第2話【裏・手駒を揃えよう】
【Side.イチゴ】
二学期が始まった。
久しぶりに登校しても、私のポジションは変わらない。
自分の席で本を読む振りをしながら他人を拒絶し、きょーくんの様子を見守るだけ。
ついでにアリアちゃんの事もたまに見る。
そのきょーくんだけど、初日早々にクラスでの人間関係が変化した。
まずはきょーくんの取り巻きな信号娘の三人の内、
あの子、きょーくんを見る目が明らかに恋する乙女なんだけど。
前にカラオケでナンパから助けたのが決定打だったかな。
伊藤さんの事は、同じ中学だったしそこでちょっとした借りもあったので覚えている。
中学二年の時だったかな。
クラスの陽キャ女共が悪ノリで適当な獲物を決めてイジメる遊びをしようとして、影響力の弱い私がその対象候補に上がってた。
それを察知した私は、伊藤さんが他の友達と話してる時に例の陽キャ女共について授業態度が悪いから改めて欲しいとか言うのをこっそり録音して、陽キャ女共に渡る様にしてやった。
そうすると当然陽キャ女共のヘイトは伊藤さんに向く訳で、私は無事イジメの危機を回避したのだった。
借りってつまりそういう事。当人は知らないけど。
まあ、伊藤さんへのイジメはきょーくんが普通に助けて終わったんだけどね。
当時の伊藤さんは髪を染めたりとかしてないから、きょーくんは伊藤さんが昔助けた子だとは覚えて無さそうだけど。
髪を染めたのは多分、きょーくんが軽そうな女子とばから遊んでるって噂を真に受けたからだろう。
私的には、伊藤さんに借りもあったからきょーくんに近付くのは全然オッケーだった。
何なら色んな遊びをするお友達にまで進展してくれても良かったんだが、きょーくんが予想外に真面目で面食らったから友達止まりだが。
正直、本気になるのが今更過ぎじゃない?ってのが私の本音。別にいいけど。
次に変化があったのは
本来はアリアちゃんの事を追っかける普通の子だった。
けど体育祭の時、足を捻挫した所をきょーくんにお姫様抱っこで保健室に連れて行かれたのをきっかけに、その後から隙あらばきょーくんを目で追ってたのを知っている。
髪を銀髪に染めたりした夏休みデビューは、きょーくんの好みに合わせてから、本気で付き合う方にシフトチェンジするのを狙ったのかな?
正直な感想としては、伊藤さんMk-Ⅱかな。
彼女は放置しても良さそう。
んで、最後はアリアちゃん。
こっちは表面的にはきょーくんと距離を置いてるけど、教室の隅々にこっそり増設された鏡できょーくんの様子を監視している。
そして途中で見てられなくなって、それっぽい理由を挙げてきょーくんたちの会話を断ち切った。
嫉妬と牽制が分かりやすいですなー
振り返る最中にさり気なく私の事も睨んだし。
これが一学期だったら色々滾ったんだろうけど、今の私の興味は他にある。
それは長岡何某の囲う女二人をどう嵌めてきょーくんに墜とすか。
主力予定のきょーくんは真面目な性格で正直に言っても協力してくれないだろうから、アリアちゃんの時みたいに騙しながら動かすしかない。
きょーくんに悪いとは思うけど、可愛い子と遊べる事で勘弁して貰おう。
そして後一人か二人、手駒が欲しい。
一人目は、居たらいいなってくらいだけど、直接動きたくない私の代わりをしてくれるの子。
その子の貞操観念次第だけど、きょーくんに気がある女子にきょーくんを餌にすれば何とか釣れるかな?
二人目は、確定枠だけどアリアちゃんも巻き込むつもり。
アリアちゃんとしても長岡何某に恨みがあるだろうから、誘うだけなら楽だろう。
きょーくんを使う事に関しては、ある事無い事吹き込んで納得して貰おう。
何故アリアちゃんにきょーくんのアレが起たないのか、最初はきょーくんの貞操観念だと思ったけど、実際の所は今も謎だからねー、その辺りもつつくか。
本当は二年生になるまでは仕込みだけするつもりだったけど、きょーくんは理事長の指示で二年生になったらアリアちゃんと交際してると公表するから、そうなると今みたいに使えない。
評判を落とさない制約はあるけど、この二学期、長く見積もっても三学期までが自由に使える最後のチャンス。
その上、アリアちゃんが勝手に動いて長岡何某を処分してしまうかも知れないから、予定を繰り上げて一年生の間にケリを付けよう。
放課後、アリアちゃんをいつもの空き教室に呼び出して、先に空き教室に向かうと、廊下で声を掛けられた。
「あっ、きみ。終業式の時の子だよね?あれから大丈夫だった?」
チラっと見ると、長岡
何こいつ。何で話しかけて来てんの?私、あなたさんとは友達じゃないんだけど?
話す事も無いので、無視して空き教室に入った。そしてもしやと思いドアの鍵を閉める。
この空き教室だが、アリアちゃんの権力で二学期からは施錠して、私ときょーくん、アリアちゃんの三人で鍵を共有した秘密の空間にしてるのだ。
そして案の定、外からドアを開けようしたのかドアが揺れ、開かないと知るとドアを叩いて「開けて」って呼ぶ声が聞こえた。
ホラーかな?
ここでお話するとか、入っていいとか誰も言ってないんですけど?
しばらくすると諦めたのかドアの外から気配が消えた。
さらにもう少し待つとアリアちゃんが入って来た。幸いアレに出待ちはされてなかったみたいだ。
で、「嫌な事をされた仕返し」と称して長岡何某のハーレムを破壊してアレの脳も破壊する計画にアリアちゃんを誘って見たけど、興味無かったのか乗ってくれなかった。
おかしいなー、アリアちゃんもあいつにデートを台無しにされた恨みがあるから、乗って来ると思ったんだけどなー
アリアちゃんがいないと、難易度が倍近く上がるんだけどー
そしてその後、アリアちゃんがあの長岡何某と仲良く下校してたという噂をSNSで拾った。
おや?まさか、アリアちゃん。よりによってあの長岡何某に乗り換えようとして無いよね?
そんな事許さないよ?
君は私の手駒なんだから、少なくともこの高校を卒業するまでは手放さないよ。
それにきょーくんに寝取りはともかく、寝取られを経験させるつもりも無いからね。
ただ、アリアちゃんが乗り換えるなんてまさかの話。
きょーくんに微妙に冷たくされてるのは自業自得だとアリアちゃんも知ってるし、私を裏切り、きょーくんを脅し、理事長に根回しまでしたのに簡単にきょーくんを捨てるはずが無い。
サンクコスト効果ってやつ。
噂の真偽を判断しかねた所、アリアちゃんから連絡が来た。
長岡何某と下校したのは勝手に付き纏われた事の間違いで、最初は私の計画に興味無かったけど、迷惑な噂が立った報復としてこっちの計画に乗ってくれるって話だった。
なるほどね。長岡何某、つくづく間がいいのか悪いのか。
まあ、これで必須枠の手駒は確保した。
長岡何某、テメーの女全部きょーくんに寝取らせてヤるからな。
私たちに絡んだ不幸を呪え。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます