第19話『マダムと呼ばれるユカ』
【Side.ユカ】
私、
容姿端整、頭脳明晰、スポーツに芸術も万能で今は人気配信者をしているハイスペックのイケメン彼氏が。
彼の名前は
私たちが通っている私立悠翔高校では、陰で学園のお姫様と呼ばれる
それだけじゃなくて、実は恭一とアリアが陰で付き合っているのではないかという噂もあるわ。
……まあ、事実だけど。
つまり恭一は女子側の承認の上で複数の相手と交際している。
「えっと、ユカ。次はいつデート出来るの?」
今、カフェで話しているこの子は恭一の友達にして私が恭一との関係を仲介してる女子の一人の
遊んでいるという恭一の噂に合わせたつもりか、髪の毛を緑色に染めて派手になり過ぎない程度にメイクしたり着崩している。
聞けば中学の頃の私と同じように恭一にイジメから助けて貰って、それで悠翔に追い掛けて来たらしい。
にしては一年の二学期の学園祭までに友達止まりだったヘタレだけど。
だから私が玉砕するようにそそのかして、振られて傷心してる隙に付け込んで恭一とエッチ出来るように仲介しているわ。
つまり今のケイコは私に頭が上がらない状況という事。
「次は……三日後が空いてるわね」
「三日後ね。分かった。次はどんなデートにしようかなぁ。そしてその後は……えへへ」
ケイコは赤くなった顔を隠すように両手を頬に当てた。
大方、デートの締めに恭一とエッチする事でも想像してたんでしょうね。
同年代の女子のこういう所を見ると、今の年齢代が男女問わずヤりたい盛りって話も頷けてしまうわ。
「それよりも、宗方の事は本当にいいの?恭一ほど……とは言わないけど、アレも結構いい男なのに」
後から知った事だけど、今年転校して来た現役モデルの
しかもケイコに気があるらしくて、最近露骨にアプローチしている。
それで気になって尋ねたら、ケイコはすぐ不機嫌な顔になる。
「むぅ。ユカもそういう事いうの?今更私が恭一くんとデートするのに嫉妬したの?」
「そういう訳じゃないけど」
本当に違うから。
私は恭一が他の女子をデートやエッチする事に割り切っているの。
イチゴやアリアと付き合っているのを知っていながら恭一と付き合うと決めた視点でね。
もしも、何かの間違いがあって私が真っ先に恭一と付き合っていて、恭一が他の女子とも付き合いたいとか言ったらブチギレてたでしょうけど。
「あんた、今恭一とどういう関係なのか自覚あるの?付き合ってはいない友達だけどエッチもするとか、文字通りのセフレよ」
「だったら何?私は恭一くんの事が好きだから、どんな形でも仲良く出来ればいいの。……告白しても、振られちゃったしね」
これは重症ね。
自分が好きっていう相手よりも、自分を振った相手に執着するとか。
私ではあまり想像……出来なくもないけど。
まあ、アリアたちが私を軽く切り捨てられないような人脈作りを目指す私としても、引き込んだ女子がほいほいと乗り換えられたら困るから、好都合ではある。
「そう。でも気が変わったら遠慮なく乗り換えていいからね。……二股とかは止めて欲しいけど」
恭一は女子にモテて、世間体とかを気にするから寄って来る女子を突き放したりはしない。
寄って来る女子をとっかえひっかえして食ったりもしないけど。
逆に恭一が手を出されたりするくらいだけど。
まあ、とにかく。
そんなんだから、恭一目当てに集まった女子にはルールがある。
その一つが、恭一相手に二股しない事。
二股するくらいならそのまま乗り換えろって感じね。
恭一は三股以上やってるのに不公平だと言われるかもだけど、恭一だって好きでハーレムやってるんじゃないから。
恭一のハーレムについて知らない女子からしたら、普通に不義理は許さないからだけれど。
「分かってる。二股はしないから」
ケイコは自信満々に頷いてるけど、恭一からしたら出来れば乗り換えて欲しいとか思ってるでしょね……。
私が仲介している女子はケイコだけじゃない。
ついこの前、転校してた友達の
恭一はアミとも深い関係になるのを嫌がったが、この前島川に色々されてた時に協力した事が聞いて突き放せずにそうなってしまった訳。
私としてもアミは私がイジメられてた時、恭一が自分の友達グループに私を入れてた時に一番親身になってくれてたから、恭一と仲良くするのを手伝いたい気持ちはある。
恭一の一番は譲らないし、私が一番になったらいづれアミにも降りて貰うけど。
『ユカさん。恭一のスケジュールって次はいつが空いてるの?』
だからアミから来たレインに対して。
『三日後が空いてるわよ』
悪戯心を込めてそう返信した。
『分かった!じゃあ、二日後にまた連絡するから。楽しみにしてるね!』
ええ。楽しめればいいわね。
……三人で。
「あら、ユカさん。恭一さんと愛人さんたちのスケジュール管理ですか?」
リビングでスマホアプリを使って恭一のスケジュールを記入していると、後ろからアリアに声を掛けられた。
恭一のハーレムを容認している上に、自分以外の女子は堂々と愛人呼びするとか、ある意味尊敬しちゃうわね。
「……ええ。三日後、ケイコにアミと三人でデートするわ」
「そうですか。まあ、明日にブッキングさせてないのならいいんです。ええ、明日は私と恭一さんが二人きりでデートする日ですから」
アリアがドヤ顔で明日の予定を自慢する。
「明日はですね。会員制の公園で特注したお弁当を食べて、それからオーケストラの鑑賞会に行った後ドライブしながら感想会をして、夕食は海辺にある会員制のオープンテラスのレストランで食べるのです。どうですか?」
「あんた……恭一が彼氏で良かったわね」
「ええ。そうでしょう!私と恭一さんは他にいないベストカップルですから!ユカさんも弁えてますね!」
アリアは私の言葉に気を良くしたのか声を弾ませた。
……さりげなくこっちを下に見てる口振りだったけど。
それに、私はそういう意味で言った訳じゃないのにね。
オーケストラ鑑賞とか、絵の展示会の鑑賞、社交ダンス、はたまた色んな楽器を使っての合奏など。
一々上品な趣味に付き合いながら、恋愛映画とかのシーンを再現するリクエストにも答えたりと、そこまでアリアの相手が出来る男子高校生は恭一くらいでしょ。
アリアみたいな上流階級出身で探せばいるかもだけど、私が知っている限りではね。
「では、これからも愛人たちの取りまとめは任せますので、よろしくお願いしますね、マダム」
「マダムって呼ぶなっつってんでしょ」
マダムというのは、最近私がケイコやアミだけじゃなくて、ユウリやカヨなど、恋人枠に入らない他の女子たちのスケジュール調整もするようになり、恭一のハーレムメンバーから呼ばれ始めたアダ名よ。
アリアからもケイコたちからも一目置かれ始めて、私が目指そうとした立ち位置を確立しているという証ではあるけど……。
マダムって、おばさんみたいじゃない!
「所でユカさん」
「何よ、また何か用?」
「小腹が空きました。何かいい感じに太らずお腹が膨れる物ってありますか?」
アリアって、私の事を使用人か何かと勘違いしている節があるわね……。
「ったく、ちょっと待ってなさい」
でも仕方ないので要望は受け入れる。
これはあくまでもアリアの中で私の存在価値を固めて、おいそれと追い出せないようにする為。
そもそもここでの家賃はもちろん生活費もほぼ全部アリア(の家族)持ちだから、あまり頭が上がらないというのもあるけど。
べ、別に、アリアたちに情が移って絆されたとか、そういう訳じゃないんだからね!
って、これじゃユウリが言ってたツンデレみたいじゃない!
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