仮エピローグ

エピローグ1『大学生、花京院恭一』

 大学生って……忙しい……!


 いや、学生最後のモラトリアムとして自由に遊ぶ人もいるが、俺はちょっと事情が違うからな。


 いつか花京院家の事業を引き継ぐ為に経営学部に入り、色んな資格を取るため進級に必要な分以上に講義を受けまくったのが大きい。


 例えば、いざとなった時に悠翔高校で教鞭を取れるようにする為に教員免許を取ろうとしてる。


 他にも理科、文化問わずイチゴから取った方がいいと言われた資格を取るため色んな講義を受け、その分課題なども増えて忙しい。


 ある程度は自分の所為で忙しい訳なのだが。


 これでもまだ一年生だから余裕がある方で、学年が上がる程もっと余裕が無くなるだろう。


「あっ、!今帰り?」


 家に帰るためにキャンパスの敷地を歩いていると、顔見知りの女子生徒に声を掛けられた。


「ああ、そんな所」


「今から友達とボウリングに行くんだけど、花京院くんもどう?」


「悪い。明日までの課題があるんだ。あと家族を待たせているからな」


 左手を上げて、薬指に着けてる指輪を見せつける。


 それで女子生徒は納得した顔をする。


「そっかー。じゃあしょうがないね。また誘うから、都合が良かったら来てね!」


 女子生徒は手を振りながら去って行った。


 俺も手を振り返してから、再び歩き出す。


 今のやり取りで察した人が多いだろうが、ハッキリ言うと俺は既にアリアさんと結婚して花京院家に婿入りした。


 詳しく話せば長いので簡潔に言うと、アリアさんが色々待てないと駄々をこねて仕方なく高校卒業と同時に結婚したのだ。


 詳細は、家に着いてから説明しよう。


 でも今となっては結婚した事実がちょうどいい女性避けになっているので、ほっとしてる部分もある。


 もしIF、今結婚してなかったり、結婚してもそれを隠してたら、イチゴが何をして今頃俺を取り巻く状況がどうなってたか……、考えるだけで恐ろしい。


 まあ、ハーレムは無くなってないんだけどな!


 大学を卒業したらアリアさんと法律上では離婚し、俺は花京院姓のままユカやイチゴと順番に結婚と離婚をくり返す予定だから。


 もちろんユカとイチゴも花京院姓のままになる。


 他にはケイコたちの意思も確かめたが、ケイコとアミはユカやイチゴの次でもいいから俺と結婚するつもりらしい。


 そして今は結婚後に家族内での役割を持つ為、イチゴからテストの答案を予見して貰って丸暗記するなどのサポートを受けながら大学で勉強中だ。


 ケイコは保育士、アミは産婦人科医を目指している。


 ユウリは元々俺とは最低限の筋を通した高校までの遊びと割り切ってたから、今は他の大学に進学し俺とは距離を取って彼氏を作ると意気込んでいるようだ。


 カヨは今も交流を持っているが、愛人扱いで俺に寄生する気満々だったので何とか専門学校に行かせた。


 国光先輩は弁護士を目指して法学部で勉強している傍ら、アイドル活動している宗方くんに裏で貢がせて、さらにそれを俺に貢いでいるんだから恐ろしい。


 リナは……ハーレムメンバーじゃなくて妹なんだがついでに今どうしてるのか言うと、悠翔高校の三年生になりアリアさんの後を継いで生徒会長になって頑張っている。


 色々振り返っていると家に着いた。


 いつもの高級マンションの高層フロア一つ丸ごと使っている家だが、もうシェアハウスとは呼ばない本当の我が家だ。


「ただいま」


「お帰り恭一くん」


 家に帰ると、ケイコが出迎えてくれた。


 ケイコはもう大学生なのもあって派手な緑色の染髪は止め、素のままの黒髪を伸ばしていて、着ている服はエプロンドレスで家庭的な雰囲気を纏っている。


「先に帰ってたのか?」


「うん。今日は講義が早く終わったからね」


 そう、今はケイコとも一緒に暮らしている。


 ケイコは保育士を目指しているので、ある事を手伝って貰おうとしたのだ。


「ユカとイチゴは?」


「女子会で遅れるって」


「そうか」


 女子会とは言っても、その面子はアミとかカヨなど大体が俺のハーレムメンバーだろうな。


 ユカとイチゴは男が混ざる飲み会には参加しないが、その代わりに同性の友人……?たちと遊ぶ事が増えた。


 その女子会でどんな会話が行き交っているのかは知りたくないが。


 ユカもイチゴも今では完全に花京院家に身内判定されていて、花京院家が付けたボディーガードとか運転手がいるからあまり心配する必要もないだろう。


「それよりも、アリアさんが部屋でマリンちゃんと一緒に待ってるよ?」


「ああ、すぐ行くよ」


 ケイコとキスを交わしてから上着と鞄を預けた後、俺はそのままアリアさんのいる部屋に入った。


「アリアさん。ただいま帰ったよ」


「お帰りなさい恭一さん!」


 ノックしてすぐ部屋に入ると、ワンピース姿のアリアさんが椅子から立ち上がって俺を迎える。


「マリンちゃん、パパが帰って来ましたよー」


 そしてすぐ横にあるベビーベッドに寝てる赤ちゃんに声を掛ける。


 でも赤ちゃんは寝てるまま、アリアさんの声が煩わしそうに顔を顰めた。


「あらら、おねむですね」


「そのまま寝かせてあげよう。今日も何事も無かったか?」


 ケイコやアリアさんの様子から大丈夫だとは思ったが、念のため聞いてみる。


 世間話で天気の話題を出すみたいなものだ。


「はい。昼まではユカさんがいて、ケイコさんが帰って来るまではお爺さまとお母さまもいて、ケイコさんが早く帰って来てくれたので特に問題ありませんでした」


「そうか」


 アリアさんの話を聞いた後、俺もベビーベッドのそばに寄って赤ちゃんを見つめる。


 少し紹介が遅れたが、この赤ちゃんは俺とアリアさんの娘の花京院マリンだ。


 アリアさん似の金髪が薄っすら生えていて顔も俺とアリアさんの容姿を受け継いで大変愛らしい。


 その可愛さにハートを打ち抜かれて、アリアさんの祖父の秀吉さんと母親のセイラさんも、ひ孫/孫可愛さに毎日こっちに来てマリンの育児を手伝ってくれている。


 すぐ上のフロアで暮らしていて移動の手間が少ないってのも、毎日来る理由の一つだろう。


 一方、アリアさんの父親にしてマリンの祖父になる利幸さんは、秀吉さんから事業を全部引き継いだおかげで忙しくて、マリンの顔を見る機会が少ないと嘆いているが。


 ここでネタバラシすると、高校を卒業してすぐ結婚した理由こそがマリンだ。


 決して不意の出来婚ではなく、アリアさんが一番先に俺の子を産みたい上に大学を卒業するまで待てないと駄々をこね、仕方なく高校卒業と同時に結婚して子作りしたのだ。


 ユカたちは大学を卒業するまで出産するつもりが無く、そもそも最初に結婚するのはアリアさんだと納得してたので、気が早いアリアさんに呆れながらも大人しく順番を譲った。


 そんなユカたちもマリンの事は義理の娘として普通に可愛がってくれているのが幸いだ。


 ……アリアさんが他の恋人たちに対して、先に子供を産んだ事でマウント取ってるのはともかく。


 おかげでアリアさんは自然と一浪する事になったのだが、気にしてない様子だ。


 実の所、元々アリアさんは高校三年生の時に俺と揃って成年する誕生日の時からすぐ結婚と子作りして同じ大学に進学しておいてから、臨月辺りから休学して出産するとかいう無茶過ぎるスケジュールを組んでた。


 で、本当に無茶だったから俺やイチゴ、ユカ、そして花京院家の全員で説得してやめさせた前歴がある。


 それに比べれば一浪して出産と育児をする方がまだマシだろう。


 ケイコとも一緒に暮らし始めたのも、ある意味先行実習みたいな感じでマリンの育児を手伝って貰う為だ。


 ちなみにマリンという名前は、最初アリアさんがマリアって名付けようとしたのを、「アリアと名前が似すぎて後々紛らわしくなりそう」だとイチゴが止めて、皆で考えてからマリアを一度捻ってマリンにしたのだ。


「恭一さんは今日大学で何もありませんでしたか?」


 マリンを見ながら色々振り返っていたら、今度がアリアさんの方から話題を切り出して来た。


「ああ。一日中講義漬けで、この後も課題を纏めなければならない」


「恭一さんなら課題もすぐ終わるでしょう。大学で出来た友人と遊ぶとかは無いんですか?」


 まあ、確かにその気になれば遊ぶ時間を作れなくもないが。


「嫁と子供を待たせて俺だけ遊ぶのもなー」


「そうですか。……これではもう増えるのは期待出来なさそうですね」


「増えないからな?」


 正直、今でもマリンが年上の女性は全員ママだと思っている節があったりして情緒教育が不安だってのに、これ以上増やしてたまるか。


 何が増えるのかはともかく。


 逃げるように、癒しを求めてマリンに視線を戻す。


 はあ……、子供って……可愛いな。


 諦めがついたとはいえハーレム状況なのには今でも胃が痛いが、マリンのために頑張っていい父親になりたいと思えるのだ。


「恭一さん。私、今凄く幸せです」


 そう気を持ち直していたら、アリアさんが横から抱き付いて来てそう言って一緒にマリンを見守る。


「そうか。それなら良かった」


 本当に良かった。


 この状況になるまで色々やってしまったし、今更こんなハーレム状態が嫌だからと縁を切るなんて出来ないし周りも許さないからな。


 ただ、マリンは俺たちの事をどう思うのか……。


 ………。


 この日本で父親がハーレムとか、絶対思春期になったら軽蔑されるかも。


 実際に結婚してるのは一人で他は離婚して苗字がそのままな事実婚関係でも、法律ではグレーラインの上でタップダンスしてて公序良俗からもかけ離れているもんな。


『お父さん不潔!嫌い!』とか言われるだろうなー。


 いかん。想像しただけでショック受けた。


「はあ……」


 大学を卒業したら本格的に結婚と離婚をくり返して、子供も増えるだろう。


 そうなると、想像したように俺を嫌う子が出る可能性も増える訳で。


 未来が不安だ……。




―――――――――――――――

 大学時期の話ですが、ある意味アリアEDな感じです

 ???でイチゴがあんな事言ってましたけど、仮エピローグでキャラとかイベントを増やせられないので普通にほのぼの(?)な感じになりました


 大学編ではこういう設定でアリアを半分リタイアさせるのはどうかなと考えたんですが、主人公が既婚者で子持ちだともう色々と話が終わってるんじゃないか?って考えで没にしようとしました。


 でもちょっと勿体ないので大学編を書けたら没になる前提のIFとして書いてみました

 ただ、恭一とアリアの間に娘が生まれたらその名前がマリンって事だけ確定してます


 でも今の所丁寧に大学編まで書ける見込みがないので、このままこれが正史になる可能性もあり、再開するまでサブタイにIFは付けないで置きます


 明日の更新はもっと時間を飛ばして子世代のお話です

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