第2話『春休みのシェアハウスでの日常・下』

 家に帰った後は一度手伝った流れで夕食の準備も手伝い、皆揃って夕食を食べる事になった。


「あら、今日の夕食はとてもおいしいですね。流石恭一さんとリナさんです。日に日に腕を上げてますね」


 アリアさんは夕食の出来についで絶賛している。


 だけど、知っている。


 それは俺とリナが夕食を作ったと知っているから言うお世辞だと。


 逆にユカが食事当番の時はケチつけるからな。


 俺としては、俺やリナよりもユカの料理の方が美味いと思うのだが、嫁姑いびりの亜種かも知れない。


「特にこのサラダのドレッシングがいい味してますね」


 そのサラダのドレッシング、ユカの作り置きなんだが……もしかしてわざとやってないよな?


 アリアさん以外、皆それを知っているから微妙な顔をするが、誰も指摘しない。


「ふーん。良かったわね」


 ユカは自分が作ったと名乗り出ないものの、声がやや低い。


 それを知ったアリアさんが手の平を返したりしたら、食卓の空気がもっと悪くなるからな。


 まあ、アリアさんも無茶なケチをつけたり、ネチネチ言ったりはしないが。




 夕食を終わらせた後は、イチゴの部屋でイチゴと二人きりになった。


 同居して最初の頃は常にアリアさんが俺にくっついていたが、流石に時間が過ぎると自分だけの時間が欲しかったり、他のメンバーにも気を使ったりして落ち着いた。


 それでイチゴやユカとも二人きりになる当番制が暗黙の内に出来たのだ。


 二人きりになった俺とイチゴはお互いくっついたり、体のあちこちを触ったり、キスしたりとイチャイチャした。


 これだけならば普通のカップルの交わりだが、問題が一つ。


 それは俺とイチゴがイチャつく傍らに、今日の朝、俺とアリアさんが致してた動画が再生されていたのだ。


 俺が彼女とイチャついてる横で他の女の子と重なってる所を見られるとか、凄く気まずい。


「……なあイチゴ。あれ、消さないか?」


「嫌だよ」


 ダメ元でお願いして見たが、素っ気なく断られた。


「今日の朝にきょーくんがアリアちゃんとセックスしてたのに、今は私と一緒にいてアリアちゃんの時よりもイチャついてるとか、凄くプライドが満たされて楽しいの」


「……そうか」


 イチゴの言い分には色々思う所はあった。


 だが訳アリとは言え、俺がやってるのは紛れも無く浮気と三股。


 イチゴは本来傷付くはずなのに、むしろ楽しんで許してくれるのだから俺は何も言えない。


「そう言えば、昨日は栄養ドリンクをありがとな。おかげでよく眠れたよ」


 俺はふと思い出した事でお礼を言った。


 昨日の夕方もイチゴと一緒にいて、その際にイチゴが手作りした栄養ドリンクを貰って飲んだのだ。


 昔からそういう風にイチゴに体調を管理して貰うのは良くあったからな。


「そう?じゃあ今日も飲む?」


 イチゴは引き出しから水筒を持ち出して俺に差し出した。


「ああ、ありがとな」


 俺は素直に水筒を受け取って、中身の栄養ドリンクを飲む。


 それからもうしばらくイチャついてると眠気が襲って来て、そのまま瞼を閉じてイチゴの膝の上に頭を埋めた。


 ここ……俺の部屋じゃなくてイチゴの部屋だけど……まあいいか。


「おやすみ、きょーくん」


 意識が薄れ行く中で、最後にイチゴの声が聞こえた。


 そして翌日。


「おはよ恭一。今日は私の番だからね」


 俺は寝てる間に自分の部屋に運び込まれたみたいで、今日は朝からユカに襲われた。


 で、前日のように二度寝して昼頃に起きてしまう事に。


「恭一さん。今朝は楽しかったですか?」


 リビングに出ると、今日はアリアさんに睨まれてしまった。


「……ノーコメントで頼む」


 同居しているとは言え、爛れ過ぎている。


 何とかならないのかな、この生活……。




【Side.リナ】


 あたし、なが……じゃない。葛葉リナは今日、初体験をする。


 引っ掛けじゃないよ?


 本当に性経験の初体験だから。


 相手は何と、憧れの人で義理の兄でもある葛葉恭一兄さん!


 …………まあ、合意無しなんだけれど。


「ねえ、リナちゃん。きょーくんにエッチな事してみない?」


 春休みが始まってすぐ、イチゴ姉さんからある提案を受けた。


「へ?兄さんじゃなくて兄さんですか?」


「そう。寝てるきょーくん相手にするんだからね」


「へ?寝てる兄さんにですか?どうして?」


「実はね……」


 姉さんは理由を説明し始めた。


 兄さんってアリアさんとする時じゃ、その、下のアレが大きくならないみたいで、さらにあたし相手でも大きくならない。


 これは姉さんに言われて、兄妹の交流と称して兄さんの膝の上に乗って色々スキンシップをしてみて確かめた事。


 あれはショックだったけど、多分兄さんはあたしを妹としてしか見ないからそうなんじゃないかと、姉さんに言われた。


 それで兄さんとアリアさんの円満な関係のために色んな実験をしていて、私への提案もその一つだと。


「でも、大丈夫なんですか?兄さんって姉さんだけじゃなくてその……、アリアさんとか、ユカちゃんとも……」


「大丈夫。二人も許可してくれたから。後で聞いてみてもいいよ?」


 それで二人に確認すると、


「リナさんが恭一さんとですか?ええ、話は聞いてますので大丈夫ですよ」


「恭一と?まあ、あれね。別にいいわよ」


 本当に許可してくれた。


 これであたしは兄さんの恋人三人の公認で兄さんとエッチ出来る!


 ……当の兄さんの許可は無いし、そもそもそんな事するとも知らないみたいだけど。


 でもこういう義妹としての役得(?)くらい、少しはいいよね?


 なんてたって、姉さんたちも許可してるんだから。


 そして深夜。


「リナちゃん、入って来て」


 あたしは姉さんに手引きされるまま兄さんの部屋に入った。


「ほら、見て」


 兄さんはぐっすり寝てたけど、姉さんが布団をめくるとパジャマの下の方が盛り上がってた。


「えっと……」


「こういう時は、いただきますって言うのよ」


「あっ、はい。いただきます……」


 そのままあたしは姉さんに手伝って貰いながら初経験を済ませた。


 話に聞いてた通り凄く痛かったけど、兄さんと繋がってるって思うとそういうのも全部消し飛んで、思い出に残る体験になった。


 おかげで昼まで寝坊してしまったけど……、バレてない……よね?


 また出来るといいな……。


 兄さんはあたしを牽制して恋人候補から外そうとしてるけど、あたしだってもう兄さんとエッチしたんだから、恋人にもなれるって思っていいよね?


「あの……姉さん。実験って今回だけですか?」


「うん?朝にアリアちゃんがきょーくんと実験した後になるけど、いい子にしていればその後にまたさせてあげるよ」


「はい!」


「頑張ればリナちゃんもきょーくんと付き合えるようになるかもね」


 実験の事だけじゃなくて、姉さんはあたしが望んでいるご褒美を的確に突いて来た。


 複数で付き合うとかちょっと聞かないけど、イケメンな兄さんだからそれくらいはおかしくないはず。


 よーし。頑張ってあたしも兄さんの恋人になるぞ!


―――――――――――――――

※この物語は、法律・法令・道徳に反する行為を容認・推奨するものではありません


 それとちょっと解説すると、リナ視点は上編の前日の夜の話になります

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