第10話 悪役令嬢、DLCキャラかと訝しむ
(さっきの子、明らかにメインキャラ級よね……)
カスーナト大公家令嬢、ヴィットーリアは取り巻き達の声を遠くに感じながら思考の海に溺れていた。
カミタフィーラ騎士爵代理と名乗ったエレウノーラと言う少女(?)は、男と見まがうばかりの体躯に短髪でありながら鋭い眼光に中性的な顔つき。
彼女の前世で言う所の【ヅカ系女子】や【タチ】的な人気の出そうな美人だと感じていた。
(カミタフィーラ騎士爵代理なんて【センキミシリーズ】で見た事なんか無いんだけど!)
センキミ……、閃嵐の君達へという乙女ゲームの略称である。
前半の恋愛パートと、後半のRPG要素を含んだ戦争パートで男女共に中々の評判を誇っておりシリーズとしては彼女が生きているうちには3作まで出ていた。
ニヤニヤ動画と言う動画投稿サイトでは、キャラクターと恋愛関係になったりどれだけ早く戦争に勝てるかといった事の速度を競うRTA物が人気であった作品だ。
ヴィットーリアの前世である一人暮らしの彼氏無し=年齢のOLが高校生時代にド嵌りしたシリーズで、特に初代に深い思い入れがありそんな世界に転生したのは不幸中の幸いかと思っていたのだが……
(よりによって、悪役令嬢転生……このままだと良くても国外追放になるし……、上手い事幼少期に前世思い出して、色々と好転するように活動はしてきたけれど……)
やはり気になったのは先ほどの彼女、エレウノーラだ。
今まで聞いたことがなく、かといってあれ程のインパクトのある外見でその
(と、なると私の死後に追加されたDLCの追加キャラクター?可能性としては一番高いけれど……。もし、そうなら今後の事を考えたら戦力になるかも)
ヴィットーリアの脳裏に浮かんだのはアシリチ王国の隣国であるロリアンギタ帝国の侵攻であった。
タイリア半島北部とクランフ地方に領土を持つロリアンギタ帝国は、タイリア半島統一を掲げ、アシリチ王位をロリカング帝室第3皇子へと明け渡すことを要求し、それを拒否したアシリチ王国へと宣戦を布告、両国で激しい戦争となる……と言うのが後半のメインストーリーラインだった。
中々開発者にRPGに思い入れのある人物でも居たのだろう、この戦争パートはそこそこの難易度を誇っておりあまぁい人気声優のボイス目当ての女子を粉砕し、兄弟へとお鉢が回る、と言うのが定番でもあった。
そんな高めの難易度を金で解決するのがDLC、アイテムや高い能力のキャラクターを追加させて楽に勝つ。
正しく資本主義の素晴らしい点である、金さえあれば解決する。なお、金の無い者は切り捨てるものとする。
そうなると、この推定DLCキャラクターであるカミタフィーラ騎士爵代理は後の有効な駒足りうる。
(後で、素性調査を命じておこうかしら。何か弱みでも見つかればそれをネタにこちらに着くように言い出せるし)
ヴィットーリアの狙いはただ一つ、自分の最終学年時に起こるであろう婚約破棄イベントを乗り越え、戦争に勝利し安穏とした今の生活レベルを落とさない状況を手に入れる事。
その為には、強力な手駒が必要であり多少の無茶はしなければ生き残れないと考えていた。
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