第4話
「はぁ……」
大きなショッピングモールのアクセサリー店で一人、俺はプレゼントで悩んでいた。
あやかの誕生日が近づいてきた俺は、どうせならサプライズがしたいなと思って内緒でここにきている。
一応、分厚い天井のあるショッピングモールだから携帯のGPSは微妙に使い物にならないだろうと思いつつも、念のためロッカーに放り込み。
盗聴器にサプライズがばれないように一切無言で買い物をしている。
それにしてもだ。
(何を買えば、あやかは喜んでくれるだろう……)
正直、色々と候補はある。ハンカチだとか、ネックレスだとか、後は指輪とか。
……まぁ、俺のバイト代で買えるものなんてせいぜいたかが知れているが。
もしかしたら、手錠とかの方が喜んでもらえるんじゃないかとは思っているが、誕生日に彼氏から送られるものではないと思う。
手作りで何かをあげようかと思ったが、俺、料理以外のスキルがあまり高くないから、手編みのマフラーとかも難しい。
(どうしようか……)
少し前にそれとなく聞いてみたことがある。
その時は、「海翔がいればそれでいい」って言ってくれたけど……。
いや、もしかしたらその選択肢もアリなんじゃないか?
俺は少し想像してみる。
『誕生日プレゼントは、オ・レ』
「ないな」
思わず口から洩れたが、当然のクオリティであった。
何だあの怪物は。
しかも、『ワ・タ・シ』じゃないから、なんかカフェオレみたいになってるし。
……もしかしたらあやかは喜ぶかもしれないが。
あやかのことをもっと考えてみれば、いい案が浮かぶかもしれない。
あやかって自分でヤンデレって言ってるし、若干病みっぽいのは確かではあるんだが、なんだろう、やけに冷静。
まぁ、病んでくるときもものすごくかわいいんだが。
う~ん。
俺はショッピングモールの中をうろうろしながら、どうしようかを考えている。
とそこに。
「おっ!海翔じゃないか!」
「益男!」
友達の益男が歩いてきた。隣にはやや年上の女性を連れている。
「どうしたんだ、こんなところで?」
「ちょっと買い物しててさ」
「そうなんだ」
「で、隣の方は?お姉さん?」
「いや、母ちゃん」
「は?」
俺がそう言うと、益男のお母さんはぺこりと頭を下げてきた。
「いつも益男がお世話になってます」
「あ、いえいえ、そんな。お若いですね!てっきり益男君のお姉さんかと」
「やだやだ、お世辞の上手なことで……」
そんなこんなで少し雑談をして二人と別れた。
「それじゃ、私たちは今からちょっと用事があるので」
「なんか、ハンドメイドの講座らしいぜ。一緒に来るか?」
「……いや、やめとくよ」
ここの会話全部あやかに筒抜けだろうし。
「そっか、じゃあな、また学校で!」
「おう!」
そう言って二人と別れた。
俺は再び、歩きながら物思いにふける。
(なかなかに喜んでもらえそうなプレゼントは難しいな)
いっそほんとに手作りとかにしちゃおうか。
でも、やっぱり不格好な物よりかは綺麗な物を送りたい。
そう言った綺麗なものを作るんだったら、あやかの方が専門だ。
この前、俺の缶バッジを作っていた時は、びっくりした。
……ん?
「そうだ!その手があった!」
俺は思い浮かんだ良いプレゼントを買いに、ショッピングモール内を進み始めた。
これなら、きっと喜んでくれる!
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