第20話 TS女騎士、テスト勉強を思い返す

(学生時代をもう一回するのってきついよな)


 テストを控えてエレウノーラはヴィットーリア、イターリアと範囲を予想しながら勉強をしていたが、歴史学や王国語は詰まることなく楽々と行けたのだがイターリアが躓いたのが魔法学だった。

 エレウノーラも魔法学に関しては知らないことばかりだったのでヴィットーリアへ教えを請うた。


「魔法はこの世に溢れている魔力素マナを体に取り入れて魔力オドに変換し、ようやく魔法として人間が使う事が出来るのですわ」


「何故、平民は使えないと一般的に言われてるので?」


 エレウノーラの質問にヴィットーリアは視線を合わせて答えた。


「人類が集落を作り、リーダーとして選ばれたのが無意識にこういった一連の流れを行える人物であったというのが定説ですわ。魔力を用いて他の者達が出来ないことが出来たからこそ上に立つ素質として認められ時が経つに従い、特権が付与されそれが王族貴族へと変化していったと」


「なるほど、そりゃあ考えればそうなる訳ですな。力有る者は選ぶことが出来て、選ぶならば同じような力が有る者を選ぶ。そうやって掛け合わせることで安定して力を出せるようになった」


 しかし、そうなるとエレウノーラの中で疑問が沸き上がってきた。

 亡き父は傭兵団を率いていた時から魔法を使っていたと、帰農した元団員らが証言をしているので、彼は元貴族と言う事になるのだろうか?だが、誰も父はそんな風には見えなかったと言う。


「ヴィットーリア嬢、我が父は出生が不明なのだが魔法を使っていたと言う証言が有るのです。平民が魔法を使う事は基本的に無いと言われているがそうではないのは、その定説に沿えば突然変異のようなもので?」


「卵が先か、鶏が先かと言う話ですわね。御父上が実は貴族の私生児だとかでなければ、魔法を使える初代だったという事でしょう」


 そう言ってヴィットーリアは小首を傾げた、エレウノーラの発言に違和感を感じたのだがそれが何かが出てこない。


「ヴィットーリア様、それで魔法に関してですが……」


 イターリアの先を促す言葉に違和感を考える暇も無くなったヴィットーリアが続きを話し出す。


「魔法のプロセスは今話した通りですが、これを意識して行わないと出力が落ちるのです。とは言え、使える事は使えるのでわざと威力を小さくする時には意識せずに発動させますわ」


「へー、いつも適当に使ってたのにあれ全然駄目だったのか」


 強引に筋肉を強化して剣を振り回す程度であればそんな使い方でも十分なのだろう、実際に常人よりも鍛えた筋肉を更に強化されるのであればその上がり幅が3倍だろうが1.2倍だろうが普通の人間からすれば別にどうでも良い。

 当たれば死ぬのに変わりはないのだから。


「門外漢でしたので、ヴィットーリア様の御話は助かりました。カミタフィーラ卿も勉学を見て頂き有難う御座います。……それで、御礼の事なのですが」


 イターリアが報酬の話を切り出した、そう言えば勉強を教えて欲しいとだけ言われて対価の話はしていなかったなと思い返す。

 自分もこのレッスンを受けるのにヴィットーリア嬢のお願いを聞くと約束をしたので、そう言った軽い物で大丈夫だと伝えるとイターリアは少し考えた。


「それでは、我が家が持っている盾を」


「おいおい、良いのか?」


 中々に値の張る物だろうに、と聞くとイターリアはフッと自嘲気味の笑みを浮かべた。


「当家はもう武家では無くなるので」


 嫌であっても魔術師家系の男が入り婿となるならば、その盾が使われるかと言うと倉庫で埃を被っていそうだ。


「卿がそう言うのならば遠慮無く貰うぞ?田舎騎士は卑しいものでな」


「どうぞ御遠慮無く、父もカミタフィーラ卿の腕前を見れば是非にと言うでしょう」


 かくしてこの勉強会のエレウノーラの取り分は決まり、問題のテスト期間が幕を開けた。



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