間章三・春休み&二年目一学期の小話
第1話『春休みのシェアハウスでの日常・上』
三学期の行事は学期が終わる頃の期末テストくらいで、割とすぐ終わった。
知り合いの成績順位は、イチゴが一位、アリアさんが二位、ユカが十位で俺は十一位となった。
「そんな……イチゴさんに負けてしまうなんて……」
その結果にアリアさんがショックを受けてたが。
アリアさん、実はイチゴを見下してないか?
最初はそういう人じゃないと思ってたけどなー。
ただ、イチゴなら一学期からずっと一位を取り続けるのも出来たはずなのに、何故今になって本気出したんだろう。
「なあイチゴ。一学期の時は手加減してたのに、どうして本気出したんだ?」
「うん?最初は目立ちたくなかったからだけど、今はもう生徒会にも入ってしまったし、なーんかそれでちょっかい掛けてくるのがいたから、取りあえず成績で黙らせようと思って」
気になってイチゴに聞いてみたらそう返された。
少しどうかと思う理由だが、イチゴがイジメられる事になるよりはいいだろう。
そして春休みが始まった後のある日。
自然に目が覚めて、スマホの時計を確認すると朝どころかもう昼になっていた。
「うう~ん。おはよ~ございます、恭一さん」
俺に釣られたのか、隣で寝ていたアリアさんも目を覚ました。
肌がほぼ透けて見えるネグリジェ姿で、まだ寝ぼけている様子だが。
「いや、もうこんにちはの時間だ」
「そうですか~。あ~そう言えば~、朝はお楽しみでしたね~。……ポッ」
顔を赤らめたアリアさんは、布団を持ち上げておもむろに布団の中……俺の下半身を覗いた。
「流石に二度は大きくなりませんか」
「……流石にな」
何故昼になって起こったのか説明すると、どこからかアリアさんが朝立ちの知識を得て、そのタイミングなら他の女子を交えずとも俺と性交渉出来るんじゃないかと思われ、朝に襲われた……のだ。
そしてその疲れで揃って二度寝して、今目が覚めた所である。
三学期になって一回落ち着いた性交渉も、休みになったからかアリアさんはまた燃え上ってしまった様だ。
更に言うと、そのおかげで部屋中が……臭い。
汗やら何やら色んな体液を出して乾いた臭いが、如実に事後だったと感じさせてくれる。
「換気して布団やシーツを洗濯しないとな……」
「そうですね……」
俺の呟きに、アリアさんが苦笑して同意した。
そしてアリアさんに無言で強請られるまま寝起きのキスを交わして、二人揃ってベッドを抜け出した。
……不謹慎だけど、これがアリアさんじゃなくてイチゴだったらもっと良かったのにな……。
部屋に仕掛けられた監視カメラを睨みながらそう思った。
「今朝はお楽しみだったわね」
時間が掛かるアリアさんより先に支度を済ませてリビングに出ると、先にいたユカにジト目で睨まれながらそう言われてしまった。
「……こんにちは」
「ええこんにちは。もう昼過ぎよ。まあ、皆寝坊なんだけれど」
「そうなのか?」
春休みだから皆それぞれ夜更かしでもしたのか?
「そうよ。今から昼ご飯の用意をするから、待ってなさい」
「そうするよ」
そしてユカが厨房の方に入って行く際、ぼそっと言い残す。
「それと……明日は私の番だからね」
「……そうか」
朝のあれって当番回りかー。
抜け道とは言え、俺とアリアさんがサシで出来る様になったから、アリアさんは他の二人もすぐ排除するのかと思ってたが、色々今更だからか変な所で歩調を合わせているみたいだ。
そして後から来たアリアさんと出前で食事を取り、俺は一人でシェアハウスの一室に入った。
この部屋は室内フィットネスグッズを揃えた部屋で、そのまんまフィットネスルームと呼んでいる所だ。
「あら、恭一も運動するの?」
部屋にはユカが先にいて、壁掛けのテレビを使ってフィットネスゲームをしていた。
「そんな所だ」
「朝からあんなに運動したのに?」
「下ネタは勘弁してくれ。あとあれは使う筋肉が限られてるからな」
「ふーん」
ユカは生返事を返し、クールダウンするのかタオルで汗を拭いてペットボトル入りのスポーツドリンクを飲んだ。
無意識の内に、そんなユカをぼーっと眺める。
今になって気になったが、今ユカは運動するためにスポーツウェアを着ていて、体のラインが出るものだったのでつい彼女の大きい胸に視線が釣られてしまう。
何度見ても大きい……。具体的な数値の言及は控えるが、イチゴやアリアさんの倍はあるように見える。
「うん?なに恭一。今私の胸見てんの?」
俺の視線に気付いたユカが、胸を隠す所か逆にこっちを向いて胸を張った。
「あー、すまん。つい」
すぐ目線をユカの目に合わせて謝る。
「別にいいわよ。減るもんじゃないし、最初見向きもされなかった事を思うと、逆に嬉しいからね。それに……する時は見るだけじゃ済まないものね」
「だから下ネタは勘弁してくれと」
「グループでとはいえ、もう同居までしてるのに今更でしょ。それに外でこんな事言わない事くらいには弁えているわよ」
「……そうか」
まあ、それならいい……のか?
「それよりも、恭一は始めないの?」
「ああ、そうだな」
ユカに促されて、俺も手近なフィットネスグッズで運動を始めた。
何が面白いのか終始ユカに運動する所を見られたのか気になったが、さっき俺がユカを見た事を思うとお互い様なので突っ込む事は出来なかった。
夕方になる前に、俺はリナと一緒に夕食の食材を買いに出掛けた。
夕食の当番はリナだが、俺が昼食の当番をサボってしまったのでその埋め合わせの一部として荷物持ちに同伴したのだ。
買い物に出掛けた先は、シェアハウスにしている高級マンションのすぐ隣に建ってる大型スーパーマーケットだ。
高級マンション住みはこういう所もリッチだと思い知らされる。いや、他のマンションはどうなのか知らないが。
「兄さん。その……重くないですか?」
「いや、大丈夫だ」
買い物帰り。
リナが両手に荷物を持ってる俺の様子を伺うも、俺は平然と答えた。
「すみません、普段よりも多めに買って」
「いいさ。せっかく男手として付いて来たんだからな」
食材の他、ついでに買った各種日用品が入った買い物袋は確かにそれなりに重いが、普段から鍛えてるので苦にはならなかった。
途中、すれ違う主婦たちが俺たちを見て、新婚みたいなカップルだと噂するのが聞こえて来た。
リナにもそれが聞こえたのか、顔を赤くして俯いた。
「すみません兄さん……」
「何がだ?」
「その、恋人は他にいるのに、あたしとカップルだと誤解されて……」
「それなら気にするな。男女二人きりで歩くのを見てそういう誤解するのは当然だから」
「これって、もしかしてあたしにもチャンスが……?」
おっと、リナの口から赤信号なセリフが。
あまり考え込ませるとまずいな。ちょっと牽制するか。
「何か言ったか?」
「い、いえ!何でもないです!」
リナは誤魔化すように手を振って、俺の先を歩て行った。
流石に義妹にまで手を出す訳にはいかない。
不本意とはいえ、今でも三股してるというのにリナにまで手をだしたら、俺はもっと言い訳出来ないクズになるからな。
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下編に続きます
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