第3話「球技大会本番でハイスペック無双」
球技大会本番が開始された。
今年の二年生のクラスの数はは転校生や編入生が増えて、去年より一クラス多い六クラスだ。
大会は手っ取り早くトーナメント方式で進み、推選で二クラスはシード枠になり、俺の属するAクラスはシード枠を取った(ただし、初戦では点数にハンデあり)。
という訳で、俺たちは二回だけ勝てば優勝する。
松村が属するEクラスのチームとは反対側ブロックで、当たるなら決勝か。
時間が過ぎ、Aクラスの初試合にして準決勝が始まった。
「それでは、始め!」
体育の先生が吹くホイッスルの音と同時に、バスケの試合が始まる。
俺たちAクラスと相対するCクラスの試合は、思ったより拮抗した。
その理由は……。
「男子!しっかりやれ!」
「やる気あんの!?葛葉くんの足引っ張んないでよ!」
チームメイトの男子たちがやる気を出さなかったのである。
おかげで観戦する女子たちからのブーイングが響いた。
去年もそうだったが、今年も男子共が俺を活躍させまいとわざと負けようとしているのか……。
仕方ない。
「ふん」
「あっ!」
俺はノロノロと走るチームメイトからボールを奪い、そのままコートを横断して相手側ゴールにボールを投げ入れた。
「「きゃー!葛葉くんカッコイイ!」」
女子たちから黄色い歓声が上がる。
「おい葛葉!味方からボール奪うとかどういうつもりだ!」
ただ、ボールを取られたチームメイトは文句を言って来た。
「やる気が無さそうだったから、代わりに入れたただけだ」
「はあ?!勝手に決めるなよ。俺には俺のペースがあるんだ」
確かに人によってペースや能力は違うだろうが、こいつに限っては言い訳にしか聞こえない。
「お前はバスケ部のレギュラーだろうが。部活でのプレイを見た事あるが、その時は今みたいじゃなかったぞ?」
「ぐっ……」
俺が言い返すと、チームメイトは押し黙る。
続いて俺はチームメイトを見回して言う。
「お前らも、やる気無いならいっそ何もするな。俺一人でやる」
そして試合が続く。
チームメイトは俺に当て付けるが如く本当に何もしなくなったが、それでも俺一人で相手チーム五人を抜いてゴールを入れるのは余裕だった。
やがて試合が終了し、初戦にして準決勝はAクラス……というか俺が勝った。
「葛葉くんカッコ良かったよ!」
「相手に素人も混ざってるとしても、一人だけで勝つとか天才じゃない!?」
「ありがとう。でも、毎日コツコツトレーニングしてるから、天才じゃないよ」
ワンマンプレイで勝利を収めた俺は観戦してた女子たちから持てはやされ。
「あんたたちはもっとしっかりしなさいよ!葛葉くんにだけやらせる気?」
「いや、葛葉くんの邪魔するくらいなら、何もしない方がいいんじゃない?」
「そうそう。その分葛葉くんの活躍を見れるし!」
逆にサボタージュを決めてたチームメイトたちは酷評された。
「……ちっ」
男子たちは何も言い返さず、舌打ちだけして俺を睨んで来る。
チームにしてはギスギス過ぎるが、球技大会で急に編成したチームだしこの大会でチームも解散するから構わないか。
そして決勝戦。
対戦相手は、松村のいるEクラスだった。
「葛葉!チームと不仲みたいだが、負けてもそれを言い訳にするなよ!人望も実力の内だからな!」
試合前、松村が俺に向かって言った。
「ああ、別に負けても言い訳しない」
「言ったな!後で撤回するなよ?」
松村、やたら念を押すな。そんなに勝ちたいのか?
程なくして決勝戦が始まった。
俺は前の試合と同じく一人だけでプレイしようとしたが、完全に想定外の事は起こった。
「っ!?」
「はい!」
後ろから駆け寄って来たチームメイトが、俺が持ってるボールを奪い、そのまま相手チームにパスしたのだ。
「は?」
驚き過ぎて呆然とする間、ボールを持った相手チームの男子はそのままコートを駆け抜ける。
その間、こっちのチームは誰もそれを止めず、むしろ道を開けるように避けた。
そしてシュートが放たれ、こちら側のゴールにボールが入った。
「ちょっと!何やってんのよ!」
当然、観戦していた女子からブーイングが響くが、こっちのチームメイトは素知らぬ顔をした。
流石にやり過ぎだけど、問い詰めても喧嘩にしたならないだろうし、この一回だけ俺への意趣返しにやったのかも知れない。
なので俺は追及せず、審判の先生も訝しげな顔をしながらも特に何も言わず試合を続行させた。
なのにチームメイトによる妨害は二回、三回と続き、その度ゴールを決められた。
「お前ら!真面目にやれ!」
流石に見てられなくなった審判の先生が見かねてチームメイトに怒鳴った。
「すみませーん。どうも調子が出なくてミスしました」
しかしチームメイトは適当に謝るだけ。
「ふふふ。お前の人望のここまでみたいだな?」
プレイが再開される前、松村が嫌味を言って来た。
やたら自信がありそうだが、こいつとチームメイトの奴らってもしかしたら……。
なるほど、人望も実力の内か。
いいんじゃないか?後先考えないなら。
俺が申し出れば試合を中止できそうだが、そうなると普通にウチのクラスの棄権負けになるだろうな。
「まだ試合は終わってないぞ」
なのでまだやるつもりで言い返した。
「そうか。じゃあ精々悪足掻きしな」
そしてプレイが再開される。
5:5でもなければ1:5でもなく、1:9で。
流石に審判の先生が試合を強制終了させるんじゃないかと思って様子を伺ったが、特に何も言わず渋い顔をしたまま試合を続行させた。
アリアさんが審判の先生に何か耳打ちするのが見えけど、多分こんな状況でも俺が勝つと思って続行するように言ったのだと思う。
チームメイトの奴らはいよいよと露骨に俺を妨害しに来るが、そう来ると分かっていると俺も簡単にはやられない。
俺はむしろ本気で全力を出した。
ボールさえ奪えば何処からでも、それこそゴールの逆側にあるコートの端からでも届くスーパーロングシュートを決め始めたのだ。
シュートは絶対ではなくおよそ七割の確率でゴールに入ったが、十分な成功率で、相手チームとの点差を詰めて行った。
「「葛葉くん凄い!!!」」
その度に女子たちの歓声が上がる。
ただ、俺のファンじゃない女子たちや、俺に悪感情をあまり持たない男子たちはこの滅茶苦茶な試合展開に眉をしかめた。
流石にみっともないもんな、俺への嫌がらせで露骨に相手チームに協力するとか。
そのまま1:9の無法な試合が続き、一部反則に走る者も出て来たが、何とか、俺が、勝った。
「くっそおお!!何なんだよあいつは!こんなのズル過ぎる!ここまでやったのに負けるとかあり得ないだろ!」
松村が喚き散らかす。
ただ……。
「君たち。ちょっと色々話を聞かせて貰おうか」
「えっ?」
先生たちが待っていたとばかりに松村のチームやこっちのチームメイトを取り囲んで連行して行った。
一応俺が勝ったからギリギリ丸く収まったものの、あれはやり過ぎたからな。
松村が俺のチームメイトの奴らと組んだという確証が取れたら、ただでは済まないだろう。
まあ、終わった事だしあいつらの事はもういいとして。
「恭一!私たちも優勝したわよ!」
クールダウンしていると、ユカたちが駆け寄って来た。
「ああ、おめでとう」
「ありがとう!恭一も、チラッと見てたけど、カッコ良かったよ?」
ユカが俺に抱き付いて、頬にキスをする。
「おー!ユカっちやるな!」
「ずるい!私たちも!」
それを見た他のバレーボールチームの女子が、皆して俺に詰め寄って代わる代わる俺に頬にキスした。
「恭一、お返しは?」
「あっ、私たちも!」
「……分かった。順番にな」
その後は俺から女子たちの頬にキスをねだられ、仕方なく女子たち頬にキスし返す。
この上無く乱れた現場だったが、優勝の喜びに浮かれてのパフォーマンスとして何とかやり過ごせた。
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【補足】
悠翔高校での不純異性交遊の基準は、性交渉はバレたらアウトですが、ちゃんとTPOを弁えるなら男女交際やキス(マウストゥーマウス)まではセーフと、かなり大らかです
何故なら学園のお姫様が誰かさんとこっそり交際中ですので……
【お知らせ】
五章とIFエンドにして仮エピローグ、書ききりました。
五章は全12話分でおよそ40,000字、仮エピローグは1話につきおよそ3,000字で2話分になりました
合わせてサブタイトルも付け始めました
推敲はまだですので更新ペースは少し考えさせていただきますが、取りあえず連休中(月曜まで)は毎日1話更新する予定です
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