第19話『俺の彼女の邪悪さが未だ止まる所を知らない』
【Side.恭一】
あの最悪の3Pから二週間が過ぎた。
時期は既に夏休みのド真ん中。
あれから俺はイチゴと一緒にアリアさんと体を重ねたり、逆にアリアさん公認の元でイチゴと体を重ね、イチゴはそれをアリアさんの目の前で見せつけてた。
一時はアリアさんがイチゴ無しでしようとして俺に色々飲ませて無理にアレを立たせたが、いざ事に及ぼうとすると萎んだ。
ここまで来ると流石に自分でも自分の貞操本能が怖い。
これを理由にアリアさんに交際解消を申し出た事もあったが。
「嫌です!もうここまで来た以上、恭一さんと別れるなんてありえません!……恭一さんも責任取ってくださいね?」
と、断られてしまった。
言葉の最後の時、今まで見た事のないアリアさんの暗い目がとても印象に残った。
多分サンクコスト効果だと思うんだが、アリアさんの目が覚めるまで付き合うしか無さそうだ。
それで俺を逃がしたくないアリアさんは渋々と、イチゴに俺を貸す代わりにアリアさんが俺と体を重ねる時にイチゴをバイ〇グラみたいな扱いで参加させる事を認めた。
こうしてアリアさんからすれば取引として恋人の俺をイチゴに貸してる状況で、実際は俺とイチゴがアリアさんを騙して俺がアリアさんに貸し出されてる状況が出来上がり、奇妙な形でイチゴとアリアさん両方公認の二股が成立してしまった。
俺も最初はイチゴとアリアさん両方に売られて弄ばれる様な暗澹たる気持ちだったが、男なんて単純な物で気持ちよくなって色々吐き出してしまったらどうでも良くなって、今では諦めてしまっている。
アリアさんはともかく、イチゴは俺が他の女子と関係を持つ事に傷付くのではないかと不安に思ったりもしたが。
「もちろんきょーくんが他の女とすると嫌な気持ちになるよ?でもきょーくんが私の事一番に思ってくれるって信じてるから安心出来て、嫌な気持ちで胸と頭が痛くなるのも癖になって興奮するの」
……との事。
つまり俺がイチゴを一番に想ってる限りは大丈夫という事だろう。
当たり前だが俺はイチゴが一番大事で、イチゴも俺を完全に捨てたりしない。
今まで尽くしてくれたイチゴを裏切るなんてあり得ない。
それだけ忘れなければ、イチゴは大丈夫だし俺も耐えられる。
「好きな人を取られそうなスリルの楽しさ、アリアちゃんにも分かって貰いたいなー」
……ただ、そんな事をノリノリで言いながら、イチゴは俺としてた所を動画で撮って家族旅行中のアリアさんに送ったりしたので、俺は密かに戦慄したが。
その後旅行から帰って来たアリアさんが嫉妬に狂って俺を激しく求め過ぎてヤバかったんだが。
アリアさんが家族旅行から戻り間もなく、俺はアリアさんを通して高校の理事長に呼び出された。
どうもアリアさんが旅行の間で家族に俺の事を話してしまったらしい。
「初めまして。葛葉恭一です」
「うむ。花京院
悠翔高校の理事長室にて。スーツを来た初老の男性、花京院理事長が机に座ったまま挨拶を返した。
アリアさん……友達ではなく恋人だと言ったのか……。
「もう察してるとは思うが、今日君を呼んだのは祖父として孫娘の交際相手として相応しいか見極めるためだ」
ですよねー
まあ、死にさえしなければ煮るなり焼くなり好きにすればいいさ。
そうされるくらいの事をしてしまったのだから。
「葛葉恭一、一般家庭で生まれ両親共に健在。兄弟はなし。容姿端整で成績優秀。運動能力も良く、人当たりも良い。ただ女性関係に良くない噂がついて回っている……と」
つらつらと唱えられる俺のプロフィール。
よく調べていらっしゃる。
まあ、目に入れても痛くないくらい可愛い孫娘に付いた虫だから、当然と言えば当然か。
「はっきり聞こう。最終的にアリアとはどういう関係になるつもりだ?」
理事長が年寄りとは思えない眼力で俺を睨み付ける。
これは……誤魔化さずに打ち明けた方がいいな。俺の都合的にも。
「アリアさんとは……、いずれ交際を解消するつもりでいます」
「ほう。つまり遊びだと?」
理事長の眼力に圧が増えて来た。
「……身も蓋もない言い方をすれば」
「どうしてだ?君の顔と能力なら私たちに気に入られて我が家の婿になる事も出来るだろうに」
逆玉かー
まあ普通は狙うだろうけど、俺は事情がなー
「実はアリアさんの他に、アリアさんよりも前から交際していた相手がいます」
「それは、君の幼馴染の依藤苺の事か?」
イチゴを幼馴染と断言するとか、そこまで調べがついてるのか。
「はい」
元からイチゴと付き合ってた事はアリアさんにも秘密だし、言ったら彼女を騙してたとボロが出そうな情報だ。
しかしイチゴが幼馴染だと理事長が知っていてアリアさんが知らないという事は、理事長も知った事を全部アリアさんに教えたりはしていない様だ。
アリアさんが傷付きそうだからか?
明確な意図は知らないが、アリアさんに伝わってないのは助かる。
「それで何故、アリアとも付き合う事になった?」
「実は生徒間の人間関係から堂々と自分と依藤さんの交際を打ち明けづらい状況でして。高校で改めて他人から交際まで進めた事にして、アリアさんにはその立証人になって貰おうとしましたが、拗れてしまいました」
流石にイチゴが俺をアリアさんに寝取らせようとしてたとは言えない。
マジで末代までの恥だから。
「だからと言ってアリアと付き合う事になるか?」
俺もそう思います。
「それは……アリアさんに脅されました。彼女と交際しないのなら、依藤さんを退学に追い詰めると」
「あの子がそんな事を……」
理事長が右手で頭を抑える。
アリアさんが私欲で家の権威を使う事にショックを受けたのだろう。
ご心中お察し申し上げます。
俺も最初の頃はそんな事する人じゃないと思ってたから……。
「それで依藤さんと相談した結果、彼女との関係を隠したままアリアさんが納得するまで交際してから別れるのが穏便に済ませられると結論を出して交際する事になりました」
「そうか……」
理事長は考え込みながら机を人差し指でトントンと叩く。
「……いいだろう、君とアリア、そして依藤苺の交際については認めよう」
えっ、許された?
「ただし、条件がある」
「なんでしょうか」
「まず、高校卒業までに君からアリアに交際解消を申し出るな。そして二年生に上がるまでに君の悪評を払拭して二年生になったら周囲に君とアリアの交際を公表しろ。最後に、アリアが他の男に気移りしそうだったら、私に報告しろ」
「……自分は虫除けですか」
「そういう事だ。出来るな?」
これって基本は今まで通りにしろって事だけど、どの道拒否権無いよな。
「かしこまりました」
「話はここまでだ。アリアの事を頼んだぞ」
理事長が出て行けとばかりに手を振った。
俺は一度頭を下げてから、理事長室を出た。
「ふぅ……、上手くいかないな」
ため息をつきながら廊下を歩く。
本当は「お前みたいな女たらしに孫娘は任せられん!今すぐ別れるなら見逃してやる!」から「はい、喜んで」ってなる流れを期待してたんだが……。
祖父公認でアリアさんと付き合い続ける事になってしまった。
これは困る。大分困る。
アリアさんが旅行に行ってた間、俺に何故か義理の妹が出来たのだ。
イチゴが裏で糸を引いたのだろうし、その目的は……あまり考えたくないが、多分そういう方向だろう。
つまり……
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