部屋から飛び出していく。
しばらくすると、皆が戻ってきた。
手にはコンビニの袋が握られている。
「ほら、ケーキ!お祝いしましょ!」
皆はそう言うと、有無を言わさずテーブルの上にケーキを出していく。
「え、あ、ちょっと……」
「ほら、皆、せーの!」
「「「ハッピバースデートゥユー!……」」」
あやかは、ちょっと戸惑いながらも、せっかくなので、祝われることにした。
「ごめんね!まさか今日が誕生日なんて知らなくて……プレゼントが無い」
「いいよいいよ!私が伝えてなかったのが悪いんだし。それにこうやって祝ってくれるだけで十分!」
あやかはにっこりと笑った。
「それならいいんだけど……」
陽菜はちょっと申し訳なさそうにしている。
「それなら、来年!お祝いしてくれたら十分、ね!」
「……うん!来年はもっと盛大にするね!誕生日プレゼントは包丁がいい?」
陽菜はやっと笑顔を見せた。
「ええ、いい……ちょっと待って、包丁って言った?」
「うん!だってヤンデレと包丁って切っても切り離せない仲でしょ!」
「いや、私はそもそも包丁使わないから!」
あやかはとんでもないプレゼントを贈ろうとする陽菜を必死に止める。
「え、俺もそういう系がいいんじゃないかって思ってたけど」
「さすがに銃刀法違反はしないよ……」
「あっ……」
声のした方を向くと、波音が何やらメモを消していたようだ。
「えっ皆私に包丁送ろうとしてたの!?」
「「「うん」」」
「マジか……」
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