第8話『義妹は思春期で反抗期』+プチ登場人物紹介
【Side.リナ】
あたしが葛葉家の子になってから二週くらいが経った。
最初は夢見心地でポヤポヤしてたけど、慣れて来ると現実が見え始めて新しい悩みも出来た。
欲張りとかそういう次元ではない。
恭一兄さんとイチゴ姉さんって……ご飯に金を使い過ぎる!
ウチ?は私も住んでいるイチゴ姉さんの部屋に集まってダラダラしてからご飯を食べる。
ご飯は恭一兄さんとイチゴ姉さんが交代しながら用意をするけど、恭一兄さんはスーパーのレトルトおかずばかりで、イチゴ姉さんはウベルイーツで注文してばかり。
最初は贅沢して貰って浮かれてたけど、もう私もこの家の子。
遠慮なく金を使ってはいられない!
「という訳で、今日からは私がご飯の用意をします!」
ある日の昼ご飯時で。
危機感に目覚めたあたしは恭一兄さんとイチゴ姉さんにそう宣言した。
「いいけど、リナちゃんは料理出来るのか?」
恭一兄さんが出前の丼を食べながら聞いて来た。
不摂生な食生活だけど、まだ若い上に欠かさず筋トレしてるみたいだからなんとかなってるみたい。
「はい、長岡家では私がよく母さんの代わりに料理してましたので」
レパートリーは少ないけど……これからもっと勉強するから!
「そうか。じゃあお願いしようか。……と言っても買い物に出る必要とかありそうだから、一緒に行くか?」
「へっ?」
あ、そういえばお金は恭一兄さんが持ってるのだった。
あたしが買い物するなら、恭一兄さんからお金を預かるか、恭一兄さんと一緒に買い物に行く事になる訳で……
もしかしてデート?新婚さんに見えたり?
ええええ、ちょっと照れるんですけど!
でも仕方ないよね?あたしがお金を預かって失くしたら大変ですから。
という事で、イチゴ姉さんに見送られて恭一兄さんと一緒に近所のスーパーに来た。
「恭一兄さんが好きな食べ物って何ですか?」
「から揚げかな」
「そうですか。じゃあ鶏肉を買ってから揚げにしましょうか。得意なんです」
「そうなんだ」
ええ、鶏肉は……安いから……
あたしは鶏肉の他に特売してる食材をカゴに入れる。
レジで支払いするのは恭一兄さんで、その流れで荷物も恭一兄さんが持ってくれた。
自然に荷物を持つ所とか、紳士みたいでかっこいいと思う。
これがお兄ちゃんなら、こっちが言わないと持たないし、持っても重いと文句垂れるのに。
「リナ!そいつと何してるんだ!」
恭一兄さんと道を歩いていると、そのお兄ちゃんの声が聞こえて振り返る。
「リナ、そいつと一緒にいないで家に帰ろう」
お兄ちゃんはあたしの手を掴もうとしてけど、あたしはそれを振り払う。
「リナ?」
振り払ったのが意外だったのか、お兄ちゃんが驚く。
「バカな事言わないで。今あたしは葛葉家の子なんだから、そっちには帰らないよ」
「好きな時にウチに来ていいはずだろ?」
「そうだけど、行かなければいけない訳じゃないし、あたしが行きたくないから」
「どうしてだ。そいつに何かされたのか?」
むむ。
また恭一兄さんをそいつ呼ばわりして!
「お兄ちゃんの顔を見たくないからだよ!」
この前喧嘩した事も忘れてないし、まだ怒ってるし、今だって恭一兄さんを悪者扱いするのにも怒ってるんだから!
「なっ……、葛葉!お前がリナに俺に言えない事をしたんだな!」
お兄ちゃんがあたしから恭一兄さんに矛先を変えて掴み掛かろうとする。
「止めて!」
そこにあたしが割り込んで、お兄ちゃんを付き飛ばした。
「なっ、リナ!?」
あたしが付き飛ばすとは思わなかったのか、お兄ちゃんが呆然としてる。
「行こう!兄さん!」
その隙にあたしは兄さんの腕を掴んでその場から離れた。
「良かったのか?あいつと喧嘩して。お兄ちゃんなんだろ?」
お兄ちゃんが見えなくなったので歩く速さを緩めると、兄さんが心配そうに言って来た。
「いいんですよ、あんな分からず屋」
あたしが兄さんに何かされたとか、どんな妄想してるんだか!
確かに兄さんはイチゴ姉さんとか、遊びに来た花京院さんとほぼ毎晩アレコレしてたけど、あたしには一切手出ししなかったんだから!
ほんの少しは夜這いされるかもと期待してたけど、そんな事全然なくて肩透かしまで食らったんだもの!
「もうあんな人お兄ちゃんじゃありません。私の兄は恭一兄さんで十分です!」
お兄ちゃん、いやあのバカ兄貴と血の繋がった妹だからとあたしまで嫌われたくなかったので、兄さんの前でバカ兄貴を徹底してこき下ろした。
「あまりそういう事言うな。家族は大事にしろよ」
突然兄さんに厳しい顔で言われて、あたしは身がすくんだ。
「兄さんは、前の家族でも家族と喧嘩する子は嫌いですか?」
「……あまり褒める事は出来ないな」
「ごめんなさい……」
兄さんに嫌われたのかもって思い、あたしはしゅんとなった。
「いいよ。今度仲直りすれば。出来るよな?」
頭の上に兄さんの手が乗せられて、そのまま頭を撫でられた。ちょっと心地良い。
「……はい」
正直兄さんの悪口ばかり言うあのバカ兄貴と仲直りする必要があるかは疑問だけど、兄さんが言うなら仕方ない。
今度会ったら形だけでも我慢して仲直りしよう。
「取りあえず帰ろうか。リナちゃんのご飯、楽しみだしな」
「……はい!」
兄さんがあたしの料理に期待してくれる。
それだけで嫌な事全部忘れて元気が出た。
「……あの、味はどうですか?」
その日の夕ご飯。
あたしは恐る恐る自分の料理の感想を聞いた。
「う~ん、ごめん。舌が売り物の料理に慣れたからか、普通で味気ない感じかな」
イチゴ姉さんは申し訳なさそうに答えた。
「そうですか……」
まあ、確かに売り物は調味料とか色々使ってるから。
節約に慣れたあたしの料理じゃ味気ないのも仕方ないか。
逆にここで美味しいって嘘つかれてもあたしの為にならないから、イチゴ姉さんも悩んで答えたのだろう。
「まあ、まだ一回目だから、次はもっと味付けに気を付けようか。その間に俺たちも薄い味に慣れるかも知れないし、俺も一緒に料理の練習するから」
兄さんが落ち込んだあたしを慰めてくれた。
って、イケメンの義兄と一緒に料理の練習って、何かの少女漫画!?
失敗して指を切って、それを兄さんが舐めたりして?
きゃあ!ダメだよ!兄さんには彼女が二人もいるってのに!
でもちょっとくらいは夢見てもいいよね?
あたしが三人目になる事とか……!
「はい!頑張ります!」
あたしは俄然やる気が出て、元気よく答えた。
――――――――――――――――――――
プチ人物紹介です
・
肩まで伸びた天然パーマの女の子。
家計が厳しい長岡家で進学先の選択肢も厳しい状況で、見かねた親戚の葛葉家が代わりに養育するのを申し出て葛葉家の養子になり恭一の義妹になった。
イケメンな義兄と親切な義姉(予定)が出来て、今までの貧乏暮らしは吹っ飛ぶ様な
長岡家の両親はお互いが再婚で、父の連れ子の長岡修二とも義理の兄妹なのだが、再婚した時リナは幼過ぎたので再婚について忘れていて修二を血の繋がった兄だと思っている。
かっこいい義兄の恭一に憧れる思春期だったり、実兄(だと思ってる)の修二を嫌う反抗期だったりする、普通の中三の女の子。
始めて見た他人の情事が3Pだった所為で、恭一くらいかっこいいと恋人が複数いてもおかしくないと一部性知識が歪んだ。
・
全方位ヘイト買うマン。
ラブコメの主人公みたいに、幼馴染や女友達の親友そして義理の妹に囲まれていた。
……が恭一を目の敵にしながら、イチゴやアリア相手に空気読まずないで女子に優しいムーブをかました所為で盛大にヘイトを買った。
修二の方はリナが義理の妹だと知っている。
二章での
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