番外『IF・もしアリアが長岡と仲の良い振りをしたら……』
「なあ、花京院さん。長岡とは仲がいいのか?」
生徒会仕事の途中。
不意に恭一さんが聞いて来ました。
ふふふ、焦ってるんですか?
恭一さんの言う通り、最近私はあの生ゴミの長岡と額面だけ見ると仲が良いと言えるでしょう。
二学期始業式の日に生ゴミに付き纏われて立った噂も否定しませんでしたし、生徒会庶務として生ゴミを入れましたからね。
「ええ、それなりに良好だと言ってもいいでしょう。昨日告白されましたけど、返事を考えている最中です」
「……そうか」
これは最近私に冷たい恭一さんと嫉妬と焦りを煽る作戦です。
今だって人前だからと私を苗字で呼んでますからね。
これくらいの意地悪は返せていただきます。
……しかしその時、私は恭一さんが嬉しそうに笑ってる事に気が付きませんでした。
その後日。
おじい様に呼び出されて、理事長室に訪れますと。
「アリア。男を乗り換えたみたいだな。祖父としては色々思う所があるが……。また相手を変えられては困るので、今回はすぐに交際を公表して貰おう」
なんて事を言い渡されました。
「はい?」
訳が分からなくて聞き返しました。
「幸い葛葉君は君の心変わりを非難せず大人しく身を引くんだそうだ」
え?もう恭一さんとおじい様でお話済み?
そのまま次の全校朝礼にて私と生ゴミの交際が公表されて、外堀が埋まってしまいました。
「イチゴさん!助けてください!」
私は焦る気持ちでイチゴさんに助けを求めましたが。
「アリアちゃん……いえ、花京院さん。あなたの尻軽には失望したよ。きょーくんは返して貰うね」
イチゴさんには冷たい目を向けられて、話を聞いて貰えないまま絶交され、恭一さんを取られてしまいました。
さらに二人とも生徒会を辞めました。
「アリア。この子は幼馴染のユカと一緒で、俺の大事な友達のマイなんだ。空いた役職にマイを入れて貰える様にしたから仲良くして欲しい」
生ゴミは私に森さんを紹介しました。
他で聞いた話によると、生ゴミはおじい様にお願いして金を引き出し、その金で斎藤さんたちにプレゼントを買い与えたとの事。
何勝手な事してくれてるんですか?
どうして私の家の金で他の女を囲おうとしてるのか、神経を疑いたくなります。
これを理由に生ゴミと別れると言ってもおじい様に止められてしまいました。
「お前の相手が複数の女性と交際してるのも初めてじゃないのだろ。諦めて抱え込め」
と言われて。
恭一さんと生ゴミを同列に並べないで欲しいのですが、話を聞いて貰えませんでした。
それからもどうにかして恭一さんと寄りを戻そうとしましたが、恭一さんには避けられ、その取り巻きからも邪魔されてしまいました。
「ダメだよー?花京院さんは長岡くんと付き合ってるんだから、私たちの葛葉くんにまで手出さないで欲しいなー」
違います!恭一さんは私のものなのに!
それから間もなく、恭一さんとイチゴさんが付き合ってるって話が広まりました。
交際に合わせて、イチゴさんがイメチェンしておめかしし、恭一さんと並んでも見劣りしなくなり、まるでシンデレラみたいな扱いになってクラス中から祝福されました。
それっきり、私と恭一さんの距離が戻る事はありませんでした。
私はそれから、したくもない生ゴミや彼の女たちの相手をしながら無為な時間を過ごしました。
たまにイチゴさんから私を煽る目的なのか、恭一さんとイチゴさんの情事を撮った動画が送られて来ました。
物凄く悔しいですけど、今はその動画だけが私にとって色んな意味での慰みでした。
高校を卒業するする頃、イチゴさんが恭一さんの子供を身籠ったとの噂を聞きました。
噂は事実みたいで二人は卒業したらすぐ結婚するそうです。
そのままクラス中に結婚式の招待状が配られ、私にも届きました。
「いや……どうして……」
ちょっとだけ嫉妬させるつもりだったのに……
それがどうしてこんな事に……
返って来て……
恭一さん……!
『花京院さん?久しぶりだな。そっちも卒業したら長岡と結婚するんだったか。そうなるとリナの義理の姉になるから、俺とも義理の姉弟みたいになるか。でも結婚式には呼ばないでくれ。こっちはすぐイチゴとの育児で忙しくなるからな』
………………
「いやあああああ!!!」
感情が爆発して叫び出すと同時に、目が覚めました。
「はあ……はあ……。……夢?」
ここが私の部屋のベッドだと気が付いて、すぐに枕元にあるスマホを手に取りました。
日付とレイン履歴などを確かめると、あれは夢で、今が現実という事で間違いないようです。
恭一さんに、昨日生ゴミに付き纏われた時の事を弁解するチャット履歴だってあるのですから。
しかしただの夢……と割り切るにはとてもリアリティがありました。
実際、恭一さんは二股まがいな関係を心苦しく思ってるみたいですので。
私が心変わりした素振りを見せれば、恭一さんは未練なく私を捨て……送り出してイチゴさんとくっついてしまうのでしょう。
今の夢は神様が私に与えた戒めかも知れません。
馬鹿な事をすれば恭一さんを失ってしまうという。
残念ながら、現状で嫉妬を煽れるほど恭一さんからの好感度が足りないのは自覚しています。
夢の私とは違ってですね。
そして不味い事に、最近生ゴミが如何にも馴れ馴れしく私に付き纏っている最中です。
あの生ゴミを放置していると危険だと、頭の中で警鐘が鳴りました。
「生ゴミ……夢の中でまで私を苦しめるとは。覚悟はよろしいのですね?」
スマホの握りしめ、私は必ず生ゴミに地獄に近い苦しみを与えると誓いました。
―――――――――――――――
時期的には二章4話の前後くらいでしょうか
展開早くない?とかイチゴはアリアを切った後でも恭一と付き合わずに他の女子をくっつけさせそうだけど?とかは、アリアの知見で構築された、可能性の高いIFの夢という事でご理解お願いします
いざ更新直前になって、この内容がIFや夢オチでも読者様方に受け入れて貰えなかったらどうしようって怖気づいてますが
明日はストックを高速放出した反動でお休みを兼ねた人物紹介&章あとがきになります
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