番外1『Note of Love』
私は
世界に一人だけの天才的頭脳を持つ中学二年生。
丸眼鏡に三つ編みと地味な見た目だけど、彼氏だっているリア充だから。
その彼氏はきょーくん事
私の幼馴染で、イケメンかつ勉強もスポーツも学校トップクラスのハイスペックな男子。
まあ、初めて見た時からポテンシャルを見抜いて、私の頭脳を惜しみなく使って育てたからだけどね!
小学校一年の時に出会って仲良くなり、小学校六年の時に告白されて今日で交際三年目の記念日。
一緒に下校してたきょーくんとは家の方向が別れる所で一回解散して後できょーくんの家で合流する約束をして、今日はどんな事して遊ぼうかと楽しみにしながら家路についていた。
そして家の前に着くと、玄関前にピンク色表紙のノートが落ちてた。
「何これ、
表紙を読み上げたから、取りあえず手に持ったまま部屋に入る。
取りあえず、この後きょーくんの家で遊ぶ予定もあったので、拾ったノートは適当に放置して着替えてからきょーくんの家に向かった。
後々、そのノートが私ときょーくんの未来を大きく変えるとも知らずに。
んで、きょーくんの家で一緒にゲームして遊んだり、きょーくんのとこのお義父さんやお義母さんと一緒に記念ケーキを含めた夕ご飯を食べたりして交際記念日を楽しんだ後、翌日が週末な事もあってそのまま一泊してからおウチに帰って来た。
そして部屋着に着替えてから週明けの登校の準備をしようとして、拾ったノートの事を思い出した。
誰かの落とし物なら交番に届けるだけだけど、誰がこの脳味噌までもピンク色みたいなノートを作ったのか中身が気になって読んでみよう。
「ええっと、このノートに名前が書かれた人同士をくっつけさせる事が出来る。記述次第ではデートのみか、片思いや恋愛感情のない関係も可能?」
表紙に反して、内容は日本語で書かれてた。
そういえば昔、こういう魔法みたいな力のあるノートが出る漫画が流行ってたらしいねー。
で、こういう恋愛脳みたいなノート作るとか、カップリング好きな中二の女子かな?
もしそうだったら今の私と同い年だねー。
それにしては、本格的に誰かと誰かとくっつけるような書き込みが一切無いんだよね。
ふむ。せっかくだから、私が何か書いてみようか。
「きょーくんと田中さんをー、田中さんから私の事をネタに脅してデートするって事にしよっか」
ちょっとあり得ない組み合わせとシチュエーションを書き込んでみた。
「お遊びはここまで!」
こんな恥ずかしいノート、交番に届けた所で持ち主が恥掻くだけだから、適当な時期に私が処分してあげよう。
で、次の週。
ちょーっとだけ、あのノートに悪戯書きしたのが気になって、きょーくんと田中さんの様子をこっそり監視した。
するとなんと、本当に田中さんが私をネタにきょーくんを脅してデートに誘った。
その後きょーくんが私に土下座して滅茶苦茶謝ったけど、私は快く許した。
多分だけど、私が原因だから。
それに……きょーくんが私を裏切るって可能性を感じた事で凄く興奮した。
「ふぅ……はぁ……」
きょーくんは真面目だから、私への気持ち以外でも今まで世話とかして貰ったのに義理を感じて、私を裏切るのは絶対あり得ないと思ったのに。
このノートなら、それもあり得る!
見事性癖が歪んだ私は浮気を許す代わりに、きょーくんに他の色んな女子とデートして欲しいとお願いし、その裏でラブノ……じゃなくてノートオブラブに色んな記述を加えながら実験を重ねた。
「このノート……本物かも」
実験の結果、このノートの力は本物だと判断した。
ただ、人の行動を操れるのは恋愛絡み限定で、それ以外も可能な限り恋愛絡みに寄せられる。
例えば、お金を上納させる事は好きな相手への貢ぎになるし、喧嘩させる事も痴話げんかになる。
必ず助かるという前提で、片方をピンチに陥れて他の片方に助け出させる事も出来る。
逆にどうしても恋愛絡みになれない記述は無視されてしまう。
うーん、どこまでも恋愛脳だなー、このノート。
でもこのノートを使えば……きょーくんのハーレムを作れるのでは?
いや、きょーくんは元々ハイスペックで何でも出来るから、私が色々お膳立てすればこんなノート無くてもハーレムくらい作れるけど。
でもこのノートを使えば、間違いなく楽が出来る。
可愛い子もお金持ちな子も有名な子も全部、きょーくんの虜に出来るのだ。
そうする事できょーくんが世界で一番魅力的な男の子だって証明出来るし、そんなきょーくんに一番思われる私もまた一番いい女の子という事になる。
色々悩んだ末、私は……便利さというノートの魔力に抗えなかった。
積極的にノートを使うと決めた私は一定の潜伏期間を持ち、私立悠翔高校に進学してから本格的に動き出した。
ノートに名前をシチュエーションを書き込むだけであら不思議。
理事長の孫娘なお姫様も、他の幼馴染が好きだった巨乳の子も、デビューしたてのアイドルの子も、生真面目で爛れた事が嫌いな風紀委員の子も、ぜんーぶきょーくんの虜になった。
「くけけけけ……」
おっと、ついヒロインに相応しくない笑い声が出てしまった。
さーて。次はどの子をどんなシチュエーションできょーくんとくっつけようかな~。
一人、自分の部屋で色々期待しながら、ペンを取ると。
「……まさかそんな使い方をする人間がいるとは思わなかったぞ」
知らない声が聞こえた。
声が聞こえた方である上に顔を向けると、キトンって言うのかな?布一枚で全身を纏う服を着た、男とも女とも分別付かない美人が浮いていた。
「どちら様ですか?」
「私の名はエウロス。愛の天使エウロスだ」
「はあ」
愛の天使(笑)?
……あっ、愛って……。
「もしかしてこのノート……」
「察したか。その通り、そのノートは私が落とした物だ」
「それじゃあ、お返ししましょうか?」
こんなノート無くても、ちょっと不便になるだけだから惜しくないもんね。
「いい。元よりお前に使わせる為に落とした物だからな」
「え?どうして?」
「幼いながらも一途に一人の相手に尽くした君へのご褒美にして試験だ」
「ご褒美は……これに私ときょーくんの名前を書いて関係を確定させられる事として、試験って何ですか?」
「ご褒美はその言葉通りだ。試験とは、例えば自分が複数の相手に囲まれるなど邪な使い方をしてしまわないか監視する事だ」
「はあ……。ちなみに、そんな使い方したらどうなります?」
「どうもしない。失望はするが、ノートを使わせたからこそというのも理解出来るからな。ノートを使って築いた関係はそのままにして、ノートだけこっそり回収するだけだ」
「そうですか。……じゃあ、私の試験の結果ってどっちなんですか?」
そう質問すると、天使さんの顔が歪んだ。
「難しい所だ。多くは自分が複数の相手に囲まれるのだが、自分の相手に複数の相手を宛がうのは前例が無い。……だからこそ、其方の意中を知るために例外として姿を表した。……何故、この様な使い方をした?本当はあの葛葉恭一の事がどうでもいいのか?」
「ちっちっち。浅いですね」
私はどこぞのアニメっぽく、人差し指を振りながら舌打ちをした。
「ふむ?」
「好きだからこそ、全部は無理でもそれに近いくらい色んな一面を知りたいと思うんでしょ?」
「しかし、両想いだと思った相手が浮気する事に何も思わないのか?」
「浮気されたからと嫌いになるなら、結局その程度の気持ちだったという事でしょ?」
「浮気したというのも、結局その程度の気持ちだったのではないのか?」
「違いますよ?人として複数の相手を同時に好きになる事くらい普通じゃないですか。天使さんも知ってるのでは?」
「……確かに試験で落ちる者が頻繫に出るくらい普通の事ではあるが」
「それに私は、きょーくんが何人好きになるとしても、私を一番好きでいてくれると信じてますから。他の子とも遊ぶ事くらい、今まで私の言う事聞いて自分磨きしてくれたご褒美ですよ」
「………」
天使さんは、私の説明を聞いてもまだ理解出来なさそうにしている。
別に理解して貰わなくても結構だけどね。
この考え方も気持ちも、私だけのオンリーワンだから。
「それにしては、そのノートに自分と葛葉恭一の名前を書かないのは何故だ?」
「はい?そんなの決まってるでしょ。ノートで作られた偽物の気持ちと関係なんて、私は要らないからですよ」
「……そうか」
私の答えを聞いて、天使さんは嬉しそうに頷いた。
「そのノートはもうしばらく好きに使うといい。私は、その行く末を見守るとしよう」
「あ、ちょっと」
引き止める間もなく、天使さんは勝手に消えて行った。
はあーそれにしても、このノートが天使さんが私宛てに落とした物だったのはねー。
なんか白けちゃうなー。
「……よし」
このノート、燃やしちゃうか。
あんまり楽をし過ぎるとすぐ飽きるし、ノートに頼ってばかりだと本当はきょーくんに魅力が無いって言ってる様な物だから。
という訳で天使さん、悪く思わないでくださいね?
―――――――――――――――
ふとデ〇ノートの動画を見かけて深夜テンションで思い付いたまま書いた、一部パロディ要素を含むパラレルなお話でした
……一応本編とは違うパラレルという設定ですが、でもいざ書いてみると、実は本編でもやったんじゃない?って感じありますね……
明日の小話は作者的に一回通るべき道だと思っている、恭一がイチゴと駆け落ちしようと試したら?のIFです
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