第15話【With恭一シミュレーション!④】

【Side.アリア】


 朝食を食べた後。


 私はすぐ部屋に戻ってゲームを再開します。


 悠翔高校の入学式の後、イチゴさんに逆恨みせず彼女を放置する所からです。


 ゲームでの私と恭一さんは当然の如く同じクラスになり、学校公認のカップルとして周囲に知られます。


『恭一、今日もデート出来ないの?』


『ごめん。勉強で忙しくてな』


 でも恭一さんの後継者教育が段々厳しくなり、放課後に私と過ごす時間が中々取れなくなって行き、私はそれに寂しい思いをします。


 これはイチゴさんをイジメるルートでは知らなかった展開ですね。


 多分ですが、そのルートではイチゴさんをイジメるのに気を取られていて恭一さんとの時間が減ってた事に気付かなかったとかでしょう。


 ある日は昼休みの時ですら恭一さんに他の予定が入り、私は一人寂しく屋上でお弁当を食べる事になりました。


『恭一って、私の事好きじゃないのかな……』


 ゲームの私がそんな独り言を呟きます。


 半分くらい他人事として俯瞰している現実の私からすれば、恭一さんは私と一緒になる将来のために努力されているのですから、十分過ぎるくらい想われていると見えるのですが。


 実際に寂しい思いをしているゲームの私は心情的にその辺を理解出来ないのでしょう。


 その時、一人でいるゲームの私に一人の男性が近寄って来ます。


 あれは……長岡生ゴミ


『花京院さん?一人でどうかしたの?元気無さそうだけど、話聞こうか?』


 はっ。


 分かりやすいナンパですね。


 生ゴミは現実でも私に色目を使って来ましたから、再現度が高いとも言えるでしょう。


『いえ、私は大丈夫ですので、お構いなく』


 ゲームの私も生ゴミの目的がナンパだと理解して、適当にあしらいました。


『あっ、花京院さん。今日も一人?ちょっとお話とかしない?』


 しかしそれからも生ゴミは度々私が一人でいる時に現れてちょっかいを掛けて来ます。


 いい加減煩わしいですが、そこでゲームの私はある事を思い付きます。


 私が生ゴミと仲良い振りをして恭一さんに見せつけると、嫉妬や危機感を抱いた恭一さんが私に構ってくれるのではないか……という。


【少しくらいは恭一を焦らせてもいいはず】

【いや、恭一を試すような真似は出来ない】


 そしてその思い付きを実行するかどうかの選択肢が出ましたが。


「これは罠ですね」


 昔見た夢を思い出します。


 気を引きたいと言ってそんな真似をしたら、恭一さんはむしろ身を引くのでしょう。


 私は迷わず下の選択肢を選びました。


『助けて恭一!変な男に付きまとわれてるの!』


『なに?……分かった。すぐ先生たちにも相談しよう』


 それからも生ゴミは私に纏わり続け、我慢出来なくなった私は恭一さんや教職員に生ゴミをストーカーとして訴えました。


『葛葉!これもお前の仕業か!』


 するとその後、生ゴミは私と一緒にいる恭一さんに詰め寄りました。


『何の事だ?』


『俺が花京院さんのストーカー扱いされた事だ!お前が姑息に手を回したんだろ!』


『お前がアリアにちょっかいを出してたのは事実だろうが』


『それはお前が花京院さんを一人にさせるからだろ。要らないなら俺に譲れよ。花京院さんとは俺が付き合うから……!』


 生ゴミは不躾な言動と共に恭一さんの隣にいる私に手を伸ばしますが。


『アリアに触るな』


 その手を恭一さんが掴んで止めました。


『アリアは俺の婚約者だ。勝手に触るな』


『恭一……!』


 きゃーー!!


 恭一さん、カッコイイです!


 しかも私を庇って言うとか、惚れ直します!


 ……ゲームですけど。


『葛葉、てめぇ……』


 険悪な空気のまま取っ組み合いになりそうな時。


『お前ら!何している!』


 先生が現れて喧嘩になりそうな空気は流れました。


 恐らく、遠巻きに見ていた生徒の誰かが先生を呼んだのでしょう。


 そして事情聞き取りの後、生ゴミは厳重注意を受けてなお改善が見られなかったという事で悠翔高校から退学されました。


 そういえば、生ゴミの関係者だったユカさんやリナさんは出ませんでしたね。


 このゲームではイチゴさんが意図的に排除したのでしょうか。


『ごめん、アリア。長岡の事はともかく、確かに君に寂しい思いをさせてしまった。これからはもっと時間を作れるように頑張るよ』


『恭一……。大丈夫だよ。私の為に頑張ってくれてるのはもう分かっているから。でもありがとう!』


 生ゴミの事で色々ありましたが、雨降って地固まるように私と恭一さんの絆はより頑固になりました。


 それからも現実と似てるようで違う学校生活が過ぎて行きます。


 はい。恭一さんが女子たちに人気な所とか、現実の通りなのです。


 鈴木さんとか伊藤さんとか小林とか当然います。


 恭一さんとしては、私の婚約者として私に恥を掻かせないように誰を相手にしても真面目に接しますが。


『むうぅぅ!恭一ってば他の子に鼻の下を伸ばして!』


 比較的未熟なゲームの私は嫉妬しました。


 ええ、ゲームの私は現実の私みたいに性癖が歪んだりしていない真っ当な女の子ですので。


【恭一は私のモノだから、他の女は排除する!】

【恭一が私から目移りするはずないから、一々目くじら立てない】


 予想通り、選択肢が出ましたね。


 イチゴさんの前例もありますし、ここは下でしょうか。


 その後も度々似た選択肢が出ましたが、全部放置する方向の選択肢を選びました。


 すると途中で、急に卒業式の日に時間が飛びました。


 あれ?この流れって……バッドエンド……?


 不安になる私の気持ちを当てるように、私の前に恭一さんが他の女子……島川トモリさんを連れて現れました。


『恭一?何で島川さんと一緒にいるの……?』


『ほら、きょー様。言ってやってください』


 不安がる私に対して、島川さんは意地悪そうな笑みを浮かべて恭一さんに言います。


『くっ……』


 恭一さんは歯を食いしばりなから、私から目を逸らして話し出します。


『アリア……本当にごめん。君とは結婚出来ない……』


『え?どうして?もしかして……島川さんと関係あるの?』


『そうですよ?だって私のお腹に……きょー様の赤ちゃんがいますもの』


『え……?』


 はい……?


『分かりやすく言うと、きょー様は今まで私と浮気してたんです』


『っ!あれは……!』


『あれは?浮気ですよね?』


『くっ……』


 島川さんの言い分に恭一さんが反発しようとしましたが、すぐ黙殺されました。


 これはただの浮気ではなさそうですね。


『花京院先輩も、浮気する男に興味ありませんよね?じゃあ、きょー様は私が貰って行きますので』


 島川さんが一方的に言い渡して、そのまま恭一さんを連れて去って行きます。


 ゲームの私は恭一さんの裏切りを受け止められないまま、呆然とそれを見送りました。


 その後画面が暗転しバッドエンドの……字が浮かぶと思いきや、視点が変わります。


 目の前には恭一さんと取り巻きの女子たちの姿が映りますが、私の目線が高いです。


 これは……第三者目線で恭一さんにあった事の振り返り……?

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