第16話【沼に堕ちる①】
きょーくんとアリアちゃんの本格的な交際が始まった。
私は表ではアリアちゃんから、裏ではきょーくんから交際内容を聞いて、きょーくんにテコ入れの指示やデート軍資金を送ったり、きょーくんをアリアちゃんに取られそうなスリルをおかずに致したりと楽しい日々を送った。
きょーくんにとっては(仮)ではあれどアリアちゃんと付き合ってるのは間違いないから、キスだって何度もしたのを聞いた時は最高に興奮した。
その後、部屋できょーくんとこっそり逢引きしてきょーくんの唇を私が上書きしながらベッドの上でイチャイチャするのはもっと興奮した。
「ねえ、きょーくん。アリアちゃんとは最後までする気ある?」
「……それは……」
イチャイチャが終わった後、ピロートークでした私の問いに、きょーくんは迷いながら言葉を濁した。
「私はいいよ?アリアちゃんが求めに応じても、逆に行けると思ったらきょーくんから迫っても」
「………」
きょーくんは返事しない。
これは迷ってる時の反応だ。
肯定か否定か答えが決められるならすぐ言うから。
そしてこの場合、押せば大体私の望む方向に頷く。
あとはアリアちゃんの貞操観念が婚前交渉を許すかが問題だけど、正直どっちでも構わないかな。
きょーくんとヤってくれるなら最高だけど、しないならしないで、後でアリアちゃんを捨てる時に傷物にしたと何癖付けられる面倒もないからね。
何もしないのもつまらないから、焚き付けるだけ焚き付けるけど。
それでも進まないなら、きょーくんの欲求不満という事で別れさせて返してもらうよ。
んで、アリアちゃんの事はいい
それから体育祭があったけど、私は仮病で即リタイアしてのんびりした。
一方きょーくんとアリアちゃんは大活躍。
アリアちゃんは理事長の孫娘という立場から生徒代表になって開会式で挨拶したり、生徒会役員として働いたり、出場種目で全勝したりと八面六臂の活躍を見せて男女問わずに人気を得た。
たまにアリアちゃんを家の七光りだと嫉妬する子もいたけど、それくらいは愛嬌かな。
きょーくんは一般生徒だからアリアちゃんほど出番が多くは無かったけど、かっこいい見た目で普通に注目を集めて、鍛えられた運動能力で普通に出場種目で全勝し、女子たちの黄色い歓声と男子たちの嫉妬を買った。
途中に露骨なラフプレーできょーくんを攻撃する男子もいたけど、それすら軽く流した上で勝ったので人気はさらにうなぎ登りだった。
在校生の家族として見学に来ていて、きょーくん目当てでここに進学しようとする子もいるくらい。
それできょーくんにあった女性関係の悪い噂も気にならなくなったのか、休憩時間の度にきょーくんの回りに女子が砂糖に群がるアリの如く集まった。
私が普段から言ってた要望もあってきょーくんは無難に対応したけど、微妙に顔色が悪いので後でゲロ吐くかも知れない。
んで、嫉妬したのかアリアちゃんが現れて他の人への迷惑だと言って女子を散らした。
しかしきょーくんとアリアちゃんが交際してるのはまだ内緒だし、今バレたら面倒になるのも分かっているから、人目のある所では事務的用件以外できょーくんとお話出来なかった。
きょーくんが信号娘たちと楽しく昼飯食べてる所を、恨めし気に睨んでるアリアちゃんは面白かったなー
体育祭が終わった後は期末テストが来た。
私もきょーくんもアリアちゃんも普段から勉強してたから成績に不安は無いので余裕だった。
そして終業式の日に期末テストのテストが帰って来るのと同時に、中間と期末を合わせた成績の順位表が掲示板に張られた。
まあテスト楽過ぎたんだけど。
でも目立ちたくないからワザと一位は避けて、だからと言って有象無象より下に見られるのも癪だったから、四位を狙って取った。
アリアちゃんはギリギリの点差で一位からすべって二位。
まあ、一学期は恋愛で忙しかったからねー。
もし私が普通に一位取ってたら、アリアちゃんに睨まれたかも知れなかったから、やはり成績落としたのは正解だった。
ちなみにきょーくんは無難に十位。
上位ではあるけど、目に留まるほと高くはない感じ。
終業式も終わったし、この後は夏休みまっしぐらだ。
「私もアリアちゃんも一位から落ちたかー。私はいいけど、アリアちゃんは家族に何か言われたりしない?」
いつもの空き教室で、アリアちゃんと会って雑談を交わす。
好きな人取られたのによく仲良く出来るな~と言われそうだけど、あえて言うならばお互いがお互いをまだ友達だと認識させる為のポーズに近い。
「私も大丈夫です。そういう事もあると、あと二桁以下の順位にさえ落ちなければうるさく言わないとも言われましたので」
一桁台をキープしろと言うのも割とシビアだけ思うど、一位じゃないと認めないとか言わない分にはまだ優しいのかな?
「そっか、何か一位から落ちただけでうるさく言いそうな先入観があったけど、いい家族だね」
「ええ、私もそう思ってます」
「夏休みには家族と旅行に行くんだって?」
「はい、その間恭一さんとは離れ離れです。彼を家族にも紹介出来てれば連れて行けたかも知れませんが……」
「きょーくん、まだ悪い噂が残ってるからね~」
ごめんね?私のせいで。
「……イチゴさん、言っておきますけど私がいないからと言って恭一さんに手を出したら許しませんからね」
アリアちゃんが冷たい目で釘を刺して来た。
けど、実は昨日だって裏で色々ヤったんだよねー
「そんなに不安なの?きょーくんを信じないんだ」
私はわざとらしくアリアちゃんを煽った。
はいそこ、どの口で信じないと抜かすんだとか言わない。
「でもその不安も分かるよ。私はまだきょーくんの事好きだから」
続く追撃にアリアちゃんが固まる。
それもそうよね。
私にはきょーくんから告白されたと嘘ついたけど、本当はきょーくんは私が好きだと知った上で脅して掠め取ったもんね?
きょーくんに私への気持ちが残っていて、私もまだ諦めていないなら脅威になるよね?
「所でね、アリアちゃんからきょーくんとどんな風にイチャイチャしたか色々聞いたけど、私の知らない所で……してたりする?」
「……なにを、ですか?」
「それは……」
私はアリアちゃんに近付いて耳元で呟く。
「セックス」
「ええっ!?」
驚いたアリアちゃんは顔を真っ赤にしてたじろぐ。
処女かな。
「その反応だとしてないんだ」
「ととと、当然です。婚前交渉なんて、そんなはしたない事を!」
やっぱりアリアちゃんはそういう所が固い派かー
それを聞いて、私は分かりやすく口角を吊り上げる。
「そう?じゃあ、私にもチャンスはあるんだ」
「はい?」
真顔になったアリアちゃんに、私は延々と煽り文句を述べる。
「この年頃の男の子って性欲旺盛で、エッチなのしか考えられない時もあるらしいよ?
それにきょーくんは中学の事に彼女がいたから、もしかするともう経験してるかもね。
そして今の彼女のアリアちゃんともしたいと期待してるかも知れないのにさせてくれないなら不満が溜まるかも。
それできょーくんがアリアちゃんを振るかも知れないし、そうでなくても私が体で誘惑したら奪え―」
「やめて!!!」
畳み込む様に喋り続けると、ついに耐えられなくなったアリアちゃんが叫んで私の言葉を止めた。
「どうして……そんな事言うんですか!」
アリアちゃん、涙目。
かわいいね~
「どうしてって、これは忠告だよ。別に私じゃなくても、さっき言ったみたいにきょーくんを取られるかもって」
「恭一さんを……取られる?」
アリアちゃんの顔が真っ青になる。
多分、きょーくんが私かあの信号娘と仲良くしてる場面でも浮かんだのだろう。
アリアちゃんがきょーくんと付き合ってるのはまだ秘密にしてるし、きょーくんは男友達がいないから、教室ではまだあの三人と仲良くしてるのよね。
んで、アリアちゃんとしてはきょーくんが他の女の子と仲良くしてるのは腹立たしいけど、きょーくんは節度を守ってあの三人と仲良くしてるのにボッチになれとは言えないから、口出し出来てない。
でもあの三人は元々きょーくんと付き合うのを狙って近付いたのだから、少しでも油断すれば伏兵になりそうな子たちなんだ。
そう、気付いたのかな?
きょーくんと付き合えたからって、それでハッピーエンドが約束された訳じゃないんだよ?
余裕ぶってると、横から掻っ攫われるよ?
アリアちゃんが私にしたみたいに。
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