間章二・一年目二学期後半~
第1話『感染する歪み・前』
【Side.アリア】
「~~~♪」
出掛ける身支度をしてる途中、つい鼻歌を口ずさんでしまいました。
だって今日は久しぶりの恭一さんとのデートですもの。
ここしばらくはあの生ゴミへの対処で忙しかったのですが、今回ようやく時間が取れたのです。
恭一さんからしたらデートの相手なんていくらでもいるでしょうが、私は質と愛で勝ちます。
なんと言っても、私こそが恭一さんの唯一にして本当の恋人ですから。
イチゴさんやユカさんたちみたいな愛人とは違うのです!
ワンピースの上にジャケットを中心に自己コーディネートをした後、今か今かと部屋で恭一さんを待ちます。
前に
約束した時間の三分前になるとインターホンが鳴り、私は恭一さんが来たと確信して早速彼を向かえにマンションの玄関に出ました。
「恭一さん!おはようございます!」
「ああ、おはよう」
案の定、来たのは恭一さんでして、笑顔で挨拶を交わしました。
スキニーパンツとワイシャツの上にジレベストを着こなした今日の恭一さんも素敵です。
「ではさっそく行きましょうか」
「そうだな」
恭一さんの腕に抱きついて、家の車を待たせてる場所まで案内します。
二人で車の後方座席に乗り込んだ後は運転手さんに運転を任せて、私は最近見たドラマや学校であった事の感想など今まで溜めてた話題を恭一さんと交わしました。
そして着いたデートスポットはある高級ホテルです。
ホテルの駐車場に車を止めて運転手さんに暇を告げた後、私と恭一さんはホテルに併設されているショッピングモールに入りました。
「恭一さん、これとこれならどっちがお好みですか?」
真っ先にアパレルコーナーにて服を選んで貰います。
「その二つなら、そっちの方だな」
恭一さんは服を見比べて迷わず片方を選びました。
どっちも似合う、とか安易に言わずに選べる所、服の違いが分かってて好みや価値観も明確そうに見えて好感度が上がります。
それに買い物に連れ回してるのに嫌そうな顔一つしない所もいいです。
分かってますよ?
学校とかでは人目もあるから私に冷たくしてるだけで、本当は私の事が好きなんですよね?
だってこうして私とのデートを楽しんでくれてるのですから。
「恭一さん!この服とか恭一さんに似合うと思うんです!」
自分用の服と一通り選んだ後、今度は恭一さんに着せるメンズ服を私が選びました。
「こういうのが似合いそうなのか?」
恭一さんが私の勧めたシャツを体に当てて見せました。
「はい!よくお似合いです!」
私が選んだ服を着た恭一さん……!
想像するだけでもう次のデートが楽しみです。
恭一さんの服も選び終えた後は支払いを済ませました。
もちろん、全部私のお金で。
「あの、アリアさん。俺の服の分は俺が出すけど」
「いいのですよ。私が恭一さんに着て欲しくて買うのですから。私が出します」
と言うのは建前です。
本当はこれも恭一さんを囲い込む作戦の一環です。
恭一が義理堅いのは分かってますからね。
こうして貢ぎ物を積み上げると、私を裏切れなくなるはずです。
これが学校の権力だけでない私の力……財力!
イチゴさんやユカさんとは出来ない贅沢で、恭一さんの心を鷲掴みするのです!
こんな事、あの二人に出来るはずないでしょう?
私の勝ちも決まった様な物ですね。ふふふ……
ごめんなさいね?人生も恋愛も、結局は生まれ持った物で決まるのですよ。
ショッピングを終えた後は、荷物を運転手さんに預けてからホテルのレストランでランチです。
私とのデートでは決まってこの様に格式のあるレストランで食事を取りますので、恭一さんも慣れた様子でテーブルマナーを守りながら優雅に食事を取ってます。
流石恭一さん。やはり私に相応しいのは彼しかいません。
逆に恭一さんに相応しいのも私しかいないでしょう。
優れた容姿と、頭脳と、家柄を持つこの花京院アリアしか!
食事を終えたら、予約していたスイートルームで恭一さんと二人きりになりました。
二人でくっついてイチャつきながら、部屋のテレビで映画を見ます。
見る映画は私のチョイスで、幼馴染同士がくっつく恋愛映画です。
ええ、これは最近恭一さんの愛人となったユカさんを意識したチョイスです。
幼馴染がいるなら、他に目移りせずに幼馴染とくっつけば良かったという、遠回しなネガティブキャンペーンです。
「映画、面白かったですね」
「ああ、すごく感動した。特にあのシーンとか……」
私の意図が伝わったかは分かりませんが、恭一さんの感想はすごく好評で一時間近く感想を交わしました。
映画の感想会が終わった後はいよいよ今日の目玉です。
「あの、恭一さん。お願いがあるんですが……」
「どんなお願いを?」
「その……ベッドで、私を後ろから抱きしめて、耳元でこのセリフを呟いて欲しいです!」
そう言って、恭一さんに台本を差し出しました。
台本には、私が恋愛漫画を読み漁って厳選した恭一さんに言われたいセリフが書き込まれてます。
「………………これを?全部?」
「はい!」
「………ふううぅぅ………分かった。やろう」
恭一さんは快く私のお願いを受け入れ、私を後ろから抱きかかえてベッドに移動しました。
そして後ろから私を抱きしめたまま、台本のセリフを呟き始めます。
「ええっと………アリア、愛してる、この世界の誰よりも」
ふわっ!
「アリアのいない未来なんて考えられない。アリアがいないと生きて行けない」
はうっ!
「アリアの為ならどんな事でも出来る。この場で死ぬ事さえも」
はあっ!………。
………………。
………………………。
………………………………。
はっ!
感動と心地良さについ気を失ってしまってました。
セリフを全体の一割まで聞いた記憶しかなくて、勿体無い事をしてしまったと後悔します。
私はベッドで寝かされてた様です。
体を起こして恭一さんを探すとバスルームの方から音が鳴り、しばらくしてバスルームから恭一さんが出て来ました。
「……アリアさん、起きたのか?」
「ええ、恭一さんはバスルームで何を?顔が青く見えますが……」
「……ちょっと胸焼けがしてな。心配しなくていい」
「そうですか」
ランチで食べた物の中に合わない物でもあったのでしょうか。
今後はメニューを考えないといけませんね。
「恭一さん、こういう事を言うのは恥ずかしいんですけど、実は台本のセリフを途中まで聞いた記憶しか無くて……また言って貰えますか?」
そうお願いしてみましたが、恭一さんの顔色が更に悪くなりました。
「……悪い。流石に俺も恥ずかしいから今日はもう無理だ」
「そうですか。それは残念ですね」
本当に残念です。
でも機会はこの先いくらでもありますからいいでしょう。
次のデートでの楽しみです。
―――――――――――――――
ここまでは普通に(恭一が)砂糖吐く内容ですが、
次話はどういった内容になるかはサブタイで予想してみましょう<(_ _)>
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