番外2『IF・今更ハーレムから逃げようとしたら』

 注意!登場キャラたちが暴力、残酷さで過激な行動を取りますので、苦手な方は飛ばしてください



―――――――――――――――


 イチゴの気持ちを疑い、ユカに気持ちが揺れた俺は、悩んで悩んだ末に結論を出した。


 やはりハーレムが悪い。


 こんな関係、さっさと終わらせないと。


 そう決めた俺は、早速イチゴの部屋に向かってイチゴと相談した。


「へ?ハーレムをやめて駆け落ち?」


 駆け落ちって……元から俺はイチゴとだけ付き合っていたんだけどな……。


「ああ、もう限界なんだ。イチゴ、俺と二人でこの家を出よう。俺はイチゴだけ居れば充分だ」


「……分かった。そこまで言うなら仕方ないねー。でも色々準備しないとだから、ちょっと待ってくれない?」


 正直イチゴに断られて粘られると思ったのに、こんなにあっさりと頷いてくれた?


 でもいいか。俺にとってはいい事だから。


「ありがとう!」


「うん。じゃあ明後日の夕方に、こっそり玄関で待ち合わせようね」


「ああ!」


 明後日まで……後二日だけ待てば、解放される!


 本当に待ち遠しい!


 そしてやって来た二日後の夕方。


 俺はキャリーバックに必要な荷物を詰め込んで、こっそり玄関に出た。


 途中、アリアさんたちに見つかったらどう言い訳するか悩んだけど、幸い皆は自分の部屋に籠っているのか鉢合わせする事は無かった。


「イチゴ?まだなのか?」


 玄関に着いたけどイチゴの姿は見当たらなくて、少し待ってみると……


 パチッ!


 と強烈な音と共に後頭部に衝撃を受け、俺は意識を失った。




 再び目を覚ました時、俺は自分の部屋のベッドの上で手足を縛られていた。


(ああ、これは失敗したのか)


 俺はすぐ状況を理解した。


 恐らくアリアさんとかに駆け落ちがバレて、イチゴを待っている間に後ろからスタンガンとかを食らって気絶したのだろう。


 せめてイチゴが無事ならいいが……。


 身動きが取れないまま色々考えていると、部屋のドアが開いてアリアさんとリナが入って来た。


「あら、恭一さん。目が覚めたのですか?」


 アリアさんは目が据わった笑顔で俺を見下ろして言った。


「アリアさん。君とリナが俺を気絶させて縛ったのか?」


「ええ。正確には、皆さんでですが」


 皆って……ここに姿は見えないが、ユカも協力したのか?


「それで、俺をどうするつもりなんだ?」


「そうですね。平たく言えば、私たちを捨てようとした事へのお仕置き……でしょうか」


 やはりそうなるか。


 もう半年以上同居しながら色々とやっておいて逃げ出すとか、報復されても仕方ない。


「分かった。俺の事は好きにしてくれ。でもイチゴにだけは手を出さないで欲しい」


「この期に及んで他の女の心配ですか?しかも私たちにお願い出来る立場だとお思いで?」


 イチゴだけは助けたいと思って言った言葉だったが、逆にアリアさんの不興を買ってしまったようだ。


「リナさん」


「あっ、はい」


 アリアさんに声を掛けられ、リナが手に持ったタブレットPCの画面を点けて俺に見せた。


 タブレットPCの画面には、俺と似たように手足を縛られた上に口に布を噛ませられたイチゴの姿が見えた。


「イチゴ!」


 俺は反射的に飛び上がって画面に近付いたが、手足が縛られていて動けない。


「もちろん、恭一さんだけじゃなく、イチゴさんにもお仕置きするつもりです」


 アリアさんの言葉に合わせて、タブレットPCの画面にユカが現れた。


 真顔のまま、普通よりも大きな千枚通しを逆手に持って。


「例えば……、ユカさんがあの千枚通しでイチゴさんのお腹……それこそ子宮あたりを滅多刺しにして子供を産めない体にしましょうか?」


 アリアさんは例え話という感じで言うが、俺は実際にやり兼ねないと感じ背筋が凍る思いをした。


「やめてくれ!頼む!」


「そうですね……。何でもすると言ってくれるのでしたら、イチゴさんには手を出しませんが、どうしますか?」


「それは……」


 即答出来ない。


 もしそれでイチゴと別れろと言われたら、何でもすると言った約束を守れる自身がない。


 でも俺の沈黙に、アリアさんの目付きがさらに冷たくなった。


「……そうですか。ではユカさん」


『ええ』


 アリアさんが指示し、画面の向こうでユカがイチゴに向けて千枚通しを振り上げた。


『ん!んー!!』


 それに恐怖したのか、イチゴが言葉にならない悲鳴を上げる。


「やめろ!やめてくれユカ!」


 俺は画面の向こうのユカに向けて懇願するが。


『……恭一、あんたが悪いんだからね。あんたが私を捨てようとしなかったら、私だって……』


 ユカは画面の方を見ないまま、イチゴを睨み付ける。


 千枚通しを持った手は震えていて、今にでも振り下ろされそうだった。


「わ、分かった!何でもする!何でもするから!イチゴには手を出さないでくれ!」


 俺は必死に叫ぶと、アリアさんの口端が吊り上がった。


「分かりました。ユカさん」


 そしてアリアさんの指示にユカも千枚通しをイチゴに振り下ろさないでゆっくり下げた。


「恭一さん。今ハッキリ言いましたね?何でもすると。勿論録音もとってますので言い訳させませんが」


「……ああ」


 取り返しの付かない事を言った気がするが、ひと先ずイチゴの危機をやり過ごした事に、俺は安堵した。


「安心してください。別にイチゴさんを捨てろとか、イチゴさんを傷付けろなんて踏み絵はさせませんので。ただ、イチゴさんよりも私たちともっと仲良くして、色々言う事を聞きやすいようになっていただくだけです」


 アリアさんは穏やかな口調で言うが、その内容が決して穏やかな物ではないと、理解出来てしまった。


 そしてこの日から、俺の絶望が始まった。





【Side.イチゴ】


 きょーくんから駆け落ちを提案された時は、割と焦った。


 いや、結局は私一人を選んでくれて気持ちは嬉しいんだけどね?


 でも私はまだまだきょーくんのハーレムで色々楽しみたい。


 一回ハーレムを崩すと、もう二度ときょーくんのハーレムを作るチャンスは来ないだろうから。


 それにこのハーレムから抜け出すのは、もう私たちと花京院家がずぶずぶになってて色々手遅れな事もある。


 きょーくんやアリアちゃんたちは知らない事だけど、今私は利幸お義父さんたちが新しく始めた事業を裏でこっそりコンサルティングしていて、色々実績も出ているから、花京院家がきょーくんだけじゃなくて私も手放すはずがない。


 そしてきょーくんは花京院家にとって、アリアちゃんと私の間で共有されて私たちを繋ぎ止める人柱……こほん、黒柱なのだ。


 アリアちゃんはもう他に嫁に出せないくらい変わってしまって選択肢がきょーくんしか無くなったから、きょーくんを逃がさないだろう。


 だから私はきょーくんに駆け落ちを相談された事をすぐ、アリアちゃんたちに密告した。


 そして一芝居打って人質役になった訳。


「やー。ここでユカちゃんが本気になったらどうしようかってハラハラしたよー」


 きょーくんが降伏宣言をした後、私はユカちゃんに拘束を解いて貰いながらしみじみと言った。


 ちなみにタブレットPCの画面が消して貰ったから、芝居だったとバレる危険は無い。


「別に、今からでも滅多刺しにしてもいいけど?」


「冗談。そんな事したら本気できょーくんに恨まれちゃうよ?」


「……ちっ」


 間もなく私の拘束は完全に解かれたので、伸びをする。


「解放感ー!ありがとね、ユカちゃん。でもユカちゃんもこの話に乗って来るとは思わなかったなー」


「……捨てられたり、蚊帳の外にされるよりはマシだと思っただけよ」


「そんなにきょーくんの事が好きなんだー?」


「ふん」


 揶揄うように言うと、ユカちゃんはぶっきらぼうに顔を逸らした。


 素直じゃないねー。


 まあ、これから色々と一緒に楽しもうね!




 それからの事。


 私たちは一緒にきょーくんを監禁したまま調教した。


 ただ、学校をすっぽかせ過ぎるときょーくんの学歴が中卒で止まってしまう。


 だからアリアちゃんの権力を使って悠翔高校の中にきょーくんを監禁する部屋を作り、保健室登校ならぬ監禁部屋登校として出席扱いにし、テストも監禁部屋で受けさせた。


「……くっ、もういい、いっそ殺せ……」


「あら、よろしいので?恭一さんがいなくなると、イチゴさんがどうなっても知りませんよ?」


「……くぅぅ」


 時々きょーくんの心が折れそうになった時は、私がまた人質になってきょーくんを奮起させた。


 私たちが三年になる頃にはきょーくんの調教も一区切りついたので、監禁部屋から解放した。


「きょーくん、大丈夫?」


「……ああ、大丈夫だ。俺はみんなの彼氏だからな」


 解放されたきょーくんは目が虚ろだったけど、今まで以上に私たちにとって都合の……じゃなくて理想の彼氏になった。


 もちろん、きょーくんのハーレム作りも継続している。


「イチゴさん。この前私に噛み付いて来た人がいるんですが、どう見ても恭一さん目当ての嫉妬みたいなのです」


「よし。じゃあお望み通りにきょーくんと仲良くさせてあげよ!」


「……ああ、俺はみんなの彼氏だからな」


 アリアちゃんたちに噛み付いたり、きょーくんに色目を使う女が出たら、まずそのままきょーくんの魅力の虜にした。


 その後にアリアちゃんたちと会議して、その女を正式にハーレムに入れるから、それともトモリちゃんや国光先輩みたいに二軍三軍のままキープするかを決めたけど。


「最近、また恭一に噛み付く奴が出たわね」


「よし。そいつ、お姉さんがいるみたいだから、きょーくんと仲良くさせよ!」


「……ああ、俺はみんなの彼氏だからな」


 逆にきょーくんに噛み付いたり、アリアちゃんたちに色目を使う男が出たら、その男の周りの女をきょーくんに寝取らせた。


 そういう女がいなければ、きょーくんのハーレムから余った女を、きょーくんを餌にしてターゲットの男に近付けさせてからきょーくんに寝取られたように見せかけてメンタルブレイクした。


「……俺は……俺は……みんなの彼氏……?」


 私たちの前では同じ台詞しか言ってないけど、人前ではまともですよ?


 ともかく調教済み状態のきょーくんは、以前よりも従順に私たちの要望を取り込んで積極的に色んな女と仲良くしつつも、絶対に私たちを蔑ろにしない。


 まさしく皆にとって都合……じゃなくて理想の彼氏!


 くふふ、くけけ、私たちのきょーくんのハーレム無双はまだまだ始まったばかりだ!




―――――――――――――――

 まあ、つまり、今更逃げられないし逃げようとしたら、恭一にとってもっと残酷な未来が待っているという事ですね

 駆け落ち相手にイチゴを選んだのは、次の章がユカの話なのでユカにしたら話が被りそうなのと、元々のメインヒロインがイチゴなのでこうなりました

 アリアを選ぶならそもそも駆け落ちにならなくて、それ以外のヒロインを選んでも密告が無いだけで似た状況になると思いますが


 まだ出番のないキャラも結構いるんですがこれにて間章四は終了し、次からは第一部最終章となる五章になります


 では最後までよろしくお願いいたします<(_ _)>

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