第20話『―落―・今が反撃の時だ!』

 今話と次話、長岡修二に移入し過ぎると、胸糞悪い話になりますのでご注意ください

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【Side.長岡修二】


 クソっ!遅れた!


 ユカの処女を恭一に奪われてしまった!


 いずれマイと一緒に行くラブホの下見をしようとしてたら、ユカと葛葉がそのラブホから出る所に出くわしてしまった。


 しかもユカはそこで葛葉と何をしたのか、何も否定しなかった。


 俺が先に好きだったのに!


 間違いなく両想いだったのに!


 ユカの初めてがぁぁぁ。


 やっぱりあいつはクズ野郎だ!絶対に許さない!


 でも気付いた。


 あいつは狡猾に立ち回ってるから、言葉だけでは足りなくて証拠が必要だと。


 だから俺は証拠を得る為に葛葉のクラスメイトたちに聞き込みを始めた。


 しかし男子からは証拠の無い噂話ばかりでまともな話を聞けなかったので、葛葉がよく遊ぶ相手でもある女子にターゲットを変えた。


「実はね、私も葛葉には困っていたの」


 それで見事当たりを引いた。


 相手は吉田亜美さん。


 元々他に彼氏がいたのに、葛葉が寝取ったって噂の女子だった。


 そしてやはり、亜美さんは何か弱みを握られて仕方なく葛葉と仲良くしてたのだ!


 亜美さんは自分がどんな弱みを握られたのかは教えてくれなかったけど、その代わりに葛葉と仲良い振りをしてる間に得た、葛葉がアリアさんを脅してるチャットログの写真を見せてくれた。


 完璧だ!これがあればアリアさんを助けられる!


 亜美はレインのIDを教えるのは嫌だと言ったので、クラウドを通して証拠の写真をダウンロードさせて貰った。


 何故か一回圧縮されたファイルで、一緒にダウンロードさせられた専用の解凍アプリを使わされたけど。


「ありがとう、亜美さん!これがあればすぐにでも葛葉の奴を追い出せる!そうすれば亜美さんも自由になれるから、楽しみにして待っていて!その時は一緒にお祝いしよう!」


「アー、ウン。ガンバッテネー」


 念願の証拠を手に入れた俺は、軽い足取りで家路についた。


 その途中、マイの呼び出しを受けてマイと会った。


「ねえ修二くん。さっき一緒に下校してた女子って誰?浮気じゃないよね?」


 さっきのを見られてたのか。


 俺はすぐ誤解を解くべく説明した。


「違うんだマイ。あれは葛葉の悪行の証拠を掴むために聞き込みをしてただけなんだ」


「そうなの?収穫はあった?」


「ああ!バッチリだ!これがあればアリアさんを葛葉から助け出せる!そうすればアリアさんと仲良くなれると思う!」


「えっ?……修二くん、今の修二くんの彼女は私だよね?……練習だけど」


 マイが不安そうな顔をする。


 俺がアリアさんと仲良くなる事に嫉妬したのだろうか。すぐ安心させよう。


「大丈夫、マイを捨てたりはしないから。俺がアリアさんの婿になれば金も沢山使えるようになるから、それでマイもユカもリナも全部俺が養えるよ」


「……えっ?」


「じゃあ、明日の準備があるから!」


 俺は軽い足取りで家に帰り、部屋に着いた後レインでユカに明日生徒会の活動があるのか聞いた。


 そうすると短く『ある』とだけ返された。


 こうしてちゃんと答えてくれるあたり、やはり葛葉に脅されていて実は俺に助けを求めていうのかも知れない。


 まってろ葛葉恭一!明日がお前の命日だ!




 翌日の放課後。


「失礼します!」


 俺は全員が集まってそうなタイミングを見計らって生徒会室に入った。


 生徒会室の中には役員全員はいなかったけど、アリアさん、ユカ、葛葉と目的の相手は揃っていた。


「長岡……また接触禁止を破りましたね。それで、何の用ですか?」


 アリアさんが俺にキツイ言葉で言ってるけど、それも期待の裏返しだと知っている。


 待っててくれ、すぐ助けるから!


「葛葉!お前がアリアさんを脅してるって証拠はもう掴んだ!警察に通報されたくなかったら、大人しく学校を退学しろ!」


「は?」


 葛葉は心外そうにする。


「とぼけても無駄だ!これを見ろ!」


 俺はスマホを操作して、亜美さんから貰った葛葉がアリアさんを脅すチャットログの写真を見せた。


「これが証拠だ!」


「……お前、今やってるのが逆に俺を脅している事はともかく、眼科に行った方がいいと思うぞ」


 しかし葛葉はまるで動揺しないでそう言い返して来た。


「ごめんなさい恭一さん。この様にこの生ゴミから脅されたので仕方なく恭一さんに冷たくしてたのです……」


 アリアさんは泣きながら葛葉にしがみついた。


「修二あんた……そこまでするクズだったの!」


 証拠の写真を見たユカはおかしな事を言う。


「いや、脅したのは俺じゃなくて葛葉の方……」


「お前、自分のスマホの画面、見直したらどうだ?」


 葛葉に言われて、俺は仕方なくスマホの画面を確認した。


「?……なっ」


 すると画面に映ってたのは、葛葉ではなく俺がアリアさんを見切れてよく分からない写真で脅しているチャットログのスクショだった。


「おかしい!これはスクショじゃなくて画面を撮った写真だったし、そもそも俺はこんな事してない!」


「じゃあ、それは何なんだ?」


「くっ!」


 俺は慌ててこのスクショを消して、吉田さんから貰った写真を探そうとした。


 しかし吉田さんから貰った写真はどこを探しても無いし、消したスクショは何度も復活した。


 まさが……ウイルスを仕掛けられた!?


 一体いつ!?


「先生を呼んだわ。すぐに来るはずよ」


 横でユカがスマホを片手に、俺を軽蔑する眼差しで見ながら言った。


「ユカ、違うんだ!これも葛葉の罠なんだ!」


 俺はユカの肩を掴もうとしたけど、無情に振り落とされた。


「触らないで。あんたと仲良いと思われて巻き添えを食らいたくないわ」


「なっ、俺を見捨てるのか?俺よりも自分の保身を選んで?」


「当然でしょ?なんで私があんたの道連れにならなければならないのよ。むしろ今から縁を切りたいくらいだわ」


「そんな……」


 本当ならいつも俺の味方をしてくれてたユカが、今ではまるでゴミを見るようにしか俺を見ていない。


 ユカもリナみたいに変わってしまったのか?


 クソっ、これも全部葛葉が悪い!


 今からでも葛葉からスマホを奪えば、証拠を抑えられるはず!


 そう思って葛葉に掴みかかろうとしたら、ドアが開いて先生たちが入って来た。


「長岡!花京院さんを脅すとは何事だ!」


「学生生命が惜しくなかったのか!?とにかく来い!」


 そのまま俺は先生たちに取り押さえられて生徒会室から連れ去られた。


 途中、助けを求めようとアリアさんたちを見たけど。


 アリアさんとユカは、見せつけるみたいに横目でこっちを見ながら、葛葉に抱き付いて両頬にキスを!


 しかもアリアさんは葛葉の正面から唇同士でまたキスをした!


「あああああぁぁぁぁぁ!!!!!」


 アリアさんのファーストキスがぁぁぁ!!!


 俺が!俺がするはずだったのにぃぃぃ!!!


「何喚いてるんだ!静かにしろ!」


「泣きたいのはこっちだからな!よりによって花京院さんに手を出しやがって!」


 俺の叫びはアリアさんたちに届かず、先生たちはアリアさんたちがキスしてるのにも気付かないまま、俺は指導室に連れて行かれた。


 その後指導室で、暴力は無かったものの教頭先生を含む色んな先生たちから罵倒混じりの説教を受けた。


 親も呼び出されて、処分はこれから討議するが十中八九は退学になるだろうと告げられた。


 そして親に連れられて家に帰されたけど、この前の交番の事もあって親からの心証も最悪になり、終始気まずかった。


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