二章・(他人の)ハーレム破壊

第1話『二学期初日』

 二学期が始まった。


 久しぶりに登校すると、教室ではクラスメイトたちが各々自分の友達グループで集まって雑談している。


 中には夏休みデビューなのか髪型を変えたり、髪の毛を染めたり、眼鏡をコンタクトにしたり、肌を焼いたりしたクラスメイトもチラホラ見受けられた。


 まれに逆夏休みデビューして陰気になったクラスメイトもいるが……あまり交流のない相手なのでスルーした。


 ちなみに俺の幼馴染にして彼女のイチゴは平常運転でぼっちで読書している。


「葛葉っち、久しぶり!前のカラオケ合宿ぶりだね!」


「あの時は色々教えて貰って助かった」


「久しぶり……あとそういう言い方は誤解を招くから気を付けてくれ」


 俺も俺でいつメンの友達な鈴木さんと小林さんたちと挨拶した。


「あ、あの……葛葉くん、久しぶり!」


「おう、久しぶり」


 遅れて伊藤さんとも挨拶を交わす。


 普段は伊藤さんと真っ先に挨拶するんだけど……何かあったのか?


 鈴木さんと小林さんはニヤニヤしてるし。


 見た目の変化……は鈴木さんが少し日焼けしたの意外はあまり変わってないが。


 裏で女子同士の話し合いでもあったとか?


 それなら俺は首突っ込めないな。


「葛葉くん!久しぶり!」


 その時、別の女子から声を掛けられた。


 まるでアリアさんみたいに髪を銀色に染めて、制服を着崩して小麦色の肌が多めに露出してる派手目の女子だった。


「久しぶり。君は、えっと……」


 ただ、あまり付き合いの無い相手だったので彼女の情報が思い出せなかった。


「あはっ、分からないの?あたし、吉田よしだ亜美あみだよ?」


「よしだ……吉田さん!?」


 その名前を聞いて驚いた。


 記憶にある吉田さんは良くも悪くも普通の女の子で、髪も染めてなければ肌の色も普通で制服もキッチリ着る人だったのに。


「夏休みデビューでイメチェンしたの。その様子だと成功ね!」


 吉田さんはいたずらが成功した子供みたいに笑う。


「ああ、驚いた」


 で、なんでイメチェンしたのか?とか野暮な事は聞かない。


 聞かない方がいいと直感が叫んでいる。


「これからは私もちょくちょく声掛けるからよろしくね?みんな」


 吉田さんは俺だけでなく伊藤さんたちにも向けて言った。


「う、うん、よろしくね」


「おう、よろしく!」


「挨拶の品、ある?」


「って佳代っち、新入りをいびるな!」


「あははっ、賑やかだねー」


 そんな感じで予想外の新面子を加えて話していると、教室に次々とクラスメイトが入って来た。


「みなさん、お久しぶりです」


 透き通る声に全員の視線が集中する。


 教室に入ってきた花京院アリアさんはにこやかに挨拶しながら自分の席に座る。


 学園のお姫様の登場に教室の雰囲気が変わり、ほとんどのクラスメイトがアリアさんに声を掛けた。


「花京院さん、久しぶり!全然変わってなくて綺麗だね!」


「花京院さんは夏休みの宿題した?」


「今日の放課後に休み明け記念で遊びに行くんだけど一緒にどう?」


 アリアさんはそれらに全部笑顔で対応しながら、遊びの誘いはやんわりと断る。


 随分と久しぶりだけど、いつもの教室の風景の一つだった。


「葛葉くんはあそこに入らないの?」


 アリアさんの方を見ていると、不意に吉田さんが声を掛けて来た。


「いや、そういう仲でもないからな」


 俺とアリアさんが付き合ってるのはまだ秘密だ。


「吉田さんこそ、向こうに行かないのか?」


 俺の記憶によれば、吉田さんは休み時間毎にアリアさんに声を掛ける取り巻き……の一人だったはずだ。


「私もいいかなー。今は恭一くんと仲良くなりたいし」


 その吉田さんの言葉で、クラスメイトの数人が顔を強張らせてこっちを睨んだ気がした。


 怖くて誰なのかは確認してないが。


「そっか。まあ、普通に友達として仲良くしようか」


 名前呼びはワザとスルーした。


「私は~、恭一くんが望むなら普通以上の友達でもいいんだけど?それと私の事も亜美って呼んでくれていいよ?」


 教室の空気にヒビが入る。


 アリアさんを取り囲んでいた半分がこっちを見て、アリアさんも横目でこっちを睨んでいる気がした。


 普通以上の友達って何ですか?って聞いて地雷を踏みはしない。


 大方セフレとかだろ。俺のイメージ的に。


「いや、間に合ってるから大丈夫」


 イチゴとアリアさんだけで手一杯だ。


「へえ、やっぱそういう相手がいるんだ?もしかして伊藤さんとか?」


「ふえっ!?」


 突然の飛び火に伊藤さんが慌てる。


「ちちち違うけど!?どうして私を?」


「いやー、伊藤さん、夏休みが始まる前とちょっと雰囲気が違うからね。もしかして恭一くんとそういう階段昇ったのかな~って」


「違うよ!?葛葉くんとはそういう事してない……し……」


 伊藤さんが否定してから落ち込む。


 小林さんが励ます様に伊藤さんの背中を軽く叩いた。


「じゃあ少なくともこのクラスの中ではそういう相手はいない感じ?」


 いるんですけどね、このクラスにそういう相手。

 しかも二人も。


 言えないけど。


「ねえ恭一くん、私とかどう?今日学校終わったら遊びに行く?」


 吉田さんがグイグイ来る。


「あー、伊藤さんたちはどう?」


 俺はヘイトを減らす為に伊藤さんたちを巻き込んだ。


「えっ?私たち?」


「ちょっとー、私は恭一くんだけ誘ったんだけどー」


 吉田さんは俺が伊藤さんたちも誘った事に不満そうだが、俺にも俺の都合がある。


 一学期の時ならともかく、今は理事長に俺の評判回復を言い渡されたからな。


 元々の女友達と絶交しろとは言われてないから、伊藤さんたちとの友達付き合いは続けるけど、もう女子と二人きりで遊ぶのは出来ない。


「あなたたち。教室でそういう話は控えてくれますか?」


 そこでアリアさんが近付いて来て俺たちに注意した。


 アリアさんの顔を見て、笑顔だけど目が笑ってないってこういう表情なんだな、と理解した。


「ご、ごめんなさい!」


 伊藤さんたちは自分の城に等しい学校で風紀を乱す話に怒ってる……と思ってる様だが、これは多分嫉妬と牽制だな。


「悪い。気を付ける」


 俺も伊藤さんたちに続いて謝った。


「ええ、気を付けてください」


 アリアさんはそれだけで自分の席に戻った。


 けど、今までにない高圧的なアリアさんの態度にクラスの空気が大寒波。


 その原因となった俺はクラスメイトたちに白い目で見られて、HRまで居心地が悪い思いをした。


 こんなスタートで二学期の学校生活大丈夫なのか不安になって来た……


――――――――――――――

 次から二話分は裏(恭一以外)視点です

 二章から裏視点ですが一章とは違い、時系列がほぼストレートに進みます

 二章の裏視点は大体がヒロインの暗躍ですので、飛ばして読んでも問題なく恭一の道化ぶりを楽しめる構成なのは一章と同じです


 では二章もよろしくお願いします<(_ _)>

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