第10話【裏・この学園は私の遊び場】
【Side.イチゴ】
私の話に乗って来たアリアちゃんに、私は長岡何某のメンタルをハーレムごと完膚なきにまで破壊する計画の一部を教えた。
しかしその計画の内に、長岡の女たちをきょーくんに落とし、必要ならきょーくんと体の関係も持たせる事にアリアちゃんは難色を示したけど。
「これはね、実験も兼ねてるんだよ。私、きょーくんもアリアちゃんも好きだから、二人は上手くいって欲しいんだ」
アリアちゃんも好きだというのは本当だよ?
今年買い換えたスマホの次くらいには大事だから。
「だからね。私も本当はきょーくんが他の子と仲良くするのは胸が痛いけど」
それが癖になってるんだけど。
「でもこの先もきょーくんとアリアちゃんが付き合い続ける為に必要な事だと思うの。じゃないと私もいつまでもきょーくんの事諦められないから」
まあきょーくんの事を手放すつもりは一生無いんだけどね?嘘も方便だから。
「……そうですね。いつまでもイチゴさんの世話になる訳にはいかないんですもの。先の事を考えるなら仕方ない……ですよね」
アリアちゃんは自分を納得させるみたいに呟く。
こんな感じできょーくんの限定的不能を調べる為だと言いくるめたら納得して貰えた。
やっぱチョロイね!
そう、これは必要な事だからね?
これを機にアリアちゃんもNTR趣味のもっと深く嵌って欲しいなー
新しい生徒会が発足して数日。
放課後に生徒会の仕事としてちょっと挨拶回りをしてたら、吉田さんがある男子生徒に迫られる所も見かけて颯爽ときょーくんが吉田さんを助けた。
きょーくんはそのまま男子生徒を何処かへ連れて行き、吉田さんはその後ろ姿をぼーっと見て何か悩んでそうだった。
吉田さんがきょーくんを好きな事は分かってたけど、またきょーくんに助けられてもっと深くのめり込みそうな感じかな。
これは使えそう。
私は吉田さんに声を掛けた。
「あの……吉田さん、だよね?もしかしてだけど、き…葛葉くんの事、好き?よかったら……手伝ってあげようか?」
「手伝うって、どうやって?」
吉田さんは不審がりながらも、興味はあったのか話を聞いてくれた。
「えっと、葛葉くんとは同じ生徒会所属だから、その仕事で買い出しがある時に私と葛葉くんで行く事にして、当日に吉田さんに代わるとか?」
「それってつまり……」
「うん。ちょっとしたお買い物デートだね」
私の提案が魅力的に聞こえたのか、吉田さんが生唾を飲む。
「でも、それなら君は私に何を望むの?」
吉田さんが聞き返して来た。
なるほど、タダで助けて貰うつもりがない辺り、根は良い子なんだね。
「実はね……。嫌いな子がいるんだけど、その子に嫌がらせするのを手伝って欲しいんだ」
「嫌がらせって……」
吉田さんの顔が引きつる。
こんな話、普通は飲めないもんね。そう……普通は。
「やっぱ無理?じゃあこの話は忘れて」
私は特に未練も見せないで吉田さんに背を向ける。
そのまま歩き出そうとすると。
「ちょっと待って!」
吉田さんが私の腕を掴んで止めた。
かかった。
笑いが出そう……我慢しないと……
「分かった。君の事手伝うから、私の事も手伝って……!」
そうよね?
なんてたって、ライバルにはあのアリアちゃんがいるんだから、協力者に選り好み出来る状況じゃないもんね?
こうして私は吉田さんという手駒を手に入れた。
それから、裏で吉田さんを動かした。
きょーくんと吉田さんのお出掛けデート?
ちゃんと送り出しましたよ?
きょーくんからしたら、あまり印象の残らなかったみたいだけど。
むしろ私とデートするつもりだったのにキャンセルされて不機嫌な節もあるけど。
まあそれは置いといて。
ツインテおっぱい事斎藤由華さんが長岡何某を一度見捨てて二人の関係に亀裂が入った時の狙い、吉田さんを動かした。
斎藤さんがヘイトを買いそうな情報を私がまとめ、それを吉田さんを使って斎藤さんと同じクラスのやや性格が悪い陽キャ女子たちに流させたのだ。
ヘイト情報の中身は
幼馴染の長岡何某をキープしながらイケメンのきょーくんに色目を使ってるとか、
逆にきょーくんを長岡何某と比べてきょーくんを下げてたとか、
アリアちゃんに媚びへつらって生徒会に入り、成績が落ちても特待生じゃなくなるのを止めて貰ったとかだ。
半分くらい根も葉もない噂だったけど。
それも直接ではなく、私が吉田さんにお願いし、吉田さんはあの陽キャ女子と親しい生徒に噂として話して流させた。
吉田さんにやって貰ったのはそれだけ。
だけど火種としては十分だった。
ヘイト情報を得た陽キャ女子どもは鬼の首でも獲ったみたいに騒ぎ出して、謎理論を経てこんな事をした斎藤さんに制裁を加えるべきと結論を出し、斎藤さんをイジメ始めた。
普段だったらここで長岡何某が斎藤さんを助けただろうが、少し前に斎藤さんが長岡何某を見捨てた事とか、お互いの噂の事で喧嘩した事とか、
それと長岡何某が森さんと付き合い始めた事とかあって、長岡何某はイジメに対して積極的に動かなかった。
後は斎藤さんがマジで弱った所を狙って、きょーくんに助けさせればいい。
きょーくんが動いたら裏でイジメをすぐに止めさせる手札もあるしね。
ただ、まさかここで森さんが長岡何某と付き合い始めるとか意外だったなー
そこまで積極的だとは思わなかったんだけど。
まあ、それで斎藤さんを奪う隙が出来るなら好都合。
森さんの事も長岡何某と付き合ったからって奪えない事は無いし、むしろ長岡何某にもっとデカい傷を付けられるから構わないか。
「どうしよう依藤さん。私たちの所為で斎藤さんが……」
吉田さんは自分がやった事を発端にイジメが始まったと知って、顔を青くした。
「うん。ちょっと嫌がらせするつもりだったけど、大事になったね」
対して私は余裕を持って答える。
最初からこの流れを狙ってたしね。
「そんな他人事みたいに……!最初の原因が私たちにあると知られたら……」
「うん、葛葉くんに嫌われるかもね」
私の答えに、吉田さんの顔から血の気が引いて行く。
「それだけじゃなくて、今この高校には花京院さんもいるからイジメに敏感なんだよね。イジメ一つを始まりに、イジメが起きやすい空気が出来てその矛先が花京院さんに向く……なんて事になったら、クラスだけじゃなくて学校全体が大騒ぎになるからね。そしてその始まりの原因となると……」
ちょっと盛ったけど、全く有り得ないとも言えない仮定に吉田さんはもう倒れそうだ。
てか実はアリアちゃんに斎藤さんをイジメで追い込むのを計画の一部として説明してて、了承を貰ってるのよね。
物凄く微妙な顔されたけど。
それでも他人のイジメを放置するとか、アリアちゃんもワルになったものだよ。
「大丈夫だよ。私たちはちょっと噂話を流しただけ。斎藤さんへのイジメを起こすつもりなんてなかった。イジメはあの子たちが勝手に始めただけ。私たちは悪くないよ?」
吉田さんを安心させる様に、丁寧に説く。
実際そうだよね?
私も吉田さんもあの女子たちに斎藤さんをイジメろって一言も言ってないんだから。
そもそも直接話した事すら無い。
こうしたらイジメが始まるんだろうなーとは予想してたけど。
悪い事したのはあくまでもあの子たち。
それでも吉田さんは安心出来ないのか俯いて震えた。
「大丈夫?まだ不安なら、また葛葉くんとどこか出掛けられる様にセットしてみようか?」
一応吉田さんもきょーくんの友達枠に入ってるから二人きりで会えるには会えるけど、そうなるとあの信号娘やアリアちゃんを出し抜く必要が出るからね。
その辺は私にセッティングして貰う方が楽に済むと吉田さんも学習しているのだ。
だから吉田さんは力なく頷いた。
これで吉田さんは心が弱ってる所できょーくんに益々依存し、きょーくんへのアプローチを手伝ってくれる私に弱みを握られたと勝手に思って、これからも私のお願いを聞いてくれるだろう。
本当に、便利な手駒が手に入ったよ。
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イジメ、ダメ、ゼッタイ
※この物語は、法律・法令・道徳に反する行為を容認・推奨するものではありません
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