Invincible Heroines

不屈なんて格好いいものじゃないんです。ただ友達なの。

先生は戸惑われるかもしれませんね。

荒唐無稽な話ですから。

信じてくださらなくていいんです。

ただ、もう、事件から3年ですから。

ようやく、最近、向き合えるようになってきたんです。

遅いかも知れないですけど、遅すぎる事はあんまりないって、先生、前のセッションでおっしゃってくれたから。


ずっと考えてたんです。

どう言えばいいかわからなくて。

色々、調べたんです。

妖怪辞典とか、読んで、はは、もうこの時点で、て感じですよね。

いいんです、おかしいと思われても。

でも何回も言うのはつらいから、警察には先生から伝えていただけますか。

守秘義務とかあるから、ダメですか?


ありがとうございます。先生、優しいですね。

じゃあえっと、里見さんとは、大学の登山サークルで仲良くなって、社会人になってからもよく、いろんな山に登ってたんですね。


そうですそうです、事件のあった日も、そういうノリで行ったんです。

あの日も、里見さんが誘ってくれて、時期の割に空いてる山があるらしいって。

私たち登山はよく行きましたけど、誘ってくれるのはいつも里見さんからでした。

里見さんは、積極的っていうか、行動力のある人なんです。

私なんかいっつも待ってるばっかりで、だいたいいつも、そろそろ里見さんからお声がかからないかな、て、思ってたんですよ。

3ヶ月に一回くらい、もうほとんど定期的に、里見さんが誘ってくれるんです。

宿とかロッヂとか、景観ポイントも、全部調べて、私が「レンタカー手配しよっか」ていう頃には「もうしちゃった」とか言って。

里見さんはそういう子なんです。

大学の頃からずっとそうです、山登るためにジムとか行きだして。

私は、だからテント張りとか、運転とか、お弁当作ったりとか、そういう現地での仕事で、なるべく役に立とうって。

でもあの日は、社会人でしたし、連休明けたら仕事もありますから、そういう本格的なのじゃなくて。

ほんのハイキング程度の気持ちだったんですよ。

1日で行って帰って来られる山だったんです。

普通に、登山道とか整備してある山に登ったんです。


はい、そうです。蔵王の、その山です。

晴れてたし、森が鬱蒼としてたとか、そんなこと全然なくて、でも今思うと、すごく静かだったなって。

だって、沢の音、はい。事件現場の沢です。


沢にですね。

行こうってなったのは、水音がよく聞こえたからなんですよ。


言ってみたら結構小さい沢だったのに、さらさら~って、流れる音がよく聞こえて、だからちょっと見ていこうかってなったんです。

そんな高い山じゃなかったし、下山途中で暑かったし、油断してたっていったらそうなんですけど、だって小学生とか林間学校で登る山なんですよ。

あの辺は、水が透明で、底まで見えて、すごく綺麗なんです。

だからちょっと清流観光みたいな、そんな、その程度の気持ちだったんです。


15時頃?

そうです、そんくらいの時間です。

全然なんか出るって感じしないじゃないですか。

GWでしたし、暑かったし、晴れてたし、明るいし。

でも考えてみたらおかしかったんですよね。

だって気軽に登れる登山道で、めっちゃ整備されてるのに、本当、誰とも会わなかったんです。

だから容疑者扱いされたてんですけど、はは、猟友会の方に、そこは、感謝してます、本当。


「水の音がする」て気づいたのは里見さんです。

「暑いし、足でも冷やそう」て登山道外れて、水音の方に行きました。

そこは、警察にもお話しした通りです。

誘ってくれたのは里見さんです。いつもそうです。誘うのは里見さん。

蛇にだけ気をつけようって、ごつめの登山靴履いてたから、足が蒸れるよね、て、話しました。

登山道の入り口に駐車場があって、車停めたんですけど、そこまで歩いて30分もないし、ちょっと足冷まそうって。


沢は登山道外れたとこにあって、音を頼りに行きました。

本当、蛇だけ気をつけて。

麓まで、歩いて30分ないですから。

野生動物も降りて来ないだろって思って。

沢は普通に綺麗でした。

反対側も河原になってて、水深も、浅いとこなら膝までないくらいで底まで見えて。

真ん中の方は少し深めで底も見えなかったから、浅いとこでパシャパシャやってました。


なにがダメだったんですかね。

どっからダメだったんですかね。

そこでそのまま、1時間くらい話し込んじゃったのがダメだったのかな、早く帰ればよかった。

すみません、やっぱり泣いちゃった。はは。


気持ちよかったんですよ。

太陽にあっためられた石で、河原とかぽかぽかで、でも足元だけ綺麗な水が流れてて、晴れてて、静かで、社会人3年目で。

ボーナスの話とかしました。

いくら下がったとか上がったとか。

ゆうて趣味に時間使えて、こうして里見さんとも定期的に会えて、仕事慣れてきたし、責任重い業務とか面倒みなきゃない部下とかまだいないし、今が一番幸せなんだろうな、て。


包丁見つけたのは、その後です。

そろそろ行かないと暗くなるねって話して、GPSで登山道割り出して、ちょっと近道のつもりで、沢に沿って歩いて、途中で見つけました。

そうです、証拠で押収されたやつです。

持ってきたんじゃないです、本当に、落ちてたんですよ。


包丁は錆びてました。

川水のせいだと思います。

結構刃渡りがあって、魚切る、出刃包丁?

四角いやつです。

見つけた時はびっくりしましたし、もう二人とも足止まったくらいで。

こわいこわいこわいこわい、て。

めっちゃ後退りましたよね。

ほとんど逃げ腰でした。

刃物って無造作にあると、あるだけなのに怖いですよね。

でも冷静になろって。

里見さんが言って。

麓も近いし、釣り人が魚捌くのにつかったんじゃないって。

このまま放置して、水や土に錆びの成分が染み出したらやばいよね、て。

里見さんが言ってくれたんです。

里見さんは、しっかりした子だから。

現場での仕事は私の担当だと思ったから、アクティブモンスターの里見さんに拾わせる前にって、軍手してたし、私走ってって、摘み上げました。

ええ。包丁を。


距離ですか? 数m先ですよ。

警察にも何回も聞かれましたけど、ほんと、包丁まで5mなくて。

でも、私が先に動いちゃったから。


いつそいつが出てきたのか、私は見てないんです。


ただ、里見さんが叫んで、私すっごいびっくりして振り向いたら、もうその拍子に里見さんがすごい勢いで走ってきて、腕掴んで、そのまま私引っ張られて。

包丁はその時落としました。

落としたんです。

後ろから、ばしゃばしゃ水割って、なんか、誰かが追ってくる音がしました。


誰かは、わかりません、でした。私は音聞いただけです。

でも、多分、順番的には、そいつが対岸に現れて、里見さんが見つけて、悲鳴あげて。

そいつが沢渡って来たから、里見さんは逃げたんだと思います。

推測ですよ。だって、3年、何回も考えたし、思い出したし。

シミュレートして。繰り返し。何が起こったんだろうって。


私が振り向こうとしたら「見るな!!」て里見さんに怒鳴られて。里見さんは、逃げざま私を捕まえてくれたんです。引っ張ってくれたっていうのかな。「見るな見るな見るな走れ!」て、すごい剣幕でした。

そんな命令みたいに里見さんに怒られるとか初めてだったけど、足音で、追われてるってわかったから、もう私わけわかんなくて、熊かと思って泣いちゃって。

ヒグマって、速いんですよ。足。大きいのに。


そうです。里見さんが手を引いてくれたから。

前を走ってたのは里見さんです。

私「何!?」て聞いたんだけど、里見さん、「いいから逃げろ!」て。

めちゃくちゃに走ってるから、登山道つかないし、そのうち涙で前見えなくなって、私、転んでしまって。

里見さんはがっちり私掴んでたから、引っ張られて転んで、私が後ろ確認したのはその時です。

追って来てるのとの距離とか、何が起きてるのかとか、そういう。

確認したくなるじゃないですか。


本当、こっから荒唐無稽なんですけど……熊じゃなかったんです。


猿でした。でも体は犬でした。頭が猿の、熊みたいなサイズの、でも前足が長い、犬猿でした。


猿猴(えんこう)って知ってますか?

中国の妖怪で、猿頭の山犬で、腕が長くて。河童の親戚みたいなものなんですけど。

私が調べた中では、それが一番似てました。今検索しますね……これです。

私が見たのが、これかどうかは、わかりません。

でも、似てます、すごく。

体つきとか犬なんですけど、毛の感じとか猿っぽいんですよ。もふって感じじゃなく、ごわっていうか、全身剛毛みたいな。

目は大きくて、ちょっと飛び出てるっていうか、カメレオンみたいで、顔だけ人間みたいに毛がないのに、しわくちゃで……。


そいつが追って来てたんですよ。

犬なのに、二足歩行でした。熊くらい大きかった。

私、動転しちゃって、立つって選択肢が出て来なかったんです。

逃げなきゃって思って、思ったら、手も足もバラバラにしか動きませんでした。


猿猴って、いえそいつが猿猴かはわかんないんですけど、猿猴は、河童の仲間だから、沢とか、水辺にいて。

妖怪辞典だと、人間の内臓引っこ抜いて食うって、いえ、尻子玉ではないです。膵臓だったかな?


私が振り向いた時点で、そいつとは3mも離れてませんでした。

そしたら、里見さんが、地面で這ってる私とそいつの間に、飛び出して来たんですね。

飛び出して来てくれたんです。

大きめの枝持って……。

助かるかも、て、一瞬思いました。

その時です。私が冷静さ取り戻したの。

ああそうだ里見さんがいるじゃんって。

一人じゃないんだって。

里見さん、「来いやぁ!!」って。


あとは一瞬でした。


そいつが長い腕振ったら、里見さん吹っ飛んで、勢いで首、あたま、首が……ちぎれて、頭、ぽーんって……とんで行って。

血しぶきが、ぬるくて。


報道では殺害時の返り血とか言われましたけど、違います。


私、絶叫して、逃げました。

逃げたんです。

怖くて。

体が勝手に動くって、本当にあるんですよ。

気づいたら走り出してたんです。

怖くて、怖くて、怖くて。

なんにも考えられなかった。

里見さん、里見さんは、私を助けてくれたのに……。


めちゃくちゃに走って、疲れて、太い木の陰に隠れて……耳すますと、声が聞こえるんですよ。

里見さんの声です。

私のこと、呼んでるんです。

そんなわけないのに、私、里見さん本当は、生きてるんじゃないかと思って。

本当は全部夢なんじゃないかと思って。

そうだったらいいなって。

応えちゃったんです。「里見さーん!」て。バカでした。

すぐ物音がして、里見さんかと思って木陰から飛び出したら、そいつでした。

そいつが、里見さんの声で、私のこと呼んでたんです。

口の周りとか血だらけで、涎だか血だかわからないのが口の端から垂れてて、もう私終わりだって。

私死ぬんだって思ったんですけど。


ここから、本当、本当に、荒唐無稽なんですけど。


来たんです。里見さんが。


ていうか、里見さんの首が、ポーンて飛んで来たんです。ええ。そいつの後ろから。


目とか片方潰れてて、腫れて、所々青黒くなってました。

鼻血も出てたし、歯も何本か欠けてて、唇もぶっくり腫れてて、吹っ飛んだ時色々ぶつかったんだと思います。


口に、私が落とした包丁を咥えてました。

私、怖くて腰が抜けちゃって。

最初、首が里見さんだってわかんなくて、生首も私を殺しに来たのかと思ったから。


でも里見さんの首は、思い切りそいつにぶつかって、そいつの肩に、包丁刺して。

そいつは包丁刺されたとこから、煙だしました。

すごいくさかった。

腐った玉ねぎみたいな臭いです。

生首は、そいつにすぐ振り払われたんですけど、そしたら肋骨が見えてて腸がはみ出てる、里見さんの服着たぼろぼろの、体が、よたよた走ってくるんですよ。


もう私わけわかんなくて。

気が遠くなったんですけど。

生首が叫んだんです。

「逃げて」って。

里見さんの声でした。

生首が里見さんだって気づいたのはその時です。

すみません、もうだめだ、ティッシュありますか。


ありがとうございます。

里見さん、里見さんは、首は払い飛ばされて、またどっかいったんですけど。里見さんの体は。

そいつに触れると、組みついて、そいつの肩から包丁抜いて、ええ、腕が。

生きてるみたいに腕が動いたんです。

そんで抜いた包丁を背中に刺しました。

そいつは暴れて、体を、里見さんの体を上半身と下半身に裂いて。

そうです。私じゃない。里見さんの遺体がバラバラだったのは、そいつが引き裂いて、里見さんが戦ってくれたからです。

戦ってくれたんです。

引き裂かれて、落っこちた腸とか、そいつに絡みついて、絞めたり縛ったりし始めて。

腕が足を棍棒みたいに振り回したり、足が自走してそいつの股間を蹴り上げたり、信じなくていいです。

腸も手足も、簡単に引きちぎられて、そいつの口、びっしり牙が並んでて。

でも里見さんは、千切れた肉片になっても、銃弾みたいに跳ねて、そいつにぶつかっていきました。肉片は豆鉄砲だったけど、骨片はそいつに刺さったんですよ。

肉片も。毛皮は貫けなかった肉片も。そいつの目は射抜きました。

爆発したみたいに煙が出た。

私が逃げたのはその時、猟友会の方々と合流したのは、走り出してそんなにしない頃です。


その後は、はい。先生もご存知の通りです。


猟友会の皆さん、私の方に銃口を向けてました。

人間て本当に怯えると、声も出ないし動けないし、漏らすんですよね。

でも、そうやって漏らしたのを見て、猟友会の方々は、血まみれの私が生きた人間だって判断したそうです。

それからは、皆さん機敏でしたよ。

リーダーさんの合図で、そうです、鈴木さんです。鈴木さんの合図で、ばっとこう、猟銃を空に向けて。

一番若い方が私の口をふさいで。担いで。

猟友会の方々は、私を誘拐するみたいに、一目散に山を駆け下りました。



はい、猟友会の方々は、全部で5人です。手で合図し合ってました。

ハンドサインなんだそうです。そいつ……猟友会の方々が呼ぶところの、山の神様、が出た時の。

私が生きた人間か、念入りに確認してたそうですよ。


猟友会の方々が会話を始めたのは、麓の山小屋を過ぎてからです。

でも詳しい話を聞けたのはもっと後。

病院で、私の正気が確認されてからでした。

山小屋は、山との境界の目印なんだそうです。

明治の廃仏毀釈で壊されてしまったけど、ずっと昔は鳥居があったらしいですよ。

猟友会の方々は、煙を見て駆けつけて下さったけど、実際の鳥居を見たことがある方はいないんです。明治ですから、地誌に伝えられてたり、口伝で聞いてたりしただけで。

山の神様、を見たことがあったのも、猟友会で最年長の鈴木さんだけでした。


はい、その鈴木さんです。

鈴木さんとは、今も文通をしています。

手紙には、山の神様、の事が、色々書いてありました。

私が拾った包丁の事も。

金気を嫌う、山の神様と、距離を置くためのものだったって、書いてありました。

大昔は麓の集落に刀鍛冶さんがいて、日本刀を納めていたそうです。蔵王は山ですから、日本刀作りに必要な、きれいな水が手に入るんです。でも、寒いところでもありますから。

廃刀令や江戸の平穏や飢饉で、刀鍛冶さんは暮らしていけなくなっていって。

今では地元の神主さんが、清めた金物を置いて、荒ぶる神様はこちらには来ず、どうか神様のエリアでお暮らしくださいってご祈祷する、て、手紙には書いてありました。


山って色々、口伝のルールがあるんです。

登山が趣味だとそういうの、キャンプのおともに話したりするんですよ。

呼びかけられても答えちゃいけないとか。声をあげちゃいけないエリアがあるとか。禁域があるとか。

でも下手に山に慣れちゃうと、全部迷信だと思って、笑って済ませたりもするんです。

そういう……先生も、ご興味がおありなら検索してみて下さい。


先生にはお世話になりましたから。

これだけ、お伝えしようと思いまして。

信じて下さらなくても結構ですよ。

先生なら記録をとって下さりますから。

あのですね。

里見さんは、いつも私を誘ってくれる人なんです。


昨日、SNSと留守電に、里見さんから、登山のお誘いがありました。


はい、ええ、そうですよ。

里見さんの声でした。

私、いよいよおかしくなったって感じですよね。

音声残ってますよ。聞きますか?

死者の声かも知れませんよ。聞きますか?


存じてます。

電話の音声は、本人の声とよく似たサンプルを伝送してるから、本人の声ではないんですよね。

携帯の音声も同じです。

声紋の電気的再生ですから、必ずしも本人の声ではありません、存じてます。

知っています。

声紋アプリにもかけました。データはパソコンに保存してあります。


いえ、里見さんの携帯は解約されていません。

昨日、留守電聞いてリダイヤルしたら、お母様が出ました。ひどく罵倒されましたよ。

当然ですよね。娘がひどく損壊された遺体で見つかって、容疑者の私が、容疑を認めないんですから。

でもこれではっきりした事がひとつあります。

里見さんの携帯は、今もご両親がお持ちです。事件が解決しない限り、解約はしないそうです。


お母様はもう通報されたと思います。ですが県をまたいでいますから。

娘の殺害の元容疑者が電話をかけてきた、だけでは、警察もすぐには動けないんですよ。

ですが、時間の問題です。

私の容疑は晴れていません。逮捕するには、証拠がないだけです。

私が動いたとなれば、動かざるを得ない人もその内来るんじゃないですか、弁護士とか。


そうですね。

里見さんの指紋がついた包丁も見つかりましたし、何らかのトラブルがあって里見さんが私を襲って、私が返り討ちにした、ご両親は警察が立てたその仮説を信じています。

世間もそうです。同級生も。同窓生も。登山仲間も。……家族も。

仕方ないですよね。

死体が包丁を振り回したって言って、信じるひとの方が少数派ですよ。

猟友会の方だって、擁護はしてくださいましたけど、心から私の話を信じてくださってるのは、多分鈴木さんだけです。


でもこんな、どん底みたいな容疑者生活で、信じてくれる人が少なくとも一人はいる、てどんだけ救われるか、わかりますか。


私は里見さんの誘いに応じます。


いいえ。私は通報はしません。

友達から遊びに誘われて、通報するっておかしいじゃないですか。

ちょっと死んでるから何だって言うんですか。

里見さんは死んでも私を助けてくれたんです。

バラバラになっても、骨片になっても。


先生、信じなくても構いません。


私は行きます。

里見さんが私に何か言うなら、私は聞きに行きます。

どうして今なのか。

何かあったのか。

苦しいのか、痛いのか、囚われているのか、寂しいのか。単に気分だったのか。

それとも誰かがいたずらで、里見さんの名誉を汚したのか?

行きます。警察が動く前に。


先生は動かれますか。

先生はどこまで信じて動かれますか。

山の神様ですか。妖怪ですか。魂ですか。死後って時間の存在ですか。少なくとも麓の集落の方々は、山の神様を信じていました。

信じるってこわいですよね。

私は私の生存を望んでくれた、里見さんを信じます。


いえ、いいですいいです、一から十までミリも信じて下さらなくって結構です。

お話を聞いてくださって、ありがとうございます。

先生にはお仕事かも知れませんけど、私には救いなんですよ。


行きます。

どん底みたいなところにいる時、信じてくれるひとの存在がどれだけ救いになるか、存じているからです。







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