第3話『踊る道化②・真のハーレム?』
【Side.長岡修二】
スマホの画面の中に義妹のリナの顔が映った。
『長岡修二さん。これから私は葛葉リナです。もうあなたの妹じゃありません。私の始めても全部(寝ていた)恭一兄さんに捧げました。
ええっと……私はもう身も心も葛葉家の女です。二度と私に絡んだり、私を妹と呼ばないでください』
………。
次に、幼馴染のユカの顔が映る。
『修二、これ、覚えてる?子供の頃にあんたと書いた婚姻届よ。これは……こうするの』
ユカは婚姻届を引きちぎってから、シュレッターに入れた
『これであんたとの約束は無効よ。私はもう恭一の女なの。彼はあんたなんかよりもずっといい男よ。
かっこよくて、優しくて、お金も持ってて、ベッドのテクも上手くて、あそこもあんたより大きいの。童貞のあんたとは比べ物にもならないわ。
じゃあ、これから私は恭一とイイコトするからね。……まさか私のしてる所をみてシコれるとか思ってないでしょう?
残念だけど、私の体を見ていいのは恭一だけだから、あんたは一生童貞のまま妄想だけでシコっていなさい』
………。
続いて、彼女だったマイの顔が目の前に浮かぶ。
『修二くん、私は葛葉さんと付き合う事にしたの。あなたは所詮練習用のキープ君だったし、最初から練習だと言ってたから悪く思わないでね。
まあ、大した練習にもならなかったけど、あんたと付き合ったからこの人が私を奪ってくれたの。そこだけはお礼を言ってあげてもいいよ』
………。
………。
「うわああああ!!!」
発作的な叫びと共に、目を覚ました。
回りを見ると、いつもの俺の部屋だった。
「またこの夢か……」
悔しくて、ベッドのマットレスに拳を振り下ろした。
あれはただの夢じゃなくて、春休みの間実際にレインで送られて来た動画の内容だった。
動画そのものはカッとなってもう消したけど、心の傷に残ってしまったのかあれから何度も夢でリプレイされる。
……いや、マイのセリフだけは実際に聞いた事ではなくて夢で作られたイメージだが、あいつも俺を裏切ったのは違いないからな。
心を落ち着かせる為、スマホにイヤホンを繋いで、音楽アプリでアカリちゃんの歌をつけた。
耳の奥で響くアカリちゃんの歌声に癒される……。
やはりアカリちゃんは俺の真のヒロインだ。
今でも彼女とはレインで話し合って仲良くしている。
ただ、アイドル仕事が忙しいのか返事が遅れたりするけど。
落ち着いた俺は身支度を済ませて家を出て登校した。
今日から二年生になる新学期だ。
とは言っても、俺への扱いはまるで罪人を扱うような物で、俺は学校に着いてすぐ警備員によって教室に連行された。
俺は一年の三学期から、この教室で一人で自習させられていた。
トイレに行ける休み時間は、普通のクラスとずらされていて、昼休みの時間も教室を出る事は許されない。
ここまで俺にこんな不当な扱いをするなんて、この学校も腐ってやがる。
俺がアリアを手に入れたら絶対復讐してやるからな……!
……と意気込みはしたけど、今俺に出来る事はない。
何かをしようにも、監視が厳しいから行動を起こした途端に止まられてしまうだろう。
今は大人しく勉強に集中するしかない。
いざ動くべき時に、勉強を多少サボっても余裕が出来るくらいには。
ラジオ代わりにイヤホンで聞いているアカリちゃんの歌声だけが心の支えだった。
実は一年三学期になる頃、マイが俺の所に来てた。
『修二くん、ごめんなさい!今までユカに脅されて話し掛けられなかったの!この動画見て!あの写真はこの動画から切り抜いただけなの。ただ修二くんを不安にさせたかっただけで、本当は浮気じゃないから!』
なんて事を言われて動画を見せられた。
確かに動画にはマイが葛葉とラブホの前を通り過ぎる所とか、ラブホに入ったのもユカと二人だけだったという所が写ってた。
でも信じられなかったから突っぱねた。
動画を見せられたからって、その後動画に見えない所で葛葉とラブホテルに入ったかも知れない。
そうじゃなければ、マイがレインでリナの写真を送って俺を嵌めた事が説明つかない。本人はそんな事してないとシラを切ったが。
つまりマイは練習とか言って俺をキープして、もっといい相手が見つかればすぐ乗り換えようとしたビッチという事だ。
それでもあまりにしつこかったので、バレンタインデーの日にハッキリ振ってやった。
『どうしても信じてくれないの?……ごめんなさい……!』
最後には泣く演技をしながら去ったけど、俺は騙されない。
勉強し続けて三日目。
しばらく変わり映えしないだろうと思った俺の学校生活に唐突に変化が訪れた。
普通のクラスの昼休み時間に、突然女の子が教室に入って来たのだ。
ウェーブの掛かったセミロングの髪の毛に、細い目鼻立ちの綺麗な顔の女の子だった。
女の子は教室のドアを閉めた直後に俺と目が会い、
「しーっ」
と、人差し指を唇に当てる。
そしてすぐ、ドアの外から新しい人の気配がした。
「おい。花園さん、いたか?」
「いや、いないな。でも、もしかしたらこの教室に入ったのかも」
「やめろ。この教室は……」
「……ああ、そうだったな。流石にここには入ってないか」
そんな話し声の後、気配がドアの外から遠くなった。
多分、ここが俺の隔離教室だって知られたからだろうな。まるで腫れ物扱いだ。
「ふー、助かった。ごめんね?急に入っちゃって」
女の子は安心した素振りを見せた後、俺に謝った。
「君、追われてたの?」
「そうなの。あっ、誤解しないでね。別に悪い事した訳じゃないから」
女の子はこっちが何か言うよりも前に両手を振った。
「君は知らないみたいだけど、私アイドルやってるの。それでちょっと過激なファンの人から逃げてただけで」
この学校にアイドルがいたなんて聞いた事ないけど、転校して来たのか?
「そう、アイドルなんだ。名前は?」
「花園リンゴよ。ってこっちは芸名で学校では本名の花村リンゴって通してるけど、中々浸透しないのよねー」
そりゃあ、本名と芸名が大差無いからだろ。
「そうか。俺は長岡修二。よろしく、花村さん」
「うん、よろしく長岡くん。……ところでここ、何かの部室?」
今になって気になったのか、花村さんは教室をキョロキョロ見回した。
「ああ……、うん。似たような物」
花村さんに俺の事情を説明するのは気が引けたので、適当に誤魔化した。
「そっか。長岡くん、お願いがあるんだけど、なんかここ避けられてるみたいだし、今度またファンの人たちから逃げる時にここに匿って貰ってもいいかな?」
花村さんは両手を合わせ、片目を瞑りながらお願いして来た。
しぐさがあざとい。
「いいよ、好きなようにしてくれても」
俺は花村さんのお願いを受け入れた。
別に花村さんの見た目に絆されたからじゃない。
彼女を通して学校の様子とかを聞けるんじゃないかって打算があるのだ。
それに、俺の真ヒロインであるアカリちゃんもアイドルだからな。
もしかしたら花村さんと何か繋がりがあるかも知れないから、仲良くして損はないだろう。
そうなると、花村さんはサブヒロインになるのか?
「ありがとう!じゃあまたね!」
花村さんはお礼を言ってから教室を出た。
一人残った俺は、スマホで花園リンゴを検索した。
花園リンゴは、あのアカリちゃんと同じ事務所所属のアイドルで、中三でデビューして今年でアイドル三年ちょっと足りないくらいになる、人気アイドルみたいだった。
ついでに、一般公開されている彼女のライブ映像やMVも見てみよう。
………。
凄かった……。
アカリちゃんが可愛さを濃縮した感じならば、花園さんは表情や振り付けのパフォーマンスが磨き上げられていて、別の世界のプロだと見せつけられた。
流石は俺のサブヒロイン。
ユカたちみたいな尻軽ビッチとは格が違う。
そもそもパンピー止まりのユカやマイ、リナは俺に相応しくなかったのだ。
俺にはアリア、アカリ、花園さんといったアイドルたちが相応しい!
アリアも文化祭でアイドルみたいになっているからな。
これはつまり、俺のアイドルハーレムを作る展開か?!
そしてあのビッチ共は最初から俺のハーレムヒロインじゃなくて、踏み台の悪役だったと。
後から後悔して俺のハーレムに入れてくれとお願いしても遅いからな!
まあでも、俺は優しいから都合のいい性奴隷としてなら許してやってもいいけど。
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次も長岡視点になります
道化の如く踊る彼の
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