第14話【With恭一シミュレーション!③】

【Side.アリア】


 恭一さんの手料理の朝食を済ませた後、私は女子同士での話し合いと言ってユカさんとリナさんを私の部屋に呼びました。


 話題は例のゲームについてで、恭一さんには聞かせられませんから。


「あのゲーム。私の方は私と恭一さんが幼稚園で出会って幼馴染になる内容でしたが、お二人はどんな内容でしたか?」


「私も似たような物ね。修二の代わりに恭一と幼馴染になった内容だったわ」


「えっと……、あたしは家計の事情で現実よりも早く兄さんの義理の妹になる内容でした」


 私の問いに、ユカさんとリナさんがそれぞれ答えてくれました。


「なるほど。私たち三人とも違う感じでそれぞれに合わせた内容になっているのですね」


「みたいね」


 前にアルバムを見た時より前に準備していたとしても、あの完成度のゲームを三人分とか。


 ますますイチゴさんの凄さが伺えますね。


 その後は解散して、集中力が切れた私はベッドに倒れてドロのように眠りました。


「アリア先輩?そろそろ夕ご飯ですよ?」


「……う~ん。はい~」


 リナさんに起こされて再び目を覚ました時には、もう日が暮れる時間になっていました。


 そして当番のユカさんが作ってくれた夕食を食べた後、私はすぐゲームを再開します。


 そろそろ中学校を卒業して悠翔高校に進学する所ですね。


 私は現実と同じく入学試験で首席を取りました。


 恭一さんは……頑張りましたが、三位です。


 では二位は誰なのかですが、そもそも二位はいなくて、ゲームで現れたイチゴさんが私と共同首席でした。


 そして現実の時と同じく、相談の後イチゴさんが身を引いて私が入学式で新入生代表挨拶をする事になりました。


『くぐぐ……。あの人さえいなかったら、私と恭一がワンツーを決められたのに……!』


 そこで、ゲームの私はイチゴさんに逆恨みします。


 ええ……、つまりこのシナリオを組んだイチゴさんは私の性格をそう解釈したという事ですか……?


 ……まあ、確かにゲームみたいに思うかも知れませんが。


 そこで選択肢が現れました。


【この報復として依藤さんをじわじわとイジメる】

【この先特に関わり合う事も無いでしょうから放置】


 ………。


 色々思う所はありますが、ここはセーブデータを作ってから上の選択肢を選んでみましょうか。


 ゲームとはいえど……いいえ、ゲームだからこそ、恭一さんを一人占めしたままイチゴさんを私の下に敷くのは面白そうですから。


 それで選んだ選択肢の通り、ゲームの私は長期に渡ってイチゴさんをじわじわイジメます。


 現実の私はイチゴさんをイジメるゲームの自分をほんの少し俯瞰する気持ちで追いますが、ゲームに出るイジメの内容って……。


 具体的な言及は控えますが。


 ゲームの私がここまでするのか以前に、ここまで陰険な方法を思い付いて、もしくは知っていて、その被害をゲームの自分に遭わせるとか。


 あの人、実は他人をイジメたり、逆に自分がイジメられた経験でもあったのでしょうか。


 イチゴさんの闇が見えた気がします。


 そこから時間が高速に流れ、悠翔高校を卒業しました。


『やっと卒業したね恭一』


『……ああ』


 ゲームの私と恭一さんは高校の正門から続く道を歩きながら高校生活を振り返ります。


 ゲームでの情報では、ゲームの私と恭一さんは大学に入る前に正式に籍を入れる約束です。


 でも気のせいでしょうか。


 少々不穏な流れですね。


 なぜ大学生活と共に青春の本番の一つのある高校パートが高速で流れたのか、とか。


 それに、ゲームの恭一さんが悠翔高校を卒業して私と結婚する事をあまり楽しみにしていなさそうな様子……とか。


『役所にはいつ行こうか?後、結婚式場の予約とか……』


『アリア。その前に話がある』


 これから恭一さんと結婚する事に浮かれたゲームの私に、恭一さんが水を差すように止めます。


『どんな話?』


『花京院アリア……君との婚約は、破棄させて貰う』


『……え?』


 ……はい?


『……どうして?』


『それは……君が変わってしまったからだ。俺は君と一緒にはなれない』


『私が変わったって、どういう事?私は恭一が好きなままだよ!』


『そっちじゃない。……アリア、何度もイチ……依藤さんをイジメてただろ?』


『えっ……』


 ここでゲームの私は自分がイチゴさんにして来た事を恭一さんにバレたと初めて知ります。


『最初は入学試験の時の腹いせで、俺が止めても逆に油を注ぐだけになると思い、その内落ち着いてくれると信じて待っていたんだ。でも君は依藤さんをイジメるのを止めなかった。それどころかどんどん酷くなって行って……』


 恭一さんはまるで自分の事のように悲痛な表情をします。


『君を止めなかった俺にも責任がある。でも、俺は君に傷付けられた人がいると知っていて、変わってしまった君と一緒になれる自身がない。これは俺の都合だから、慰謝料とかは働いてでも返すよ。じゃあ』


 恭一さんは呆然とするゲームの私を置いて去って行きました。


 そして恭一さんの姿が視界の端に差し掛かる所で、イチゴさんと合流して恋人みたいに腕を組んで歩き出します。


 後から知った事ですが、恭一さんは私の尻拭いのつもりでイジメられるイチゴさんを陰で慰めていて、その途中で私よりもイチゴさんに気持ちが頷いたらしいです。


 それから私と恭一さんの両親を交えた話し合いで、私の家族は私の方に非があると認めました。


 それで恭一さんに慰謝料を請求するのではなく、むしろ恭一さんに今まで通り教育と支援をして、大学を卒業する頃には新しく興す会社を任せる事にしました。


 もう血縁とか関係なく恭一さんを後継者にするつもりなのかもです。


 一方、私は本来進学するはずだった恭一さんと同じ大学への入学をキャンセルされ、留学という体で外国に追い払われました。


 そのまま時間が過ぎて恭一さんは大学を卒業してイチゴさんと結婚し、花京院家の新しい会社の社長になって幸せに暮らす傍ら。


 私は一生独り身で生きて行く事に……。


 そして画面が暗転します。


『やっぱりこのエンディングを踏んじゃったかー。アリアちゃん、私をイジメて楽しかった?』


 今回もイチゴさんの声と共に【BAD END・婚約破棄された悪役令嬢】という文字が浮かび上がりました。


 前回も思いましたが、バッドエンドの題名が悪趣味じゃありませんか?


 私が悪役令嬢とか、じゃあイチゴさんがヒロインで恭一さんがイチゴさんのヒーローなのですか?


 ……まあ、このルートでは間違いなくそうでしたが。


 ゲームでしたからあの選択肢を選んだだけで、現実でしたら私は友人をイジメたりしませんからね!


『はいはい。私もそう信じてるよー』


 くっ。またも人の考えを読んで!


 まあ、気を取り直してあの選択肢からやり直しましょう。


 今回もセーブして置きましたからね。


 今度こそ恭一さんとのハッピーエンドを目指して!


「あの……アリア先輩?もう朝ご飯の時間ですけど……」


 と意気込んだ時、リナさんに声を掛けられました。


「あっ」


 また徹夜を!お肌が!!!


 ―――――――――――――――

 色々面白おかしく書いてたら量が初期想定の倍以上に……!?


 ですのでゲームの話は⑤まで続きます

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