第14話『自分は何も出来てない件』
お巡りさんコールまでの恭一視点です
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【Side.恭一】
島川に脅迫されたあの日以来、俺は何度も島川に呼び出された。
「きょー様!今日はお買い物に行きましょ!そしてお互いに相手の下着を選んで……うふふ」
ッスゥーーーーー。
呼び出された用事は大体がデートだが、際どい内容が多かった。
「あっ、大丈夫ですよ?お金は私が払いますから」
島川は俺の不満気な顔を見て媚びるように言うが、そういう不満じゃねぇ。
「きょー様!次はあそこに行きましょ!」
デートもほぼ終盤の夜方になると、島川は俺をある場所へ連れ込もうとした。
「ってラブホじゃねえか!なんて所に誘うんだ!」
「ダメですか?」
これ見よがしにスマホを見せる島川。
「また脅すのか?」
「いいえ?合意ですよ?これはデートの延長ですからね?私、初めてが無理やりなんで嫌ですからね」
脅しておいてどの口で言う……なんて挑発めいた反発が出来るはずもなく。
「……後悔するぞ」
「あはっ、する訳ないじゃないですか」
俺は不本意ながらも島川と性交渉にまで及ぶ事になってしまった。
いや、俺の意思を無視し慣れた手つきで千枚通しを使い俺を傷付けて無理やり起たせて始まるあの行為はもはや凌辱と言っていいくらいだ。
こんな時に比べて悪いが、これならアリアさんの方がまだずっと可愛げがある。
アリアさんとの関係は一応彼女のイチゴの許可付きで、アリアさんは俺を傷付けてでも無理に起たせようとはしないからな……。
「きょー様。風呂やシャワーはダメですよ?そのまま帰ってくださいね?」
用事を終わらせて帰る際、島川は自分の体臭を俺に付けて帰らせて、アリアさんとかが気付くかどうかを面白がって味をしめたようだ。
「お帰り、恭一。風呂とご飯、どっちにする?」
「それとも……私にしますか?」
「風呂で」
シェアハウスに帰るとユカとアリアさんが出迎えてくれるが、俺は真っ先に風呂を選んだ。
「そう?最近いつも風呂からね」
「……まあな」
そろそろ帰った後は真っ先に風呂に入る事が定番となりそうだ。
「それじゃ恭一さん。一緒に入りますか?」
「いや、一人で入らせてくれ」
アリアさんの誘いを断り、俺はさっさと風呂に入った。前に彼女たちと一緒に風呂に入った事があるにはあるが、臭いを落とすのが先だからな……。
ついでに島川にされた事を色々思い出して吐いた。
風呂を上がった後、今後の島川への対策をイチゴに相談しようとしたが。
「きょーくん。写真を何とかする方法を考えるから、もう少しだけ耐えててね」
俺が相談するよりも前に、イチゴにそう言われた。
恐らく盗聴アプリで事情を知ったのだろう。俺も知らせる為にあえてスマホの電源を付けっぱなししてたからな。
「……頼む」
事は単純に島川を警察に突き出せばいい訳ではない。
俺の写真はともかく、島川が悪足搔きでリナの写真をバラ撒くのは避けねばならない。
島川があの写真をもうクラウドに上げたのなら、スマホを奪っただけでは対策にならない。
でも俺は直接島川に振り回されてる所為で、頭が冷静に回らない。
ここはイチゴに任せて、俺はそれまでに頑張って耐えよう。
アリアさんには前に用事の内容について聞かれたりもしたが、そのまま伝えるとアリアさんが一人で先走るのが怖かったので、イチゴに聞いて欲しいと遠回しにお願いした。
それからも島川の行為は段々エスカレートして行って、あの花村リンゴまで参加する事になった。
しかも花村リンゴは不意打ちで俺にキスしてから、その写真をイチゴに送りつけやがった!
「ごめーん。手が滑って写真をイチゴに送っちゃったよ。これでイチゴとは終わりだね。ご愁傷様。花京院さんにまで送られたくなかったら、これから気を付けてね?」
花村リンゴは勝ち誇ったみたいに言うが、逆だバカ野郎!
イチゴにそんな物送り付けたら、むしろ興奮してもっと見たいとか思って俺の救出が遅れるだろうが!
「イチゴとは終わりだし、花京院さんとも別れて私とだけ付き合おうよ。トモリんの持ってる写真とかは私がなんとかするからさ。幼馴染で人気アイドルの美少女、あの二人のいい所取りみたいなものよ?」
花村リンゴに連れ回されるデートの途中。
そんなふざけた事まで言われた。
「断る。見た目や肩書だけで付き合ってる訳じゃない」
「じゃあなんでよ」
「てめぇには関係ない」
俺だって好きで二股、三股してる訳じゃないんだぞ!
しかも脅迫での関係とは言え、島川トモリと花村リンゴまで入れたら五股!
……考えたら眩暈がして来た。
いや、逆にこれで浮気したケジメだと言ってアリアさんやユカと別れられるか?
とにかくイチゴ、頼むから早くなんとかしてくれ……!
島川たちに弄ばれる日々を送るある日。
今日も島川の家に呼び出されて、島川のイチャイチャと称した色んな要求を聞いた後、ベッドの上に連れ込まれた。
色々諦めている俺はせめて避妊だけでも徹底しようとしたが。
「思ったんですけど、キスもエッチも他の女に先を越されましたが、一番先に子供を産めば私の勝ちですよね?」
島川の奴がとんでもない事を言い出した。
「バカな事言うな!俺たちはまだ学生なんだぞ!」
「そうですね。だから他の女たちも考えられないから、私が出し抜けるのです」
なんだその『人に出来ない事が出来る自分カッコイイ』なんて中学生みたいな理論は。
保健体育が何のためにあるのか知らないのか?
こういう事でやらかさない様に教えてるんだぞ。
って言おうとしたのに、体に……力が入らない……!?
「うふふ。薬が効いて来ましたね」
なっ、また薬を?
さっき飲んだお茶に盛ったのか?
最初の時といい、一体どこからそんな薬を仕入れてるんだ……!
「よいっしょっと」
島川は床に崩れ落ちた俺をベッドに運び、そのまま俺の上に乗ってお互いの服を脱がし始める。
だ、誰か!助けてくれ!
そう心の中で叫んだら、祈りが通じたのか部屋のドアが開く。
「アカリちゃん!助けに来たよ!」
そして長岡が現れた。
ってお前かい!
それと助ける相手を間違えてるぞ!
「うわああああああ!!!!!」
長岡はこの場面を見て順当な誤解をしたのか、俺に殴りかかって来る。
そうだよな。普通は俺が島川を寝取ってるように見えるよな。
俺は薬の所為で抵抗出来ず殴られて、それを島川が止めた。
「ちょっと!何するんですか、このお邪魔虫!」
「なっ、アカリちゃん?どうして……?」
「どうしても何も、あなたがきょー様を殴るからでしょうが!」
「何でそいつを庇うんだ!そいつがお前を脅したんだろ!」
そのまま島川と長岡が言い争いを始める。
……俺を放置したまま。
さてはお前ら、実は仲いいな……なんて下らないジョークを思ったりした。
「警察だ!全員大人しくしろ!」
身動き取れないままいると、警察まで来た。
……助かったのか?
まさかここで俺が強制わいせつ犯として捕まったりしないよな?
こういう状況では大抵男性の立場が弱いからワンチャンあり得るが。
「恭一くん!大丈夫!?」
警察の後ろから、何故か吉田さんが現れて俺の心配をしてくれた。
そういえば吉田さんは裏でイチゴと繋がってたな。警察に通報したのが吉田さんなら、助かったと思って良さそうだ。
安心したら今までの心労が押し寄せて来て、俺の意識は闇に落ちた。
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三章の恭一視点はこれで終わりです。主人……公?何かしましたっけ?
次は吉田さん視点になります。そろそろ裏主人公のイチゴも動きます
【追記】
カクヨムコンの中間選考を通過しました
これも読者の皆さまの応援のおかげです。ありがとうございます!<(_ _)>
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