第5話『あたしにイケメンの義兄が出来た!③』
【Side.リナ】
元実家からアパートに帰ると、同じ部屋の住人のイチゴ姉さんが迎えてくれた。
「おかえりリナちゃん、大丈夫?顔色悪いけど」
「えっと、その……」
少し迷ってから、お兄ちゃんと喧嘩した事を話した。
恭一兄さんを悪く言われたのは最大限ぼかしたけど、喧嘩の理由がそれだから結局は伝わった。
イチゴ姉さんは恭一兄さんの彼女だから、それを聞いて怒るかもとか、実妹のあたしにも飛び火するんじゃないかとか怖かったけど。
話を聞いたイチゴ姉さんはため息だけついた。
「はぁ……。ごめんね?きょーくんにその噂が出回ってるのは私の所為でもあるんだ」
「えっ、それってどういう事ですか?」
イチゴ姉さんが説明してくれた。
嫉妬によるイジメを恐れて、学校では恭一兄さんとイチゴ姉さんが付き合ってるのを内緒にしてる事。
恭一兄さんは対外的にフリーだから色んな女子が寄って来た事。
イチゴ姉さんと付き合ってるのを隠す為、女子たちとは浮気を越えないラインで一緒に遊んだりして無難に対応してた事。
それが回り回って恭一兄さんの女癖が悪いって噂になったんだと。
「そうだったんですか。やっぱり恭一兄さんは一途な人だったんですね!ユカちゃんと森さんの間でフラフラしてるお兄ちゃんとは大違いです!」
「あー、それなんだけどね」
イチゴ姉さんはちょっと気まずそうに言葉を濁した。
「実はきょーくん。私の他にもう一人彼女がいるのよねー」
「えええっ!?」
恭一兄さんが二股?それをイチゴ姉さんが知ってるってどういう事!?
「アリアちゃんと言って元々は私の友達だったんだけど、三人で遊んでる内にアリアちゃんもきょーくんの事が好きになってしまって、アリアちゃんがきょーくんを脅して付き合う事になったの」
「イチゴ姉さんの友達?恭一兄さんを脅した?ええええ」
昼ドラだぁ……
恭一兄さんたちの事、少女漫画かな?と思ってたけど、この三角関係は昼ドラみたい……
「今アリアちゃんは家族旅行に行ってていないけど、帰って来たら紹介するよ」
イチゴ姉さんは笑顔で言ってるけど、あたしは修羅場になるんじゃないのかって心配になった。
あたしがこっちに来て十日くらい経った頃。
恭一兄さんたちにある人を紹介された。
その人の名前は花京院アリアさん。
恭一兄さんたちと同じ悠翔高校の一年生で、あたしの先輩になるかも知れない人。
混血なのか長い金髪とエメラルドグリーンの瞳が印象的で、それだけでなく顔立ちとスタイルも凄く綺麗でドレスみたいなワンピースも良く似合う人だった。
まるで絵本のお姫様が出て来たみたい、って本気で思ってしまった。
「あなたが恭一さんの新しい妹さんですか。私は恭一さんの恋人の花京院アリアです。これからよろしくお願いしますね?」
「あっ、はい!あたしは葛葉理奈です!よろしくお願いします!」
つい緊張してしまって最初恭一兄さんたちにしたみたいに上半身ごと頭を下げた。
ってうわあああ。
この人が恭一兄さんのもう一人の彼女さん!?
見た目だけならすごいお似合いなんですけど!
普通なら恋愛は見た目だけじゃないって言いますけど、この見た目のレベル差は高過ぎですけど!
こういう事言っちゃ悪いけど、イチゴ姉さん、勝ち目無くないですか?
「そうだ。せっかくですから、皆さん私の家に遊びに来ませんか?」
良い事を思い付いたとでも言う様に、花京院さんが手を合わせて提案して来た。
「いいの?アリアちゃんのご家族さんとか」
「今日は両親も祖父も仕事で外泊ですから大丈夫です。お手伝いさんも夜には帰りますし」
お手伝いさん!それってつまりメイドさんみたいなそういう?
花京院さんってお金持ちなの!?
「思えばですね、私は恭一さんやイチゴさんの部屋に遊びに行った事があるのに、お二人は私の家に遊びに来た事が無いって思い出したんですよ。これって不公平じゃないですか?」
花京院さんから言い知れぬ圧を感じる!
「……そうだな。行こうか」
圧に押されたのか、恭一兄さんが頷いた。
「良かった。今は夏休みですから、お泊りもして行きませんか?」
「いいの?私はともかく男のきょーくんを家に泊めても」
「大丈夫ですよ。恭一さんはおじい様から認められてますから」
ええええ。
恭一兄さんと花京院さんって家族公認なんだ。
これってイチゴ姉さんがますます不利じゃない?
てかこれもしかしてイチゴ姉さんを牽制してる?もう修羅場!?
「そっかー。大丈夫ならいいよ」
何でも無い様に流すイチゴ姉さんって肝太過ぎぃ。
で、さっきの「皆さん」にはあたしも入っていた様で、金持ちさんの家ってどんなんだろうって気になってたのでそのままついて行く事に!?
花京院さんの家は漫画に出るような大きい敷地の屋敷では無かったけど、フロア一つを丸々使う高級マンションだった。
家具は小綺麗で高級品なのが見て分かるし、フローリングもピカピカしてて傷付けたらどうしようって思って恐縮しちゃう。
それからあたしたちは今でお手伝いさんが出してくれたお茶とお菓子を食べながら雑談する事に。
お手伝いさん、本当にいるんだ。
メイド服じゃないし、おばさんだけど本当にいるんだ。
やば!
この名前も知らないお茶とお菓子、美味し過ぎるんですけど!
口の中で蕩けるってこういう事ぉ!?
「リナさんって、ウチの学校を目指してるんですか。じゃあ、来年は後輩ですね!」
「え?あっ、はいぃ!」
いきなり水を向けられてびっくりした。
あたしが悠翔高校志望って、恭一兄さんたちから聞いたのかな。
「ウチの学校、偏差値が高い方ですけど、勉強は大丈夫ですか?」
「えっと、はい。恭一兄さんたちが見てくれてるので大丈夫です」
あたしの返事を聞いて、花京院さんは一瞬だけ横目でイチゴ姉さんを睨んだ。
こっわ。
「そうですか。それでももし不安だったら私に相談してくださいね?おじい様にお願いして成績関係無しに入学出来る様にしますから」
「へっ?」
言われた事が理解出来なかった。
おじい様にお願いするって、どういう事?
「お前な……、あまりウチの妹に悪い事教えるな」
「あら、すみません」
恭一兄さんがジト目で花京院さんを窘めた。
戸惑ってるあたしに、イチゴ姉さんが説明してくれる。
「アリアちゃんのお爺さんが、悠翔高校の理事長なのよ。で、学校での事ならアリアちゃんの意見が大体通る訳」
「えええ」
やばぁ。
ここって、もしかして漫画の中ってだけでなく雲の上の世界なの?
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