第11話 TS女騎士、学園の入学式に出る
「―――今日この日を持って諸君らを学園に迎えられたことを教育者として誇りに思う次第である」
何故校長の話は世界が違っても長いのか?それを解明するにはまず宇宙の成り立ちから話さねばなるまい、少し長くなるぞなどと現実逃避している内に祝辞が終わったのをおせーよハゲと考えながらエレウノーラは目を擦った。
元々来たくも無かった学校で意欲も低い彼女の学生としての態度は御世辞にも優等生とは言い難い物である。加えてそのガタイの良さも相まって既に学友たちからは距離を取られていた。
あまり良い学生生活になるとは思えないのだが、そもそも本人がそれを望んでもいないので少なくとも彼女の中では問題だとは認識していなかった。
「続いて新入生代表、ファビアーノ王太子殿下御挨拶」
「諸君、今日のこの良き日を共に迎えられたことを神に感謝する。この学園に入学した以上は身分の高低に関係なく切磋琢磨し、王国にとって必要な人材となるための努力を欠かさず行い、もってそれを忠誠の証として欲しい」
(こういう時の身分に関する発言って後で大体覆されるよな。馬鹿正直に受け取る奴は切られるんだろ)
そもそも王族と騎士爵が関わる事等先ずもって無いので自分には関係の無い話とエレウノーラは聞き流した。
退屈な祝辞を眠ってしまわないようにするのが大変だったくらいで、別に王政に不満を持つ不穏分子が強襲してくるなんてことも無く無事に終わった。
そのまま解散となる訳もなく、各クラスに分けられた生徒たちがそれぞれのクラスへと歩いて向かう。
エレウノーラが入った教室は第1騎士養成科で、体格や体力に秀でた生徒が集められたクラスであった。
無論、女子生徒はエレウノーラただ1人のみであった。
別に女性騎士が居ないと言う訳では無く、実際第2騎士養成科では6名程の女子生徒が在籍しているが彼女らは基本的に卒業後の女性王族の近習やプライベート空間での護衛としてなので王太子や第2王子といった重要度の高い王族と比べるとどうしても格が落ちる、故に多少質が落ちてても話し相手や沐浴・排泄の際の見張りとして使えればそれでいいというレベルの存在だ。
「でっか……」
「え、あれマジで女なの?」
「すごい子」
「建設途中の城塞みたい」
以上が
「エレウノーラ・ディ・カミタフィーラ騎士爵代理だ、父がスーノ人との闘いで戦死し弟の歳も幼いので中継ぎとして爵位を代理継承した。弟が成人し、爵位継承が正式に行われたら貴族籍を抜き野に降る予定だ。決して諸君らと競合する事は無いので安心してくれ」
その言葉に、多くの男子生徒はほっとした表情を浮かべた。
見た目からして己より屈強そうな女子生徒が将来的には平民になる、と言う事はすなわち近衛騎士の職を奪い合うライバルにはならない。
もっとも、女性と言う時点で選考外になるだろうがあの逞しい肉体を見れば惜しいと思う騎士団は多いだろう。
女性騎士の需要は式典等のいわゆる【映え】や女性王族の護衛だが、近衛は男性王族や王そのものへと割り当てられる。
必然、継承者や王の覚え目出度くなれば栄達は思うがままである。ならば、その席が限られている以上は自分より有能な人間であっても蹴落とさねばならない。
自分から席に座る事は無いと宣言した時点で、エレウノーラは彼らにとって敵では無く単純な見世物へとシフトした。
「ふざけんじゃねえよ!」
バン、と机を叩き1人の男子生徒が立ち上がる。
「第1騎士養成科は近衛や即応騎士団へ入団する卒業生が多いんだぞ!?お前のような貴族の義務から抜けるなどと言う奴のせいで枠が1つ潰れた事への罪悪感もねえのか!?」
「そうは言われてもな……、俺のガタイで判断して振り分けた教師の責任だろう?俺が直接第1が良いと言った訳じゃない」
「グ、グスターヴォさん!拙いですよ、入学早々……」
隣の生徒がグスターヴォと呼んだ生徒の腕をつかむが、そんなことで止まる事は無かった。
「止めるなグレゴリオ!こんな低い志の、しかも女が第1だなんて俺は認められるか!」
「ほぉん、ならどうするんだい?坊ちゃんよ」
「表へ出ろ!その性根を叩きなおしてやるぜ、このレトント伯が2子グスターヴォ・ディ・レトントがな!」
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