三章・NTRざまぁキャンセル
第1話『踊る道化①』
『彼女も幼馴染も義妹も全部クズなイケメンに寝取られた上に濡れ衣を着せられたけど、超絶可愛い新人アイドルと仲良くなったからざまぁしてやる!by長岡修二』
アリアさんを脅したという濡れ衣を着せられた俺に、学校から本格的な処分が下された。
退学と。
だが、学校からの条件を受け入れれば、悠翔高校に在籍し続けて居られるらしい。
その条件とは、三学期から俺一人だけ隔離されたクラスに移り、授業は受けられず自習の時間だけ与えられ、定期テストや模試で上位の成績を取り続けてる事。
つまり、俺を学校の平均点を上げる勉強マシンとして飼い殺すという事だった。
考えた奴の顔を見たくなる提案だが、俺はその提案を受ける事を選んだ。
悠翔高校に残りさえすれば、いずれ葛葉の野郎に復讐し、アリアさんを取り戻すチャンスもあるはずだから。
俺を捨てて裏切ったリナもユカもマイも……もうどうでもいい。
しかしアリアさん……いや、アリアだけは俺が手に入れる。
そして花京院家の婿になって俺を見捨てた奴ら全員に復讐してやる……!
全員に土下座させて女の子たちは俺の性奴隷にしよう。
ハーレムの恋人枠に入れてやろうとしてた俺を裏切った事を死ぬまで後悔させてやるんだ!
俺は今まで父さんに連れ出されて田舎にある父さんの実家にいたけど、何とかお願いして、クリスマス当日に都会の家へ帰らせて貰った。
何か目当てがあった訳ではないけど、クリスマスくらい都会で遊びたかったから。
しかし、いざ戻って見ると、いつもとは違って一人で過ごすクリスマスだと気付いた。
これも全部、葛葉と俺を裏切った女共の所為だ、クソっ。
一人で何も無い部屋にいてもしょうがない。
俺は街へ出てあちこち遊んで回った。
小遣いは爺さんや婆さんから貰ってたから余裕がある。
ゲームセンター、バッティングセンターとカラオケ。
思い返せば、子供の頃からユカやリナと遊んでた場所が多い。
しかしそれらの場所に全部、見え難い場所にプリクラのシールが貼られてた。
……葛葉とユカのツーショットのプリクラが。まるで俺を煽る見たいにユカが葛葉の頬にキスする絵面の上にピンクのハートまで書かれて。
「クソがっ」
怒りのままプリクラを全部剥がしてグシャグシャに丸めて捨てた。
あの頃のユカたちは俺の事が好きだったはずなのに、どうしてこうなったんだろう。
いくら金持ちのイケメンが口説いたからって心変わりする子たちじゃないはずなのに。
それとも俺の知らない内に本性が変わってたんだろうか。
……考えても仕方ない。
あいつらは俺を裏切ったんだ。
今更何をしてもその事実は消えない。
「いらっしゃいませ!」
考え事をしてたら、いつの間にかケーキ屋に入っていた。
ここも毎年リナやユカと食べるクリスマスケーキを買ってた店だ。
結局また思い出の場所だと自嘲してしまう。
せっかくだから何か買って行こうか。
「あっ、長岡さん。今年もケーキですか?」
カウンターに近付くと、お互い顔を覚えているケーキ屋の店員の女の子が話しかけて来た。
この店の店長の娘さんで、俺の一個上らしい。
「まあ、はい。そんな所です」
そして買うクリスマスケーキを決めて店員さんに告げる。
「はい、少々お待ちくださいね……そう言えばですね」
支払いの後、店員さんはケーキの包装しながら、話を振って来た。
「さっき、店に物凄いイケメンが来てたんですよ。今年、高校に入学してこっちに引っ越して来たんですって。これが写真です」
そして片手でスマホを操作して、俺に写真の画面を見せた。
「こいつは……」
写真の男は……俺の良く知る、憎き相手の葛葉恭一だった。
「この人、読モとか、ネットでライブの動画に出てた人なんです。悠翔高校に通ってるらしいんですけど、長岡さんも悠翔高校でしたよね。もしかして知り合いでしたら、紹介して欲しいんですけど……」
店員さんは、まるで恋する乙女みたいに頬を赤く染めていた。
クソっ、ここでもかよ!
「いえ、知らない人です」
「じゃあ、今度三学期になったら、この人の連絡先とか聞いたり……」
つい嘘をついてしまったけど、店員さんが食い下がって来た。
「すみません、そういう事に相手しないと聞いてるんで」
「そうですか……」
また嘘を重ね、それでようやく店員さんも諦めた。
俺は包装が終わったケーキを受け取り、速足でケーキ屋を抜け出した。
あの店員さんとも俺が先に仲良くなったのに。
どうして後から出て来た葛葉に全部持って行かれるんだ!
鬱屈な気持ちのまま、家の近所の公園に入ってベンチに座った。
またしても、例のプリクラがベンチの端に貼られてたので、剥がして捨てた。
ここまでとなるともう悪意しか感じられない。
葛葉の野郎がユカに色々聞き出して俺を苦しめる為にやったんだろう。
でも俺が何したってんだよ。
悪いのはアリアに手を出したあいつの方じゃないか。
どうして俺ばっかりこんな目に……
「あの……、大丈夫ですか?」
俯いて考えていると声を掛けられたので、頭を上げる。
すると俺の正面に、一人の女の子が立っていて俺の様子を覗き込んでいた。
フリルのついたブラウスとスカートの上に厚手のジャケットを着込み、小柄で若干丸みのある可愛い顔のお人形みたいな女の子だった。
「大丈夫だけど……君は?」
「通りすがりなんですけど、具合が悪そうに見えて心配になったので……」
顔だけじゃなくて声も凄く高くて可愛い。
「ありがとう。君は優しい子だね」
つい、手を伸ばしてその子の頭を撫でた。
「ちょっ、やめてくださいよ、もー」
女の子は恥ずかしそうに手を振り払った。
「ごめんごめん。俺、妹がいて、昔は良く頭を撫でてやったから……」
「そうなんですか。でも昔って、今はしないんですか?」
「……ああ、まあね」
今はもう、リナにも裏切られて仲違いしたから……
それで会話が途切れ、気まずい空気になった。
「えっと……、あっそうだ。これ、貰ってください」
女の子は可愛い絵がプリントされた、薄い箱を差し出して来た。
「これは……、アイドルのCD?」
受け取った箱には
「それ、私の曲です。私、今日アイドルデビューしたんですよ?」
「そうなのか。凄いね」
つまりこの子の名前は夢川アカリというのか。芸名かも知れないけど。
確かにアイドルだと言われて納得出来る可愛さだ。
「それ聞いて元気出して貰えたらーと」
「そうか、ありがとう夢川さん。……じゃあ、俺はCDの代わりにこれをあげるよ」
俺はさっき買ったクリスマスケーキを夢川さんに差し出した。
「これってケーキですか?」
「ああ、うん。つい買ってしまったけど、一人で食べるには多くて、一緒に食べる相手も居なくて困ってたから……」
「それじゃ、ありがたくいただきます。それじゃそろそろ失礼しますけど」
夢川さんはひと拍子置いて俺の耳元で呟く。
「私の事は、アカリと呼んでくれていいですよ?」
その言葉に驚いて夢川さん、いやアカリちゃんを見ると、彼女は悪戯した子供みたいに笑ってた。
「それじゃ!」
そのままアカリちゃんは公園を走り去った。
アカリちゃんを見送った後、俺は何となくCD箱の表紙を開けて見た。すると中に電話番号とレインIDが書かれてあるのを見つけた。
これってアカリちゃんの連絡先か?
もしかして……俺に第二のモテ期が?
Web小説とかで良くある、恋人や幼馴染とかを寝取られた後、真ヒロインと出会って尻軽女と間男にざまぁする展開か!?
「ふっ、ふははは!!」
やはり俺は主人公だ!
見てろよ、葛葉と俺を裏切った女共!
俺の目の前で土下座させてやる!
今さら俺と復縁したいと言っても遅いからな!
【Side.アカリ?】
目的を完遂した私は、公園外の車道に停められてたマネージャーさんの車の後方座席に乗り込みました。
「戻りました」
「おかえり、何それ?」
マネージャーのお姉さんの目が手に持ったケーキの箱に向きました。
「ああ……ただのケーキです。さっき拾いましたけど、マネージャーさんが家族かスタッフさんと一緒に食べてください」
そう答えてケーキの箱を空の助手席に乗せます。
「拾ったって……大丈夫なの?それ」
ああ、拾った物をそのまま貰うと窃盗になるんでしたっけ。
普通はそれでしょっ引かれたりしませんが、私はもうアイドルですからね。
「冗談ですよ。本当はバカ……親切な人から貰った物です。安心していいですよ?」
本音を言わせて貰えれば、あんなケーキを食べる気になれないから押し付けただけですけど。
「それはそれで不安になるけど、まあ……いただくわ」
それで会話が終わり、マネージャーさんが車を出発させました。
ぼうっと窓の外の景色を見ていると、ジャケットのポケットの中にあるスマホが電話の着信音を鳴らしました。
スマホを取り出して画面を見ると、【リンゴ先輩】と出てたので早速電話に出ます。
『もしもし。トモリん、上手く行った?』
スマホのスピーカーで、同じ事務所のアイドル先輩である花園リンゴ先輩の声が聞こえました。
「ええ、間違いなく」
トモリ……というのは私の本名です。
……まあ、リンゴ先輩はトモリんと改変して呼んでますけどね。
『なら良かった。後で私にも手引きするのを忘れないでね』
「もちろんです。リンゴ先輩も、きょー様の事、忘れないで下さいね?」
『分かってる、そういう作戦なんだから。じゃ、そろそろ私も移動だから切るね』
「はい」
電話が切られたスマホをポケットに戻します。
そして座席の脇にあった私のバッグからある物を取り出そうとして、バッグの中にある二個目のスマホがバイブしたので手に取って確認しました。
バイブはレインの新着通知で、さっきの
『修二:今登録したよ。これってアカリちゃんのIDであってるよね』
『修二:これからよろしく』
正直既読スルーしようかと思いましたが、あれとはまだ仲良くしないと。
『アカリ:(*・ω・)/』
返事代わりに、適当なスタンプを打ち込んで二個目のスマホをバッグに放り込み、今度こそバッグから目当ての物を取り出しました。
それは、私のお宝であるきょー様もとい葛葉恭一様が読者モデルとして表紙を飾った雑誌を、表紙だけ切り取ってフィルムに入れた写真です。
「うふふふ……」
目の前のきょー様の顔と、これからの期待に興奮して、お腹の奥がうずきます。
我慢出来ず、フィルムの上からきょー様の写真の口にキスしました。
きょー様、早く私を奪いに来てくださいね♪
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この三章からは、性描写シーン警告アナウンスを中止いたしますのでご了承ください
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