番外・ハーレム親に恋愛を台無しにされる息子の話

開幕「花京院和人の家庭環境」

 俺、花京院かきょういん和人かずとの親はハーレム状態である。


 現代の日本で何トチ狂った事言ってるんだと思うだろうが、子供だった頃の俺は母親が沢山いる事に疑問を持つ事はあってもその状況をおかしいと思わなかった。


 むしろ優しくしてくれる大人の女性=母親って価値観が出来かかって矯正に苦労させられたが……


 まあ高校生となった今では、別に家庭内がギスギスしている訳でもないし今更子供の立場で文句言えるはずもないので仕方ないと思っている。


 で、母親が沢山いるという事はつまり兄弟姉妹も沢山いるという事で、家が常に保育園な状況だったので俺や兄弟姉妹は保育園や幼稚園に通わされる事なく子育て担当の母親に育てられてた。


 でも兄弟姉妹とばかり仲良くするのは良くないと思われたのか、よく親戚や親の友人の子供がウチに預けられて一緒に遊ぶ事も多かった。


 そんなある日。


「おじさん、およめさんたくさんいるんだって?ダメだよー、それはわるいことだっておとうさんがいってたもん」


 ウチに預けられてた親の友人の子供の一人で俺と同い年な後藤ごとう沙織さおりが、子供たちの遊び相手になりに来てた俺の父親、花京院かきょういん恭一きょういちにそんな事を言った。


 言われた父さんは苦笑いしながら、サオリに目線を合わせる。


「そうだな、悪い事だなー。でも今更一人とだけ結婚するのは出来ないんだ」


「おじさんのおよめさんたちがおこらないの?」


「怒らないんだ。皆……いい人だから」


 父さんは一瞬言葉に詰まったが、今にして思うと言葉を選んだからだろう。


 だってウチの母親は身内には優しいんだけど敵に対しては悪辣で、お世辞じゃないといい人と言えないような人が多いから。


「じゃあわたしがおこっちゃう。めっ!」


 サオリは怒った振りして父さんの額を叩いたが、父さんは笑い飛ばした。


「はは、怒られてしまったか。……でも和人たちとは仲良くしてくれよな」


「うん!」


 とまあ子供の頃にこんな一幕があり、それを切っ掛けにその場にいた俺や他の兄弟姉妹は、「他の家では母親が沢山いるのは悪い事なんだ」と知る事となった。


「ケーコ母さん。およめさんがたくさんいるのはわるいことなの?」


 俺もあの後、純粋な疑問として実母の恵子けいこ母さんにそう聞いた。


「……普通はね。でもウチは特別だから大丈夫よ」


 恵子母さんは一瞬顔を強張らせたが、すぐ笑顔に戻って答えたくれた。


「そっかー」


 文字通り「よそはよそ、うちはうち」って理屈に、当時子供だった俺は何となく納得した。


 しかし俺は知らなかった。


 ハーレム状態を是とするのは父さんではなく母親たちの方だという事を。


 そしてサオリが父親から吹き込まれた常識で父さんを責めた事が逆鱗に触れてしまった事も。


 しばらくして、急にサオリの家が崩壊する原因不明の事故が起こった。


 その事故にサオリの父親が巻き込まれて亡くなり、タイミング悪くサオリの母親は勤めていた会社からリストラされた。


 幸い、住み込みの家事手伝い兼子守りとして我が家でサオリの母親を雇い、サオリも一緒に住まわせた事でサオリたち母娘は生活に困る事は無かったが。


 俺は最後の最後になるまで、後藤家に降りかかった不幸が母親たちによる報復だと気付かなかった。


 報復があの事故だけに止まらずまだ続いていた事も。



―――――――――――――――――――

 という事で、リハビリを兼ねて仮エピローグ2にあったあの話のロング版を書いてみました


 この話だけ見るなら、毒親と胸糞のタグがつきそうな話ですのでご注意ください


 開幕抜きで全5話、毎日1話更新予定ですのでよろしくお願いします<(_ _)>

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る