第3話
あやかの提案を承諾した三人は、本当に特級呪物でも出てくるんじゃないかと戦々恐々としながら、あやかの家へとやってきた。
……正確には、あやかと海翔、そして海翔の妹の波音が三人で暮らしている家であるが。
「さぁ!入って入って!」
やけにうきうきした表情のあやかは三人を家に招き入れる。
正直、友達を家に招待したことなんてほとんどない彼女にとって、この状況は、胸躍る状況そのものであった。ちなみに今日は海翔が買い出し当番で、帰りが遅い。
「あ、そうだ!コレクション、どうしようか。私の部屋まで行く?それとも持ってこようか?」
「……あやかの部屋って、その、大丈夫なの?」
不安そうに聞いてくる美智子にあやかはあっけらかんと答える。
「海翔は、『よくこの部屋で生活できるなぁ』って言ってたけど、まぁ、ちょっと壁紙がおかしい程度だと思ってもらえれば!」
「……逆に気になってきた」
「……私も」
「……虎穴に入らずんば虎子を得ずってやつね」
「いや、私の部屋はそんな危ない所じゃ……いや、大丈夫だと断言はできないな」
確かに思い返してみると、あれは激ヤバな部屋なのでは?と考えるあやか。
「まぁ、部屋でいいよ。コレクションを持ってくるのも大変な気がするし」
「私も美智子ちゃんに賛成!」
「私も」
三人が部屋でいいというので、あやかは恐る恐る三人を部屋に案内する。
「ほら、ここが私のへやで~す……」
……まぁ、何という事でしょう。
部屋に入ってまず目に入るのは壁や天井に無作為に貼られた海翔の写真、写真、写真。
しかも半分くらいカメラ目線でない奴。
「ど、どう?」
あやかがおそるおそる聞くと、美智子は
「予想していた病み部屋そのもので逆に落ち着いてきた」
と答える。
他の二人も、
「いや、海翔君って凄いね。これが隣の部屋とか」
とか、
「これも一種のデザインなのかしら?」
とか思い思いの感想を述べている。
あやかは、とりあえず、三人をベッドに座らせる。
「じゃあ、見せるね」
あやかがそう言うと、陽菜が首を傾げて
「髪の毛?」
と言った。
「いや、髪の毛は無いね」
とあやかは少し苦笑しながら押し入れを開けた。
「え、でも、ヤンデレって髪の毛とか集めるんじゃないの?」
「いや、海翔が『不衛生だから』ってあんましいい顔しないのよ」
「じゃあ、使用済みのTシャツとかかしら?」
南がそうあやかに聞くと、
「Tシャツはね~。買うと高いんだよ。どうしても使用済みの日用品とか消耗品は、収集しようとすると手が止まる」
結構真顔で答えるあやか。
「え?じゃあ、何をコレクションしてるの?」
「それはね~これ!」
あやかが取り出したのは大きな段ボール。
それを開いて取ったのは……。
「「「クリアファイル?」」」
「それにほら!」
「アクリルスタンドだ……」
なんと、あやかが取り出したのは海翔の写真やイラストが使われたアクリルスタンドや缶バッジ、そしてクリアファイルだった。
「これ、どうしたの!?」
陽菜は開いた口がふさがらないようで、あやかに聞いてくる。
「これ?作った」
「作ったの!?」
「そう」
あやかは、まるで普通の事のように答える。
「まぁ、最近はこういったものを自作する人もいるぐらいだし、作り方もネットとかで調べられるよ」
と言いながら、あやかはその手に持った海翔グッズを並べる。
そこに美智子が疑問をもらす。
「使わないの?」
あやかは、ふぅっとため息をついて一言。
「……なんか、もったいなくて。それにどこで使えばいいのか、いざ作ってみると分からなくなって」
美智子と南は、内心、(いや、作った意味……)と考えてしまったが、陽菜はあやかの手を取り、「わかるっ!!」と一言。
「そうだよね!なんか、こういう奴って使いづらくてさ。でも次々買っちゃうからどんどんたまってくという……」
「でもせっかく作ったんだし、缶バッジくらいは使えばいいのに。それってまだ量産できるでしょ?」
美智子がそう言うと、あやかは少し考えたのち、「まぁ、それもそうか」と海翔のイラストが描かれた缶バッジを取り出し、カバンにつけてみた。
「ど、どう?」
「面白バカップル」
美智子は冷淡に切り捨てた。
「皆もいる?」
「「「遠慮しておきます」」」
本当に、と三人の心が一致した瞬間であった。
「ちなみに許可は取ってるの?」
「もちろん!本人公認のグッズだよ」
「ほんとにあやかの彼氏ってなんというか、凄い人だね」
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